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オトコレ!  作者: となみ。
第一章
2/10

蘇る

やっとの伊東君登場回。

「カッカカカカレンさん‼️」


 次の日の放課後のこと。皆帰るか部活に行ってしまい人が少なくなってきた頃の廊下で、知らない男子に呼び止められた。その人はピアスをしていて、髪の毛にはピンをいくつか付けて留めている。制服は緩めの着こなし。まとめて言うとチャラそうな見た目の男子だった。同じクラスでもなければ、話したこともない。学校で見たことすら記憶になかった。


「きのうの手紙なんだけど…読んでくれたかな?えっと返事はーー…。」

初対面で何かと思えばこの人、あの名前のなかった手紙の差出人か!納得した。


え~~~っと……

ふと、きのうの兄の言葉を思い出す。

「一歩踏み出さないと過去から抜け出せないまま」。


そっか。いつもは話したこともない人に告白されたら、それっきりもう話そうとしなかった。無意識のうちに自分で、壁を作っていたんだ。でも、知ろうとしないと何も始まらないか…。今まで何も考えず断ってきた人たちに申し訳なさを感じた。


断るという方法以外の選択肢を選んだのは、始めてだった。兄のその言葉が響いてしまったのだ。


「じゃあ…友達から始めてみるっていうのはどうかな…?」

「エッ?!」

かなり大きな声で驚かれた。その男子は興奮気味な様子になり、

「ってことは試しに付き合ってくれるってことだよね!?うぉぉぉヤッターー!!じゃあライン交換しよ!!」

え………?


なんでそうなるの…

どうして「付き合う」という解釈になったのか。意味が分からない。

連絡先交換だけはできるだけ避けたかったというのに。


こういう男子のタイプは手ごわい。説得するにも時間がかかる。というのは、経験からして、見ればわかっていたはずだ。でも、決めつけはいけないと思ったから……。


「あの…そういう意味で言ったんじゃ…」

あの提案以降、私の発言は耳に入っていないようで、いーからいーから!と迫られる。

どうしよう…!!!



ガラッ!!



そのとき、教室のドアが勢いよく開いた。バンっ!と大きな音をたてて、ドアが全開に開けられた。すると中からある男の子が出てきた。

『嫌がってるってわかんないの?』


それも低い声が廊下に小さく響いた。チャラめ男子のことをまっすぐに睨みつけている。

ちょうど近くに居合わせた男子が、介入してきてくれたというのだ。


彼の表情はより険しくなり、続けて言った。

「男ならそういうの一番に考えるべきだよね。そもそも付き合うなんか一言も言ってねぇよ」


まさにその通りなことを、ズバッと言ってくれたのだ。その人はそう言うとすぐに、廊下を歩いて行ってしまった。



この感じ…この感覚。

どこかで感じたことがあった。


「いっ伊東?!もしかして全部聞いてたのかよ…」とチャラめ男子が焦る。

あの人は、伊東くんって言うんだ…


あの時と違うかもしれない。でもーー…

私は迷わず駆け出した。


「あのッ!いまの…ありがとう…!」

その人の背中に向かって伝えた。


するとその人は振り返って、微笑みながら、「ん。」と返してくれた。



この瞬間が忘れられない。

この気持ちは、たしかに

過去に私が感じたものだ。

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