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なめこ太郎/666文字奇譚  作者: 閉伊卓司
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金の玉

 埼玉県内で主婦をするHさんの話。

 ある日彼女が居間でアイロンがけをしていると、六歳になる娘が泣きながら駆け込んできた。

 子供部屋に落ちていた金色の玉をたわむれに口の中で転がしているうち、誤って飲み込んでしまったのだという。

 一体なにを飲んだのか見当もつかなかったが、とにかく病院へ連れていった。

 胃を洗浄し、X線や超音波まで使って調べたが、それらしいものは見つからない。

 娘いわく、玉はチョコレートの味がしたそうである。

 きっと銀紙にくるまれた丸いチョコレートだったのでしょう。

 医師にそう言われ、胃薬を処方されてその日は家に帰った。

 そして翌日から娘の様子が変わりはじめた。

 内気で部屋にこもりがちだった娘は、学校から帰るなりランドセルを放り出して遊びに行くようになった。

 毎日泥だらけで帰ってくるので不審に思い近所の公園をのぞいてみたら、なんと男子に交じってサッカーをしていた。

 ピアノの稽古へも行かなくなり、代わりに空手道場へ通いたいと言いだす始末。

 放っておいてもそのうち女らしくなるさ、とご主人は楽観的だったが、Hさんはだんだん心配になってきた。

 そうこうするうち、娘が学校でインフルエンザをうつされたらしく夜中に熱を出した。夕飯に食べたものをみな吐いてしまう。

 ふと見ると、その中にパチンコ玉のようなものがあった。

 ためしに洗ってみるときれいな金色で、チョコレートのようなにおいもする。

 これだなと思った。

 医者へ見せようか迷ったがご主人に捨ててしまえと言われ、けっきょく燃えないゴミの袋へ放り込んだ。

 翌日から、娘はもとの内気な女の子に戻ったそうである。



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