表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なめこ太郎/666文字奇譚  作者: 閉伊卓司
93/100

意識高い系

 おれのかつての上司は有名私大出の才媛で、自ら意識高い系を標榜するバリバリのキャリ女だった。

 当時まだ三十にも満たない若さで営業部のリーダーとなり、ときには自分の父親ほど年の離れた部下を叱りつけたりもした。

 スタイルが良くておしゃれで、しかもかなりの美人だ。となるとふつうは独身の男性社員どもが放っておかないはずだが、どういうわけか誰も食指を動かさない。

 なんだか怖いのだ。

 目が異常にキラキラして、不自然なほど希望と自信に満ちあふれている。

 社内情報に詳しい総務課のK美が教えてくれた。

「彼女ねえ、あやしげな自己啓発セミナーにハマってるらしいのよ。スピリチュアルっていうか、カルトなやつ。ああいうのって、お金だまし取るために暗示かけたりするのでしょう?」

 目が輝いているのは、肥大した自我によってすでに人格崩壊を起こしているからだという。

 その話を、幼なじみで実家が臨済宗のお寺であるA氏にすると、一度その上司を寺へ連れてこいと言われた。

 なんでも彼女が今置かれている状況は、仏教でいうところの魔境とおなじなのだそうだ。

 魔境とは、禅を習うものが中途半端に開悟した状態で、そのままにしておくと大変危険らしい。

 おれは座禅の体験セミナーがあると嘘をついて、上司を寺へ連れ出した。そこで彼女は住職であるA氏の父親からこんこんと説教を受け、翌朝には憑き物が落ちたように可憐な女性へと生まれ変わっていた。

 その後彼女がどうなったか。

 もうお分かりであろう、現在はおれの妻である。

 誰もがうらやむ美人のアネさん女房だが、意識高い系はそのままで口うるさいことこの上ない。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ