救いの代償
実験中の検体が暴走、少女は再び侵食体と遭遇する。
本能的に能力を発動し、自身の力を初めて理解するが、そこにあったのは生き延びるための恐怖だけだった。
施設の支部が崩壊し、少女は他の生存者たちと避難所で暮らすことになった。
瓦礫に囲まれた廃校の体育館、かろうじて残る食料と水。
人々は恐怖と疲労で顔を曇らせ、少女もまた、日々怯えながら過ごした。
侵食体の襲撃は日常だった。
そのたびに少女は能力を使って逃げ延びる――ただ自分の身を守るために。
ある日、目の前で小さな子どもが侵食体に襲われそうになる。
足が動かなかった。
呼吸の仕方を忘れたみたいに、喉の奥が詰まる。視界が揺れる。
逃げなければならないのに、体と地面が縫いつけられたようだ。
子どもの悲鳴が、遠くから響く。
――間に合わない。
そう思った瞬間、指先が勝手に動いた。
震える手を前に伸ばし、息を止める。
何かを掴むように、強く、ただ握りしめた。
侵食体の動きが止まる。
子どもは転がるようにして、安全な場所へ逃げていった。
その姿が見えなくなるまで、少女はその場に立ち尽くしていた。
震える腕を押さえつけるように抱え込みながら、ようやく足を動かす。
そして、静かにその場を離れた。
その行動を目撃した避難所の大人たちは驚き、少女の力の存在を知ってしまう。
その日以降、少女は能力を酷使されるようになる。
避難所の管理者たちは「守る力」として、少女を指示のもとに動かした。
怯えながらも従う少女の周囲で、他の子どもたちの安全も守られつつあったが、自由はなく、重圧だけが増していった――。
読んでいただきありがとうございます。
この作品では、力を持つことの代償や、その中で揺れる気持ちを中心に書きました。
キャラクターの感じていることや選択が、少しでも伝わっていれば嬉しいです。
次の物語では、少女にとっての新しい一歩を描いていく予定です。よければ、そちらも目を通していただけると嬉しいです( ´∀`)




