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【二人のデュエット】

ナイフでゲームの相手に不意打ちを仕掛けた天真爛漫な少女、マサ

それを手だれた大人達を凌駕するほどの速度でいなした少年、ラリス

彼らの運命の10日間の詳細が明かされるのであった

金髪に紫のメッシュが入ったお団子ヘアー、着崩した制服。金縁の丸メガネの奥で、狂気を孕んだ青い瞳をした少女が少年の喉元にナイフを突きつける。


迫る刃をいとも簡単に受け止めた、整った顔に不似合いな、黒いパーカーを着た少年は眉ひとつ動かさない。少年の青緑の澄んだ瞳と、少女の狂気に満ちた青い瞳が至近距離で静かに火花を散らす。


その光景は、黒澤たちに「最高級の芸術品」を鑑賞しているかのような錯覚さえ抱かせた。


「おい!! 勝手な真似をするな!」


我に返った蓮が、怒号をあげる。



「これくらいいいじゃん! 貴方たちもこういうことする人たちでしょ? 頑張って裏社会に溶け込もうとして振る舞ってるんだから〜。ねえ、ラリス君?」



「おい……さっさとナイフをしまって離れろ。香水がうざったい…」


ラリスの呆れた声に、マサはケラケラと笑いながらナイフを収めた。



蓮は二人が、こちらの指示を仰ぐような視線を受けたと同時に、このゲームのルールを説明し始めた。


「……さて、ようやく大人しくなったな。


お前らが今回の一度限りの仕事で『踊る』ゲームの説明をしよう。

蓮の号令と共に、黒服の男たちが二つの銀色に輝くトランクを差し出した。」



「開けろ。それが君たちの『正装』だ。10日間それ以外の服上に羽織ることを禁じる。」



トランクの中に収められていたのは、一見するとストリートファッションのような、光沢のある長袖のフーディー型のベストだった。


その色は、カジノの象徴である**「ディープレッド」と「漆黒」のバイカラー。

袖にはポイントカウンターと思われる機器。光の当たり方によって、金色の刺繍が微かに浮かび上がるという、高級感の漂う一着だ。


特筆すべきは、その表面に配置された「ポイントゾーン」である。


両肩には10万ポイントを示す「白のチップ」を模した円形センサー。

背中には50万ポイントの価値を持つ「赤のチップ」が、背骨を保護する形で配置されている。

胸の中央には100万ポイントの「黒と金の最高級チップ」が、心臓を覆うように不気味な拍動をもって点滅していた。



「……何これ、軽いし意外と着心地いいじゃん! メッシュが入ってて涼しいし、このダボっとしたシルエット、センス良いね!」


マサが制服の上から羽織り、ポーズを決める。カジノカラーの赤が彼女の髪の紫色のメッシュと混ざり合い、異様なほど映えていた。



「(……見た目とは裏腹に、内部は高密度の衝撃感知繊維で編まれている。このチップ部分は、ステッキの仮想衝撃を熱変換して、ポイントデータに変換するインターフェースか)」



ラリスは袖を通し、手首のポイントカウンターとの同期を確認した。


蓮の冷笑と共に、ベスト衝撃感知装置が一斉に起動し、電子的な輝きを放ち始めた。



「その模様はポイントターゲットだ。そのチップの紋様はそれぞれ表情してある通り、肩は10万、背中は50万、そして胸の急所は100万ポイント。」



「可愛い〜! やっぱお兄さんセンスあるねー!」


マサがはしゃぎながら取り出したのは、ポイントベストと同じくカジノカラーで装飾されたペン状の豪華な『ポイントステッキ』



「それは君たちの意識――すなわち『闘争の形態』を具現化する特殊デバイスだ。

短刀、戦斧、弓……扱いやすい武器をイメージしろ。だがそれはバーチャル兵器。

実体はあるが肉体にダメージは与えない。あくまでベストを叩き、ポイントを奪うための……いわば“タッチペン”のような物だ」



「裏社会ってこんなに進んでるんですかー?!

機械の洋服なんて近未来過ぎ!!バーチャルウェポンなんて漫画じゃん!!」



「(……これ、後で解析しよう)」


ラリスの瞳に、知的好奇心の色が混じる。



マサが不敵に笑うと、ステッキは瞬時に鋭利な短刀へと変貌した。一方、ラリスのステッキは、重厚な戦斧へとその姿を変える。



「すごーい!ホログラムに触れてるし重さもある!!」



「これから10日間、『メインゲーム』の勝敗、『サブゲーム』として互いのポイントを日常的に奪い合う小銭稼ぎも勿論ポイントに換算される。

ルールは単純。最終的に全ての得たポイントが反映される袖のカウンターのポイントが多かった方が勝ちだ。

報酬金は、負けた方の全ポイントと自分のポイントを合算した額を現金で支払おう」



「えっ! だから賞金無限なのかー!じゃあラリス君をボコボコにすればするほど、私の取り分が増えるってこと?! 最高じゃん!」



「サブではお前達のポイントはベッドできない。

……だが、メインゲームでは持ちポイントを『ベット』してポイントを倍化することができるので活用しても構わない。


簡潔に言えば、お前達のカジノでの勝負の勝敗に、ベッター達が賭ける、という仕組みだ。


そして忘れるな。...これは“仕事”だ、お遊びじゃない。お前らの一つ一つの行動に、世界中の裏の権力者達の莫大な金が動く。

上手く働き観客ベッターを熱狂させられれば、推定1000億の内、自分に賭けられた総額の0.1%を報酬に上乗せしてやろう」



「なるほどね……。客を惹きつける『魅せる勝ち方』をしなきゃいけなくて、それが私達の仕事であり利益である....か。

そのメインゲームってのは?」



蓮は冷酷な笑みを浮かべ、その名を告げた。



「『人間神経衰弱』『コロシアム』、そして『人間ポーカー』だ。これを10日間の中でやってもらう。」



「やばー! 面白そうじゃん!」


マサの声が、不気味なほど明るく響き渡る。


「ラリス君もなんか喋りなよ〜。メインだけじゃなくて、寝てる間にバンバンポイント稼いでいくからね!!」



「……俺は動きたくない。メインゲームに注力するから好きにしろ」



「ええ〜?! ラリス君インドア系?!つまんないしお客さん付かないよ〜! 私に全部持ってかれちゃうよー!」



「ハッ、僕に賭けるような物好きは、派手な立ち回りなんて期待してないだろ……。それに、俺が消極的に動いておいた方が、最終日にお前が僕に負けた時、あんたに賭けていた連中の絶望する鳴き声がより高く響くからな」



ラリスは戦斧の形をしていたデバイスを元のステッキへと戻し、胸ポケットに収めた。



「つまんないの〜」


マサは唇を尖らせて肩をすくめた。



「……それと、募集要項にも書いたが“命懸け”だと伝えたな。今回の敗北者には、例外なく海の藻屑となってもらう。それもまた一つのショーとして、存分に楽しませてもらうからな」


蓮は冷酷な宣告を言い残すと、背を向けて扉の向こうへと消えていった。



マサとラリスは再び屈強な男たちに担ぎ上げられ、本棟の豪華絢爛な造りとは正反対の、島の外れにある古びた掘立小屋へと放り込まれた。



「ちょっとお兄さんた達!! さっきから移動が雑すぎるんだってば!! 適当にも程があるでしょ! それに何よ、この部屋! 福利厚生をしっかりしてよね!! 物は揃ってるけど、きったないじゃん! ……あ、鍵閉められた!!」



ガチャン、と重々しい錠の音が響く。マサは窓際に駆け寄ると、遠くに白く輝く要塞を指差した。



「あー!! ラリス君見て見て! ここからカジノ場が見えるよ! 外見は豆腐みたいだけどだったけど、中はめっちゃゴージャスだったな〜。あっちに泊まりたい! なんでこんな遠いところに泊まらなきゃいけないの?!」



「(……僕の死因はあいつらでなく、この女によるストレス性のショック死なのかもしれない....

しかし噂に聞いてた通りの場所が本当にあるとは...)」


ラリスは深いため息をつきながらも、意識はすでに切り替わっていた。埃っぽい部屋を歩き回り、死角に設置されたピンホールカメラの位置を冷静に特定していく。


その様子を、本棟の最上階、黒澤 亮司の、書斎の隣にあるモニタールームにある廃屋のカメラの映像を黒澤亮司と川越が眺めていた。

青白い光が、黒澤 亮司の深い皺が刻まれた顔を不気味に照らし出す。


「父上、『踊り子』達を島の外れの廃屋に収容しました」


【開幕のプレリュード】を終えた蓮がモニター室へと入ってきた。


「父上……。失礼ながら、本当にあのような子供に、我が【ルナ・エクリプス】の未来、ひいてはこの社会の経営権の一端を委ねるおつもりなのですか?」


蓮は、思わず手に力が入る。彼にとって、自分の世界そのものであるこの絶海の孤島。

それを、今日昨日連れてこられたばかりの、礼儀も知らない子供に荒らされることが、我慢ならなかった。



亮司は答えず、代わりに川越がメイン賭博場の監視カメラの映像を別のモニターで流し始めた。



そこには世界中から、黒澤に招待された数百人裏社会の人間たちが、いつものカジノの道具は片付けられ椅子と二人の様子を観戦するモニターで溢れたメイン賭博場で怒号を漏らしていた。



『こんにちは〜マサでーす!!

おじさん達私にかけてくれたら貴方達の掛け金倍にしちゃうよ〜!明日から楽しみにね〜じゃね〜』


マサが廃屋から、どうやったのか、裏の回線をマイクに繋ぎ賭博場全体に声を響かせた。



「ふざけるな! 黒澤も焼きが回ったか?こいつらの勝敗に賭けろというのか?!どちらかの『踊り子』に掛け金を倍にして返すと抜かしておいて!!

こんなJKとガキに俺たちの数億を預けろっていうのか!」


「おいおい、今回のアノマリーはひどすぎる。さっさとプロの殺し屋を投入して、このまま射殺ショーに切り替えろよ」


「ギャングの掟も知らねえようなガキの遊びに、誰が金を出すかよ。運営、今すぐ帰らせろ!!」


「マフィアのボス達を招待して見せるのが、これか? 恥を知れ!」



『皆さん落ち着いてください、まだベットは始まっておりませんし、これからの『踊り子』の様子を伺ってからでもよろしいではございませんか。なかなかに面白いショーになりそうですよ。』


川越が諭すように呼びかける



「……見ての通りです、蓮坊っちゃま。世界中の有力なギャング、ヤクザ、組織の幹部たちは、このキャスティングに激怒しております。このゲームは久しぶりの変わり種ですから、こう言ったことも想定済みです...」


川越が眼鏡を指で押し上げながら、淡々と付け加えた。


「ですが、蓮坊っちゃま。その一方で……彼らの不満とは裏腹に、賭け金の総額は過去最高を記録しています。


皮肉なことに、人間は『馬鹿げたもの』ほど、その末路をこの目で見届けたくなる生き物なのです」


亮司は、モニターの中の廃屋でカメラを探し回るラリスと、鼻歌を歌うマサを眺め、低く、重厚な声で笑った。



「蓮。裏社会の経営とは、予定調和を愛でることではない。

『混沌』をいかにして『利益』に変えるかだ。」


亮司は立ち上がり、窓の外の漆黒の海を見下ろした。


「あの二人は、ただの子供ではないだろうなぁ

そして、世界中のベッターたちは、その姿に恐怖し、怒り、そして最後には熱狂して財産を投げ出すだろうよ

奴らが本物か、ただのチリか……。明日の第一戦、そこで答えが出る。お前は今回のゲームのディーラーだ。ここからは全てお前に任せる。」


「……」


モニター室を後にした黒澤 亮司と川越。

蓮は改めて自分の肩にのしかかる責任を感じ焦りをっ感じていた。



その頃、廃屋。


『明日はお前達に「人間神経衰弱」をしてもらう

詳細は明日話そう、では』



廃屋のスピーカーから聞こえてくる音を聞きながら

マサは埃だらけのベッドの上で、無邪気にラリスに問いかけていた。



「ここにマイクとカメラがあるよ〜すごいね〜

さっき変なボタン押しちゃったけどまあ良いか」


「ねえラリス君、さっきお兄さんが言ってた『人間神経衰弱』って、普通の神経衰弱みたいなのじゃなくて、やっぱり人間をめくるのかな? でもどうやって?

キャー!!ワクワクするね〜!!」



「……」



ラリスはマサの相手をせず、手元のステッキの構造を解析し、裏社会の真髄に触れる、好奇心からか不適な笑みを浮かべていた。



「ねー、ラリス君って何でこのバイトに応募したの??採用されたんだもんIQテストのスコアとか高かったんでしょ?!」



「話して何になる。だがお前が相手だって知ってたら確実に辞退してたよ....」



「ははーん、私知ってる〜ラリス君も同じでしょ?!私も250くらいだったよ〜」



「は?!」


正確に言い当てるマサにラリスは驚きを隠せなかった。


「その顔図星〜?!驚いてる顔も可愛い〜!

あっ、そうだ...私たち一応10日間限定の同僚な訳だで、ここで死んじゃうかもしれないでしょ?!


せっかくなら良い演奏という名のショーをあの人たちにご覧に入れましょう!


お金をもらう立場しっかり仕事をしなきゃね!

そのためにテーマを決めて結束力を高めましょう?!


そうだな...二人合わせてIQ 500...その二人が『踊る』のを鑑賞しそれに賭ける....まさにIQ500の演奏会ね!!

よーし!私達の演奏をあの人たちを楽しませましょうね!!」



「狂ったバカに演奏会なんてできるかよ!楽しませたかったら一人でやれ!それに俺を入れるな!やかましい!IQ250の狂騒曲にでも改名しとけ」



「ほほー。IQ500の狂騒曲...いいじゃない!!その曲を一緒に完成させることが今回のお仕事なのね〜

オッケー私たちのテーマも決まったことだしおやすみー」



大の字で無防備に眠る彼女を奇怪に満ちた目で見つめながら小さな瞼を閉じた。




翌朝。静寂を切り裂いたのは、廃屋の錆びついた扉が乱暴に蹴破られる音だった。



「おい、起きろ。時間だ」



数人の黒服の男たちが、土足で部屋に踏み込む。しかし、そこには緊張感の欠片もない光景が広がっていた。

マサは埃っぽいベッドの上で、お団子ヘアを崩したまま「んー……あと5分……」と寝言を漏らし、

ラリスは壁際に座り込んだまま、腕を組んで深く眠りに落ちている。



「……チッ、ガキが」



男たちがマサの肩を掴んで揺さぶるが、彼女は

「やだぁ、お母さん、朝ごはんはパンケーキにしてって言ったじゃん……」

と、寝ぼけて男の腕をポカポカと叩く始末。



痺れを切らした一人が、ラリスの襟元を掴んで強引に引きずり起こした。



「……ッ!?」



ラリスは起こされた事を不快に思った顔で目を開け、瞬時に周囲を確認する。



「寝たままでいい!運ぶぞ!」



男たちは、抗議するマサをラグビーボールのように小脇に抱え、不機嫌なラリスの肩を担いで、文字通り「荷物」として廃屋から運び出した。



「ちょっと待って! 何度言ったらわかるの?!

移動が雑すぎるんだってば! 揺れて酔うんだけど!」



朝日が差し込む森の中、マサの絶叫が虚しく響く。やがて視界が開け、昨夜「白い豆腐」と評したあの巨大な立方体が見えてきた。



窓一つなく、ただ無機質な白壁がそびえ立つ。マサは担がれたまま、不満げにその建物を見上げた。



「やっぱり豆腐じゃん……。あんな無味乾燥なところでショーとか、マジでモチベーション上がんないんだけど!」



だが、重厚な装甲扉が音もなくスライドし、二人がその内部へ「放り込まれた」瞬間。マサの文句は驚愕の声へと変わった。



「――っ、うっそ。マジで!?」



一歩足を踏み入れたそこは、外観からは想像もつかない黄金の極彩色に彩られた世界だった。


天井には数千のクリスタルが連なるシャンデリアが幾重にも重なり、漆黒の大理石の床にはその輝きが鏡のように反射している。


壁には深紅のベルベットが張られ、金箔の装飾が施された彫刻たちが、二人を冷笑するように見下ろしていた。



ラリスは床に降り立ち、パーカーのフードを整えながら、鋭い視線で周囲の構造を確認する。



「こっちに泊まりたかったな〜! 今からでもあのお兄さんに頼めないかしら?こんなに豪華な場所なら、お食事も最高級でしょ!?朝運ばれながら乾パン食べさせられただけでお腹空いてるんだけど〜!」


場違いなマサの声が、冷たい静寂に包まれたホールに響き渡る。その時、フロアのスピーカーからとある男の開幕の合図が放たれた。



『これより、メインゲーム第1戦【人間神経衰弱】を開始する』



蓮の合図とともに中央の床が開いた。

そこからステージのように上がってきた床には、等間隔で十脚の重厚な椅子が並べられている。そこに座らされているのは、顔の隠された十人の男女だった。


全員が頭からスッポリと、光を一切通さない漆黒の布袋を被せられている。

表情を読み取ることは不可能だが、布が小刻みに震える様子や、荒い吐息で布が内側から膨らむ様が、彼らの極限の恐怖を雄弁に物語っていた。


かつてどんなに高価な服を纏っていた者も、今は等しく無機質な「グレーの囚人服」に包まれている。

胸元には大きく「01」から「10」までの数字が刻まれ、彼らがもはや「人間」ではなく、ただのカードのように鎮座していた。


ロビーを埋め尽くすのは、高価な香水の匂いと、カードたちの漏らす「湿った呼吸音」。

そして、時折聞こえる、誰かが恐怖に耐えきれず漏らした小さな嗚咽だけ。


壁一面の金箔が、彼らの絶望を反射してより一層眩しく輝き、そのコントラストが「ルナ・エクリプス」の悪趣味さを引き立てていた。



「この人たち大人しくここに連れてこられたの?」



『我々が彼らを回収した際、一様に同じ条件を提示した。“この場から逃げ出そうとすれば、我々に脳天を撃ち抜かれるが、ゲームを全うすれば、一生遊んで暮らせるほどの黄金を約束する”……と。』



「趣味悪いね〜、さっすが裏社会!!」



『……さて。この10人の『カード』たちが、なぜここに並べられていると思う?』



蓮の声は低く、ロビーの隅々まで染み渡るように響く。彼は一人の男を見下ろしながら、残酷な事実を突きつけた。



『ここにいるのは、ただ無作為に集められた人間ではない。全員が、互いに断ち切ることのできない“因縁”で結ばれた者たちだ。


ある者は、愛する者を奪った仇どうし。

ある者は、共に罪を犯し、互いを裏切り合った共犯者。ある者は、親の代から続く積年の恨みを背負わされた被害者と加害者。』


『……彼らは、人生のどこかで一度、相手の存在によって自分の運命を決定的に狂わされた者達だ』



蓮は冷たい笑みを浮かべ、二人を試すように見据える。



『このゲームの目的は至って単純だ。声を聞き、生き様を読み、彼らの魂の傷跡が誰のものと一致するかを当てろ』


蓮の声が、冷徹にホールを支配する。



「へぇー……一戦目は心理戦か。じゃあ、ゲームが進むたびに誰かの人生の”最悪の1ページ”が開かれるってこと? 可哀想〜!!」


マサは口では同情しながらも、その瞳は獲物を前にした獣のように輝いている。



『1ターンにつき一分の制限時間を設ける。後は神経衰弱と同じルールだ。初期の持ちポイントは500万。

今回のゲームでは、勝者に賭け金の三倍が配当される。賭ける額が決まったら、各々のカウンターを操作しろ』



二人のポイントカウンターに500万ポイントが表示されたと同時に、ロビーの壁に、巨大なデジタルタイマーと配当表が浮かび上がった。



「じゃあ……私、とりあえず全額! 五百万賭ける〜! えいっ!」


マサが迷いなくボタンを叩く。



「……俺も、五百万だ」


ラリスも淡々と応じ、全ポイントを入力した。



その様子を別室のメインカジノ場で観戦していたベッターたちが、モニター越しにどよめく。


「いきなり全額ベットかよ! 景気がいいじゃねえか、ハハハハ!!」


「俺はあのメスガキにまず五億だ!」



狂乱する大人たちの怒号を背に、マサは自分より頭一つ低い背のラリスを見下ろし、不敵に微笑んだ。


「さあ、最高のショーをお見せいたしましょう! ねっ、ラリス君!」









最後まで読んでいただきありがとうございました!

魂の傷跡を彼らはどう見抜いていくのか、果たして勝者はどちらなのか?記念すべき第一戦目を是非ご覧になって下さると幸いです^_^


次回【人間衰弱】

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