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なめこ太郎/666文字奇譚  作者: 閉伊卓司
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高野山

 高野山の高校に伝わる、ある噂話がある。

 学校の裏手にひろがる山林には妖怪が住みついており、その正体はかつて弘法大師の霊廟から不老長寿の秘薬を盗んだ高僧だというのだ。

 ある休日のこと。寮生数人が大阪へ遊びにゆき、すっかり帰りが遅くなってしまった。門限を破ると叱られるので寮への道を急いでいると、宝珠院の手前あたりで隧道の向こうにたたずむ黒い人影を見た。法体だったのですれ違いざま合掌して頭を下げたが、よく見るとそれはボロを身にまとった裸足の男だった。

 男は息を飲んでいる少年たちを見て、怪鳥のような叫び声をあげた。

「あかん、逃げよう」

 少年たちは一目散に寮まで逃げ帰った。玄関で騒いでいる彼らに、寮長が怖い顔で尋ねてきた。

「どないした」

「今そこでボロを着た変な男に会いました」

「なんや、おまえらアレ見たんか」

「一体なんなんです?」

「騒ぐことあらへん、あれは大昔からこの御山におるんや」

 寮長は全員を談話室へ集めると、こんな話をした。

「かつて西行法師がこの地で修行してはったとき、急に人恋しくなり野山から拾いあつめた人骨を人間に変えようと試みはったんや。反魂の術ちうやつやな。ところが出来あがったもんは人の姿はすれど心のあらへん失敗作ばかり。結局アホらしうなって造ったもんみんな山奥へ放かしてもうたいう話や」

「ほんなら、あの男は鎌倉時代から……」

「そうやな。まあ襲うてくるわけやなし、次に会うたら騒がんと蘇悉地経でも唱えてあげるよし。それから御本山にも色々事情があるさけ、このこと絶対ひとに言うたらあかんよ」

 そう念を押して寮長は部屋を出ていった。


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