動かぬ巨体、凍結された計画
2024年、
締結されたハワイ軍縮条約
倉庫の中で眠る推進機関
動かぬ艦体
しかし、ある事件で解凍される計画
果たしてその事件とは?
2032年、
NSKドック、
「......ほう、あいつが総理になったか」
横たわる巨大な艦体を泉家は何時までも眺めていた
軍縮条約が締結されてはや8年、
その間も彼ら造船職人は毎日のように
この巨大な艦体を管理してきた、
艦体は合計で14隻、
その全てが一般艦艇として条約に引っかかり
建造の差し押さえがアメリカから届いていた
しかし、アメリカが一般艦艇と解釈したのは全くの幸運
もし、この艦体の本当の姿をその目に映したら
恐らく、差し押さえではすまなかったはず
「......頑張れよ、和泉、」
総理官邸、
「で、その手紙がこれ?」
手の中の日本語訳を読む
「へ~、合同演習だとよ、これでまた仲良く成れるんじゃないか?」
ニカっと笑う和泉総理
そして後日、ハワイ沖にての演習参加を表明
大急ぎでチューク諸島の聯合艦隊を緊急招集、
しかし、1隻のみ、命令には従わず許可をもらうと
まるで盗みに入った泥棒が逃げるかのように出港した
他の艦艇は演習日付になるまで待機を命ぜられる
チューク司令部、
「で、待ってろと?東郷さんは?」
長谷川が頭を抱え込む
「現地に着き次第、真珠湾で待機、その後演習に参加だそうだ」
朝市のコーヒーを飲む栗松
「じゃあ、本題に入ろう、日付はいつかね?」
報告書を読み終る長谷川
「アメリカから直で来るそうだ」
二杯目を飲みだす栗松
「今日は、4月の23日、シジミの日か、」
カレンダーを確認する長谷川、
「あと、お前の誕生日もな」
三杯目を飲む栗松
「はは、そうだった、」
さて、この時、
東郷は太平洋のど真ん中に居た
「ハワイはまだかね?」
露天艦橋に居る東郷が伝声管を使い聞く
『まだチューク諸島を出たばかりで、ミクロネシア連邦も抜けてません』
正確に答える艦橋員
「ったく、せっかく演習だって言うのに、」
ブツブツと愚痴る東郷、すると
「まぁまぁ、そんなに愚痴るな八郎」
振り返るとこの艦の艦魂、三笠がそこにはいた
「ほう、英雄艦がわしに何のようじゃ」
手すりにもたれる三笠
「急がば回れって昔から言うだろ、日本海海戦の時、お見事だったぞ」
そう言って昔の記憶を思い出す三笠
「いや、優秀なのは部下たちだ、キツイ訓練にも耐えてくれた、あ」
何かを言いかけたその時、
『アメリカ艦載機接近中、』
「ここで?ハワイはまだ遠いはずだぞ」
首からぶら下げていた望遠鏡をのぞく
「何か嫌な感じがする」
呟く三笠
「とりあえず信号を送れ、話はそれからだ」
『了解』
「全く、ん?」
何かがこちらに向かって飛んできた
「クッソ!奴ら目!早速撃ってきやがった!」
三笠が表情を変えた
「総員戦闘配置!!チューク司令部に打電!!我攻撃受ケタシ!!」
ガックンと艦体に衝撃が走った
「ウアァァァッ!!八郎!!逃げろ!!」
赤く染まった腹を押さえる三笠
「潜航用意!!繰り返す!!潜航用意!!」
急いで艦橋の中に入る東郷、その背中には三笠がうめいていた
その後、三笠は潜航、無線封鎖を行ったためその行方は誰にもわからなかった
チューク司令部、
「何だと!三笠が!?」
長谷川が目を丸くする
「たった今入った情報です、それ以降の連絡はありません」
栗松が紙コップを握りつぶす
「栗松君、君は本土へ連絡してくれ、俺は艦隊の指揮を執る」
そう言ってコートを羽織った長谷川
「あ、そうだ、命令には従えよ?栗松君?」
ニコッと振り向く長谷川
「...分かりました」
電鍵に手を掛けた栗松
「ふ、最悪の誕生日だ」
キセルに火をつけた長谷川
一方、艦隊は臨時の司令長官に山本が勤めていた
「いいからエンジン始動!!島に居る乗員全員を乗せたら直ちに出港!!」
テキパキと命令を出していく山本
「悪い、遅れた!指揮代われ、」
キセルを吸っている長谷川が到着
「はッ!エンジン始動にはまだ時間がかかるようです!!」
敬礼をする山本
「とりあえず、乗員を全員乗せたら、一旦国へ帰ろう」
地図を見る長谷川
「分かりました、」
遠くを見た山本は絶句した
「ふ、どうやら遅かったようだ」
長谷川が隣に駆け寄る
「やられましたね、宣戦布告なしの奇襲攻撃」
振り返ってみるとおびえてる一人の少女が居た
「君が、大和か?」
手を差し伸べる山本
「は、はい、大和です」
オズオズと山本の手を握る大和
「じゃあ、一緒に頑張ろうか」
アメリカ大統領宅、
「知ってるか、君、パワーは常にパワーを求める」
「それって...」
「そうだ、我々はそのパワーを潰し、この世界の秩序を守る、聖戦だよ」
「そうですか、」
チューク司令部、
「...ウアァァァッ!!クソッ!!クソッ!!クソッ!!クソッ!!」
周りの椅子を片っ端から投げる栗松
今目の前の光景を逃避したかった
アメリカ艦艇によって連れ去られる日本の傷ついた艦艇たち
アメリカが来る前には隠蔽工作は済んでおり
日本のトップシークレット、エーテルエンジンなどは既に抹消済み
通常機関の残骸を機関室に入れていた
恐らく本土に持ち帰って見せびらかした後
標的艦として処分する気だろう
「何故だ...何故だッ!!」
負傷者多数、既に戦力は低下していた
死者は一人、長谷川艦隊司令長官、
艦橋に向かっての機銃掃射の際に当たり所が悪く
その場で息を引き取った
最後の一言は
「はは、とんだ誕生日だった...」
総理官邸、
「何!?聯合艦隊が...」
パキッと鉛筆が割れる音がした
「生き残ったのは三笠と宗谷だけのようです」
紙を握りつぶす織田秘書
「こちらからも哨戒艦を出して乗員全員を救助しろ、」
黙り込んだ和泉総理
「総理、この際、伊勢計画と四³艦隊計画を解凍しましょう」
「そうだな、NHKとNSKに連絡は取れるか?」
NHK大型倉庫、
「山本、やっとこのエンジンたちの出番が来たようだな」
ちなみに、ここには山本、栗松、以外のメンバーが居る
そして、今しゃべったのが小沢だ
「でも、これで振り出しに戻りましたね」
横井が呟く
「ああ、だがまた進めばいい」
NSKドック、
「ついに、動くっぺか」
誇らしそうに巨大な艦体を見る大西
「......ああ、ついに動くんだよ」
艦艇には相応しくない翼を付けたその艦体を見る
ドックで隠れて見えないが艦体下部にもいろいろとある様だ
「山本は、これをどう思うっぺか」
かくして、ここに聯合艦隊は再編された
作者:...やべ、ショックが残ってる
三笠:マジでやばそうだから先進めるぞ
作者:お願いします
三笠:感想、お便り待ってるぞ
作者:では...
三笠:また今度!