この感情は
ガサッッ…!
風が吹いたにしてはやけに大きく木々が擦れ合う音がしたなと思ったら、そこから出てきたのは…
お兄ちゃんーーー?!
私の兄が、木の茂みの中からバーン!と登場してきたのだ。なんで今頃…こんなタイミングで!
兄は伊東くんを指差しながら目をキラキラと輝かせている。まるでお宝でも発掘したかのように。
(指さしなんか失礼だよ…。)
私はササッと兄の手を降ろさせた。こんな状況で、なんてことしてくれてんのーーー!?
伊東くんは驚いた様子、というよりも真顔で、そして無言で私たちを見つめていた。その表情からは、何を考えているのか全然わからない!
「そんなこと言われても。」
だ、だよね~~…
じゃなくて!
「…っほんとだよ!ていうかなんかごめんね!この人急に変なこと言い出すから…!」
私は恥ずかしさのあまり、つい大きな声を出してしまった。
…気を取り直して。
「助けてくれてありがとう…」
そしたらまたあのときみたいに笑いかけてくれたりーー…
「相変わらず馬鹿だね」
しない…!!
伊東くんは、やれやれと呆れたような顔をして私たちの横を通り抜け、歩いて行った。
ん…??
“相変わらず馬鹿”…?
「どうせまたヘンなこと言ったんでしょ」
!!!
・・・・・
「はぁぁあーーっ?!初恋相手ェーーーー?!?!?」
兄の声が、私の部屋中に響き渡った。
「勝手に話広げないでよお兄ちゃんっ!かもしれないってだけだから…!!しかも私、初恋なんて一言も言ってないから!」
「これは運命かもしれねぇな…」
「でも苗字違ったみたいだし!違う人の可能性のほうが十分だよ。あと私のこと知ってたのも、この間助けてくれたときの話かもしれないから…!」
「すげぇよな。アイツも俺みたいになかなかイケメンだったぞ…?」
「…。しかも私はただあの人…かもしれない人のことが気になってたってだけで、これが恋っていうのかもよく分かんないし…」
会話が全然噛み合わない。兄はとにかく早とちりすぎる。特に恋愛の話になると勝手に話を進めてくるから、困ったものだ。
「でも、ほかの男にはないトキメキを感じたんだろ?!」
ハッとした。確かに男子にドキドキしたというのは初めてだったし、伊東くんにはほかの男子とはまた違う不思議な感情が湧いてくるんだよなぁ。
「それが恋だぜ香恋ー!!」
それももうキラキラした顔をして、私の伊東くんに対する感情を「恋」だと断言してきた。
「んじゃ早速アイツにアプローチするぞ!」
「だから色々早いって…」
お兄ちゃん…。自分の恋には自分のペースで行かせてほしいんだけど!
でも決めた。まずは伊東くんの名前を調べたい。もしあの人とは違っても、私の頭の中はもう伊東くんでいっぱいなんだ。伊東くんのクラスを探したら何か分かるかもしれない。
よし。明日も伊東くんを探しに行く…!




