達成感を感じると結果がどうあれ幸せなのかもしれない
ボクは自分の気持ちを伝えることに焦っていた。
早く伝えなければ……
そんなふうに思っていた。
なにせ今まで、自分の思いを伝えられずに終わった恋が数知れないのだ。
ちゃんとしたところに呼び出して断られたらすごく後味が悪そうなので、スーパーの駐車場みたいなちょっと世間話でもしてそうなところで言おうと思った。
指定された時間は夕方の少し遅い時間で周りは暗くなり始めていた。
スーパーの駐車場は夕方の晩御飯の準備の時間からはずれた時間だったので、人はまばらであまりいなかった。ボクは目立たないところに車を停めるとしばらくすると伽耶ちゃんがやってきた。
『ごめんね。おまたせ……』
『ううん、今来たところだから大丈夫だよ』
こんな普通の会話でさえボクは心臓が口から飛び出るほどドキドキした。
言いにくいことを言う時はつい前置きを長く置いてしまう傾向にある。
しかし、こんなドキドキした状態で前置きを置けば自分でも何を言っているか分からなくなると思ったから、ストレートに言おうとボクは腹を括った。
『あの……好きなんで付き合ってください』
一世一代の勇気を振り絞って言った。
これを書いている現時点でもあの時の気持ちを思い出すとなんだかドキドキする。
『え……え――と……』
『あ、いや……突然のことであれかもしれないけど……もしその気がなければ断ってもらってもいいから……』
『いや……そのなんて言ったらいいか……え――と……考えさせてもらってもいい?』
『もちろん』
この日はこれで彼女とは別れた。
真面目な伽耶ちゃんはいきなりボクから告白されて焦ったのかもしれない。
まあ、断られたわけではない。
もしかしたら脈はあるのかもしれない。
てゆうかそもそも今まで告白までできないことが多かったボクが思い切って自分の気持ちを伝えられたというだけでも自分の中では満足だった。もしこれで断られてもそれは仕方ないと割り切ることができる……その時はそう思っていた。
告白をしてから返事が来るまで数日……。
やり切った感が強かったのでボクはそんなにドキドキしなかった。
もし伽耶ちゃんと付き合うことになったら最高だな……とは思っていたけど、駄目な可能性もあるということは十分に理解をしていた。
伽耶ちゃんと知り合った時にはすでに訪問入浴の仕事は辞めていた。
介護の仕事に魅力を感じていたボクは仕事を辞めてからも、介護の仕事で働き続けた。
訪問入浴の仕事を辞めてからは、訪問介護と通所介護の仕事を渡り歩き、介護タクシーの仕事に流れ着いていた。
訪問入浴の仕事で培ってきたボクの自信は他の会社に行って打ち砕かれた。
自分程度の人間と言うのは外に出れば多くおり、自分が一廉の人物であるかのように感じていたのは『井の中の蛙』であったことに気づいた。
伽耶ちゃんに告白したのはそんな時……。
当時は介護タクシーをやっていたのだけど、ボクは自分の仕事に一番自信が持てない時期でもあった。
仕事のことはまあいいや……。
そんなふうに思いながら毎日の仕事をこなしていた。
介護タクシーで病院に送った利用者の帰りの連絡を待ちながらボクは伽耶ちゃんからの返事を待っていた。
独身時代では一番幸せだった時かもしれない。
告白して数日後、ボクは伽耶ちゃんにファミリーレストランに呼び出された。