独裁者現れちゃいますっ!!
ごめんなさい……今回もまた、短いです。。。
「――!?」
零の横で、息を飲む気配がする。かえでも気付いたのだろう、微かながら冷酷な彼女の魔力が。
「どうした? かえで」
零は、まるで何も見ていない、感じていないかのように接した。なぜなら――
「い、今、前に誰かいなかった? お兄ちゃん……」
そう、かえでには、見えていないのだ。いや、正確には『見ることは出来なかった』だ。
何者か、ただ女と言うことだけは認識できたが、コンマ単位の速度で、零たちの前に現れたのだ。
「何言ってんだよ。しっかりと、前を見ろ。誰もいないだろ?」
「で、でも……っ!! ほんとに、居たんだよぉ……」
嘘をつくのは、あまり好きではないのが、零だ。だが、このことにかえでを巻き込んだら、危ないようなそんな気がして――
「――分かった分かった。次は、俺にも見えるかな?」
(気配の『完全消去』に加え、コンマ単位による秒速を超える『瞬間移動』……魔術戦争以来だな)
横で、む~と唸るかえでを横目で見ながら、意識を後方へ飛ばす。『後方認識』――魔力を意識と同調させ、その魔力が映す景色を、自分でも見れる魔術。
(捉えた……っ!!)
目の前に現れた女の冷酷な魔力と同じ質を探し当て、意識を同調させる。
黒く長い髪に、綺麗な紫色の瞳。体格は、154あるかないかの、至ってノーマルだが、肩には、その体形に合わない二メートルを優に超える魔術砲が担がれていた。
(……!!)
突然彼女が、こちらを向く。飛ばしているのは、魔力と意識だけに過ぎない故に、零の姿は確認されないし、そもそも実態すらそこにはない。完璧な潜入魔術――のはずだった。
「GutenTag……私の主様……」
彼女の瞳は、完全に零の姿をとらえ、そして言葉を発した。
(な……っ!? この魔術が、バレた、いや、そんなはずはないっ。この魔術を認識できるのは――)
だが、そこで零は思い当たる節があることに気がつく。まさか、そんなことは無い、と思いながらも零は彼女から目を離すことは出来なかった。
「独裁者……Verurteilung……」
そう言って、彼女は懐からアクセサリーを取り出す。形では、三角が四あり、ひし形になっていて、零のトライフォースに似ている。だが、零は知っていた、この二つは、似て非になる物ということを。
(やっぱりか……)
そこで、意識が元に戻される。横で、かえでが零を引っ張ったのだ。
「どうしたの? ぼーっとしてると、危ないよ?」
「あ、あぁ、ごめん」
いつもなら、かえでに引っ張られただけで全身が痺れるような快感が来るのだが、零は、それ以上に彼女のことが気になって仕方がなかった。
最後に言った言葉、そして、『独裁者』
唯一、魔術戦争で、連合軍にも、反乱・統一軍にも属さなかった、新しい戦力。その名の通り、連合軍と、反乱・統一軍の間を取り、勝手に仲裁をした軍だ。
一見、行いは善良に見えるが、裏では何か悪い企みを持っていると言われ、警戒をされた軍だ。そして、彼らの一番の得意技が、気配を消すこと。
(そんな奴らが、何故俺に接触を……)
零は、何か自分の知らない所で、大事が動き出している、そんな気がした――……。




