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オトコレ!  作者: 湊川
第一章
10/18

友達

こちらの話はネームではなく、続きを完全に書き下ろしました。

「う、うん。もちろんだよ!へぇ…七音ちゃんっていうんだ…?」

彼女さんに私と同じ学年の妹がいることは、兄からもちろん聞いている。だけど、こんな形で出会うことになるとは!


兄に紹介されて初めて七音ちゃんを知ったかのように振る舞ったせいで、カタコトな返事になってしまった。兄に怪しまれないだろうか。


「やったー!!うん、私七音だよ!お姉ちゃんがお世話になってまーす!…っていうのもヘンかー笑」


七音ちゃんはすごく嬉しそうだ。もうすっかり伊東くんといたときみたいに元気な笑顔の七音ちゃんに戻っている。兄はというと、ご満悦な様子で、驕り高ぶっているように見えた。

良かったのか悪かったのか。少し気まずく感じているのは私だけだ。色々と、思考が追いつけない。


キーンコーンカーンコーン…


ちょうど良いところで、授業開始のチャイムが鳴ってくれた。

「うわ、やっべぇ…!じゃーなお前らっっ」


兄はダッシュで去っていった。

「あっ…じゃあ香恋ちゃん!これからよろしくねっ」

「あっうんっ!」

七音ちゃんも、パタパタと教室へ戻っていった。


…友達かぁ。


正直なところ、私には友達という友達はいないに等しかった。

学校では基本的に一人行動。だけど孤立しているわけではない。席が近い子とよく雑談をしたり、一緒に帰ったりもする。でも、ずっと一緒に行動するような固定の友達はいない。自分のペースでいるのが一番好きだからだ。

昼休みはひとりで過ごす。お昼は食堂へ行き、パーテーションでしっかり仕切られた一人席で持ってきた弁当を食べ、その後は図書室へ行って自習をするのがいつものルーティーン。教室で食べると、クラス学年問わず色んな男子に話しかけられてしまうこともあるため、できるだけ避けている。


まだ入学してから2ヶ月ほど。自分から色んな子と関わろうとすれば、一緒に過ごせる友達ができるかもしれない。でも焦らないと決めている。私は流れに任せて、誰かと自然と心が通じ合える時を待っていた。

これは恋愛においても同じかもしれない。


「友達になろう」なんて言われたのは、幼稚園ぶりくらいだ。七音ちゃんとどれくらいの仲になるのかはまだ分からないけど、なんだかわくわくしちゃってる。


キーンコーンカーンコーン…


1限目の終わりのチャイムが鳴った。数学の授業だったのだが、気持ちを切り替えて、なんとか集中できた。

この調子で行けばあとの授業も大丈夫だろう、とひと安心した。

「香恋ちゃーーーん!!!」 


何事かと思ったら、七音ちゃんがものすごい勢いで、私の席までやってきたのだ。もう、チャイムが鳴り終わるまでには私の元へとたどり着いていた。

「なっ…七音ちゃん?!どうしたの?」

「今日さー!一緒にお昼ごはん食べ

ない??香恋ちゃん友達とかいたらその子も呼んでさー!」


昼休みに一緒にご飯って…!


昼休みは普通、皆固定の友達と一緒に食事をする時間だ。昼休みを一緒に過ごせる人は、学校で一番仲が良い人のようなもの。まだ出会ったばかりだというのに、そんなことを言い出すなんて。七音ちゃんの積極性には感心する。


七音ちゃんってもしかしたら、伊東くんと一緒に食べてるとかあるのかな……。


無意識に、そんな期待のようなものが頭をよぎってしまった。


「えっと…いいの?私はご飯いつも1人で食べてるから全然!あっでも七音ちゃんは友達とか、大丈夫…?」

あいにく、私には友達らしい友達はいないのでなんと言えば良いのか迷ったけど、直感的に七音ちゃんなら大丈夫なんじゃないかと、言葉がすぐに出てきた。


「そっかぁ!私はいつもお姉ちゃんと食べてるから大丈夫!!よくお姉ちゃんの友達と一緒に食べたりするんだー!今日は友達と食べるって言っとく!」


えええーーーー!!

お姉ちゃんと食べてるんだ!姉妹でそんなに仲良しなの?!

しかも、お姉ちゃんの友達に混ざっていられるだなんて、消極的な私にとっては驚きのコミュニケーション力だ。

「そうなんだ…!」

感心していると、七音ちゃんはなにか良いことを思いついた顔をした。

「それか香恋ちゃん私のお姉ちゃんとも食べる…??」

「…!!」


それは私にとって、とてもハードルの高いことだった。お姉さんと、七音ちゃんとお昼ごはんだなんて、私には心の準備が必要だ。お姉さんとは、挨拶をした程度で、まともに話したことがない。


そしてもうひとつ問題点があった。


肝心なことを忘れていた。七音ちゃんのお姉ちゃん、つまり兄の彼女さんと一緒に食べるっていうことは…

「もしかして、私のお兄ちゃんもいるとかはないよね…?」


もし兄もその場にいたら、妹の私は気まずさの頂点に達してしまう。特にこの2人と一緒になれば、あの兄は何を仕出かすか分からないのだ。それだけは避けたい!


恐る恐る聞いてみたら、七音ちゃんはあははっと笑って言った。

「大丈夫だよ~!!センパイはいつも友達と屋上に食べに行ってる!センパイもいたらさすがに気まずそうだもんね~!笑」


助かった…。

七音ちゃんは私が知らない兄のことまで把握していた。そして、なんて物分りの良い子なの…!心が通じてる?!

兄がその場にいないことに安心したのもあって、いずれお姉さんとも話さなきゃだし、何より七音ちゃんもいるからきっと大丈夫だろうと、私はオーケーした。


兄の彼女と、そして気になっている人の幼馴染と、いつも一人のお昼休みを過ごす…!







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