仲良くなりたい
「香恋ちゃん!おまたせー!ごめんねー授業長引いちゃって…」
「ううん!全然待ってないし、大丈夫だよ!」
4限目が終わった昼休み。私はお弁当を持って5組の前の廊下で待っていたら、七音ちゃんがついに出て来た。どきどきしながら七音ちゃんに着いていき、2年生の教室に繋がる階段へと向かう。
「あーっ!中間テストの結果、もう貼り出されてるー!」
階段横にある掲示板に、七音ちゃんが興味を示して立ち止まった。そうだ、5月にテストを受けたんだった。テストはもう返されているが、この学校では国数理社英の5教科のテストで上位20人に入った生徒の結果が廊下に張り出されるのだ。20位の人でも5教科計478点と、レベルが高い。
私はといえば、合計で421点と全教科80点以上は取れたのだが、この人たちにはまだかなわない。いつかはここに載ってみたい。
成績1位の生徒は、5教科満点の、計500点という見事な成績を修めていた。
その人は、1年5組、『伊東旭』。
う、嘘でしょっ…?!
これって、あの伊東くんだよね?
こんなにすごい人だったなんて…。でも伊東くんなら、あり得る気がした。
「ねね、じつは1位の人、私の幼なじみでさーー…。あっ、旭!ちょうど良いところに!!」
振り返ると、伊東くんがこちらの方に向かって歩いてきていた。目を見開き驚いた様子で私たちを見つめ、立ち止まっている。
「え、仲良いの」
「あっうん!」
七音ちゃんに言ったのかもしれなかったけど、私はとっさに返事をしてしまった。
「えっ!香恋ちゃん旭と知り合い?!」
「あ…えっと、この前助けてくれて…」
伊東くんにとってはただ助けた人のうちの一人かもしれないけど、あの伊東くんに認知されているのがすごく嬉しかった。頭が良いから、そりゃ記憶力もあるか。
「あと、水谷さんのお兄さんがなんか俺のこと気に入ってる」
?!?!?
「あれからお兄さんに話しかけられてさ、俺のこと色々聞かれたんだよね」
そんなこと、いつのまに。
何してくれてんのお兄ちゃん?!!
「ごめんねうちの兄が変なことを…!変な話聞かされたりしてない?!」
余計なこととか、言ってないよね?伊東くんが私の気になっている人だった、とか言われてたらおしまいだ。
「まぁ、質問攻めにされただけだから。水谷さんのことは何も聞いてない」
よかった…!
何を色々聞き出したのか知らないけど、そういうときはちゃんとしてるんだ。ナイスお兄ちゃん。
「そーいや、かれんってどんな漢字書くの」
伊東くん、いきなり私の名前を出してきた。
「なっなんで?」
「いや気になったから」
私の名前が気になるってどういうこと…?
「えっと、香るに恋って書いて香恋です」
「えっかわいー!香恋ちゃんらしー!」
七音ちゃんが褒めてくれる。照れるな…。私はまさかの質問に戸惑いつつ、思わず敬語になってしまった。
「へぇ…良い名前じゃん」
さっきまで真顔だった伊東くんが柔らかい表情になって、そう言ってきた。
「そんなっ…ありがとう…」
ぶわっと顔が熱くなる。褒めながら笑いかけないで…。
伊東くんと会話が続くなんて、夢みたいだ。
気がついたら、七音ちゃんが黙って私たちを見ている。伊東くんと私の、2人だけの世界みたいになってしまっていたのだ。
「いっっ伊東くんだって、すごく良い名前だよね…!!あと、七音ちゃんも!素敵な名前!」
照れ隠しに言ったけど、人のことを褒めるだなんて慣れてないから余計に恥ずかしくなった。2人の名前も素敵だと思ったのは本心だけど。
「水谷香恋ですっ!改めてよろしくねっ!!」
私は2人にぺこっと頭を下げた。今、顔が真っ赤なはずだ。色々重なり合って、恥ずかしさと今までにない興奮が押し寄せていた。
「よろしく。」
「あはっ!よろしくねー!」
伊東くんは相変わらずの真顔に戻って、七音ちゃんは可愛い笑顔で、返してくれた。
急に始まった、不思議な関係。
2人とこれからもっと仲良くなりたい…!
こちらはネームを元にしました。




