機関始動、試験航行
ついに到着する艦上機
発艦最終調整訓練なども兼ねた今回の試験航行
ドックからその巨大な艦体が動き出す
聯合艦隊司令長官 山本五十六 座上の旗艦『赤城』
それぞれの艦に割り当てられる13人
運命の処女航海が幕を切って落とされた
5月4日
「おお、やっと来たか!」
双眼鏡をのぞく山本
現在、4隻の空母はドック内で着艦準備に追われていた
第一飛行甲板にはワイヤーが張られエレベーターがいつでも動けるように構えていた
ここで、我らが航空部隊の艦上機を紹介しよう
まずはやはりこの機体
先の大戦、ユーラシア大戦で少なからずその性能が認められ、改良に改良を加えられたその機体は
『新・零戦改』
そして、雷撃部隊の主力新型機
『新・九七艦攻』
さらに、800キロ爆弾を担げる攻撃機
『新・九九艦爆』
これら3機種は全てエーテルエンジンで動いている
エーテルエンジンとは、
ユーラシア大戦の際に開発というよりたまたま見つけた次世代のエンジンである
エーテルを密閉空間で気化し莫大なエネルギー負荷を掛けると自らから磁場を発生し
その磁場で自らが回りだすという半永久機関である
ただし、艦艇に膨大なエネルギーはないため、回転数を下げに下げて
32秒でようやく一回転できるように調節する
姿は零戦や九七艦攻、九九艦爆を丸写ししたものであるが
スピードはあのジェット機とも対等に対立できる速度を発揮する
しかし、それでは空中分解するではないのか?
心配無用、対策は既に行っており
空中分解しないように重装甲にしており
零戦とは真逆な設計となった、
そして、その装甲の威力は高射砲の弾を跳ね返すほど強力であり、
まるで、一つの鉄塊からくりぬいた様に頑丈である
さて、説明はここまで、
着艦を済ませた航空部隊は次々とエレベーターで艦内に消えた
そして時を同じくして艦の外側、翼の先端に付けられた大型エーテルエンジンがうなりを上げ始めた
しかし、これだけでは流石の巨艦は動じない
この巨艦たちを浮かせるのは内部にある『ジャイロ式空間軸固定機』である
このエンジンはある程度の回転数に達するとその役目を全うし始める
しかし、ガソリンエンジンではその回転数には達しない、
やはりここでもエーテルエンジンの出番である
そもそも、エーテルエンジンは磁場発生器と言っても可笑しくない、
そこで、シンバルを二つくっ付けた形のジャイロを丸ごと密閉容器で包み込み
内部を見るための窓をいくつか配置して、このエンジンは成り立っており
現在はそのジャイロが徐々に回転数を上げている
ちなみに、最初に作られた伊勢計画の、
この種のエンジンはこまの取っ手を取ったような形をしており
お世辞にもいえないほど安定性が悪く
四³艦隊計画のエンジンが見直されたほどである
現在は先ほど説明したがシンバルを二つくっ付けた形に設計しなおされており
上下で二本の空間軸を捉えてるので安定性は申し分ない、伊勢計画で建造された2隻には
次のエンジンが出来るまで我慢してもらおう
「さて、そろそろ、艦名を読み上げる時刻だ」
そう言って腕時計を見た山本
「私は何処に配属されるのやら」
横で小沢が呟く
「大丈夫、俺が手を回しておいた」
小声で耳打ちする山本
「始まるぞ」
咳払いを一つして栗松が注意する
コツコツと和泉総理が登壇し紙を広げる
「これより命名式を行う」
ざわざわしていた会場が一気にシーンとなった
「伊勢計画建造艦
伊勢型戦艦:一番艦 伊勢
:二番艦 日向
四³艦隊計画建造艦
加賀型戦艦:一番艦 加賀
:二番艦 土佐
長門型戦艦:一番艦 長門
:二番艦 陸奥
金剛型巡洋戦艦:一番艦 金剛
:二番艦 比叡
:三番艦 榛名
:四番艦 霧島
天城型三段飛行甲板式航空母艦:一番艦 天城
(天城型空母) :二番艦 赤城
:三番艦 高雄
:四番艦 愛宕
以上、これより各艦の艦長を発表する
伊勢:志摩 清英
日向:森下 信衛
加賀:宇垣 纒
土佐:田中 頼三
長門:南雲 忠一
陸奥:菊池 剛
金剛:栗松 鉄兵
比叡:横井 秀一
榛名:栗田 建男
霧島:泉家 秋平
天城:小沢 治三郎
赤城:山本 五十六
高雄:戸塚 道太郎
愛宕:原 忠一
以上、進空!!」
ここには名前は出て来なかったが『泉家 あきひろ』と『大西 隆二』は、
既に一線を引退しており造船業に携わっていた
そして、ドックから轟音を立てて動き出す14隻はやがて地面から完璧に離れた
ここでやっと正体を現したのは艦底かと思いきや
天城型を除いてほとんどが逆さにした砲塔を付けていた
それぞれの戦力をここにあらわしてみると
伊勢型:上舷甲板に六つの砲塔、下舷には四つの砲塔
加賀型:上舷甲板に五つの砲塔、下舷にも五つの砲塔
長門型:上舷甲板に四つの砲塔、下舷には五つの砲塔
金剛型:上舷甲板に四つの砲塔、下舷には六つの砲塔
勿論だが、対空設備もちゃんと整っている
そして、
「アップトリム30度、両舷前進全速!!」
操艦総指揮官森下の声がスピーカーに流れた
そして、ゆっくりと観客の頭上を通過する巨艦たち
この総勢14隻が現在の聯合艦隊の姿だ、
ちなみに、目的地は帝都東京、到着予定時刻は明日の明朝6時
こうして、夕焼けの赤い光を浴びて艦隊は山も向こうへ消えた
「さて、夜が始まる前に済ませるぞ!」
この山本の一言が合図で始まった
第三飛行甲板は通常時はいつも上空の風の影響を受けないように横開きのシャッターが閉じてある
しかしそのシャッターは今、ゆっくりと開き艦内を風が吹きまわした
「発艦用意だ!!エンジン回転数上げろ!!」
赤城零戦隊隊長『坂井 三郎』が声を張り上げる
腕がウズウズしていた様だ
しかし、本当に先に発艦しないと第一甲板の攻撃隊とも衝突しかねない
そのため、格納庫(第二甲板)から攻撃隊を第一甲板にエレベーターで揚げてる間に戦闘隊は発艦を済まさなければ成らない
しかも、鉄筋というハンデ付だ、
「よし、先行くね」
手を他のパイロットたちに振るとコクピットに潜り込んだ
「久方ぶりの発艦だな」
エンジンの回転数を一気に上げその重い機体を浮かせる
鉄筋が迫ってくるが、真ん中を通ればたいした問題はない
フッと一瞬だけ重力で沈むがその後はそのまま飛べばいい
後ろを振り向いてみると次々と発艦するパイロットが見えた
第一甲板も攻撃隊でごったがえっていた
周りの天城、高雄、愛宕もそれぞれの戦闘隊を発艦させていた
さて、次はいよいよ攻撃隊の発艦である
先に発艦するのは新・九七艦攻の雷撃隊
「よし!行ってきます!」
他の隊員たちに手を振って座席に付く
「飛びます、飛びます、」
ここでもギャグをかます『村田 宗太』赤城雷撃隊隊長
「ちょっと、真面目に行きましょう」
後ろの搭乗員が注意する
「はは、じゃあ、行こうか」
回転数を一気に上げ模擬魚雷を抱えた新・九七艦攻がその鈍重な機体を持ち上げた
そして、羅針艦橋の上を飛び越え発艦
「フゥイ~、ヤリィ!」
額の汗を拭く
最後に発艦するのは800キロの負荷を抱えた新・九九艦爆がその存在を見せ付けるかのように
エンジンの回転数を上げていく
「ヨッシャー!!800キロが何だー!!全員で行くぞぉぉぉ!!」
雄たけびを上げて『阿部 光一』赤城爆撃隊隊長
一気に回転数を上げた
ちなみにこのベテラン阿部は急降下爆撃訓練の際、ダイブブレーキを作動させずに突っ込むという離れ技を披露しており
あの鬼教官栗松を黙らせた
「山本長官に敬礼!!」
そう言って風防を開け敬礼する
つまり、全くの誰から見ても脇見運転だ
それで発艦に望んだ阿部に流石の山本もあせった
そして、見事に発艦して見せた
「...これは、後で栗松に報告する必要があるな」
山本は微笑みながらその帽子を脱ぎ阿部機に向けて振った
いわゆる、”脱帽”と言う奴だ
夕方の太陽がまさに今山の向こうに沈もうとしていた
その眩いばかりのオレンジの光は艦隊を照らした
「こりゃあ、凄い、」
その光景を目に焼き付ける様に坂井が呟く
「あ~、絶景かな、絶景かな」
そう言って睨みを利かせる村田
「...美しい」
そういうのは阿部(爆弾野郎ピカイチ)
時計を見るとそろそろ着艦しないと危うい時刻だ
急いで攻撃隊優先での着艦作業が始まった
第一甲板をワイヤーが張られ、万が一の甲板員も待機していた
そして、零戦隊が予定通りに上空、および艦隊の直援に回った
まずは雷撃隊、
「退いて、退いて~!」
やはりギャグる村田
「退くものは何もありません!!」
再び搭乗員が伝声管に向かって言う
「船長降りたか?」
確認を取る村田
「フック降りています!」
OKサインが出る
そう言って赤城の艦尾に付く
そして見事な着艦アプローチ
その後、次々と攻撃隊が着艦、第二甲板(格納庫)に吸い込まれていった
そして、いよいよ零戦隊が着艦アプローチに入った
「ドカッと行こう!!」
張り切る坂井
しかし、ここでまさかのアクシデント
坂井が最後に着艦したのは幸運を招いた
片脚が展開せず、胴体着陸を余儀なく迫られた
「...まさか、本当になるとはなぁ」
ポリポリと頬っぺたをかく
甲板上には仮組みの車輪台が置かれてあり
ここに着艦しろと言っているようなものだ
「やるか、」
そう言って機体の微調整に入る坂井
そして堂々と車輪台の上に乗りあがった
「ふぅ~、やって見るもんだな」
背伸びをして風防をあける坂井
こうして、一連の最終調整訓練は終わりを告げた
やがて、夜の暗闇が艦隊を包み込んだ
「フゥゥ~、寒い!」
ロシア的防寒スタイルの山本
「上空5000メートルやで、寒いのが当たり前やろ」
そう言って歩み寄るのはこの艦の艦魂、『赤城』
「ああ、だが、星がきれいだ」
そう言って上を見上げた
「せやな、けど、生まれ変わったうちがまさか三段で、しかも空飛んでるって」
先月末、つまり4月末に『赤城』は太平洋でアメリカにより海没処分と成った
「海没処分、辛かったろ」
そう言った山本も辛かった
あの時、チューク奇襲の際に1隻も守れなかったのだ
「いいえ、こうして、また五十六はんに会えたんや、もう忘れてしもうたわ」
そう言って、山本に抱きついた
「はは、この!気遣いやがって!」
そう言うとコートを赤城にかぶせ、一緒に艦橋の中に入っていった
翌日、聯合艦隊は所定の時間通りに帝都東京に着いた
作者:ヤッホヨーイ!
三笠:何がしたいんだ!?
作者:自分でも分からん
三笠:それ末期じゃない!?
作者:...精神科行って来るわ
三笠:完結のショック引きずりすぎだろ!?
作者:はぁ~、では、
三笠:また今度会おう!!