新たな風
こちらも未公開ネームを元にしています。セリフは結構そのままです。
「水谷さんどうしたの話って」
私は兄から言われた通り、成瀬君を校舎裏に呼び出した。自分から誰かを呼び出すなんて、人生初だ。
「あの…まだ誰とも付き合う気になれないって言ってたけど、友達から始めるっていうのはどうかなと思って…」
成瀬君とは友達とまではいかない、時々廊下とかですれ違ったときに話しかけられるくらいの仲だ。それだけでも、良い人だってことはすぐに分かった。
恋に消極的な私に気を遣って、教室まで会いに来るなどのしつこいことはしなかったり、私だけではなく他の人にも平等に優しかったりする。だから、友達から始めてもう少し関わって、彼のことを知る機会を増やしてみるのも良いかもしれない。あの兄の提案だけど、それには私も納得した。
だが少しの沈黙の後、成瀬君はフッと笑ってから言った。
「…オレに興味持ってくれたの?」
突如、いつもの笑顔が消えた。
「友達ねー…」
ドンッ!
目の前で校舎に向かって右手を伸ばし、手のひらを私の首の真横くらいの場所に力強く打ち付けてきた。いわゆる「壁ドン」の状態に。
「友達から始めたら、じきに彼氏になっていいってことだよね?」
「え……」
成瀬君はもういつもの成瀬君じゃなかった。
「オレは友達だけじゃ満足できないんだけど」
まっすぐに見つめられ、真剣な眼差しを向けてくる。
「自分の発言には責任持たないとね。」
顔があまりに近くて、思わず私はぱっと横を向き顔をそらした。見るといつの間にか、もう片方の手も壁に添えられていた。両腕に挟まれていて、逃げ場がない。
この人…怖い!!
私は恐怖心から、何とか成瀬の左手をバッと勢い良く払いのけ、必死に逃げだした。
「待ってよ!」
成瀬は追ってくる。一番安全かもと思っていた人が、こんなだったなんて。
助けてお兄ちゃん!!
(きっとどっかで見てるんでしょ…?!)
「…何やってんの?」
成瀬に追いつかれ、肩を掴まれた瞬間だった。目の前から急に聞き覚えのある声。
この声は………伊東くん…!!!
「ジャマなんだけど。ここ通り道」
そう言うと伊東くんは、私の肩に触れていた成瀬の手首をぐいっと掴み、
「お前…フザけてんのか」
と言うと、伊東くんよりも大きな男を難なく地面へと突き倒した。
「…ってぇな」と成瀬は尻もちをついた体勢になる。
伊東くんは成瀬にゆっくりと近づき、言った。
「好きな女の前で態度変わるとか、男としての恥だと思わないのか…?」
そのとき、ザアッと風が吹いた。辺りの木々が揺れ、伊東くんのサラッとした髪も一緒に靡く。
成瀬に対する恐怖心と、走ったあとの動悸に、もう一つの感情が、私の鼓動を一層速くさせた。
「…ッ恥じゃねぇし!!これがオレなんだよ!!」
成瀬は起き上がり、秒で逃げていったのだった。
フッ……
「…見つけた。お前こそ香恋にふさわしい男だーーー!!!」




