表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なめこ太郎/666文字奇譚  作者: 閉伊卓司
78/100

美童丸

 見目は果報のもとい。

 てなことを申しますが、美しく生まれたばかりに不幸な人生を歩まれたかたもいるそうです。

 平安のころ、旅の雲水が伊吹山中にて可愛らしい赤子を拾いまして。これを美童丸と名づけて、裕福そうな家の戸口へ立たせては物乞いをさせていたそうです。やがて絶世の美少年へと育った彼を、今度は知り合いの寺へ売り払ったというから、ひどい坊主もあったもんですな。

 寺では、お稚児さんとして重宝がられたようですが、美しいご婦人ならまだしも、抹香くさい坊さんの夜伽じゃ嫌んなります。ついに我慢しきれず、寺へ火を放って逃げたそうで。

 浪々の身となり、やがてたどり着いたのが延暦寺。言わずと知れた天台宗の本山であります。ここで僧として修行をはじめますが、美少年は頭を丸めてもやっぱり美少年、里の女どもが放っちゃおかない。

「やだもう可愛いっ」

 なあんて言われ、あるときついに一人の後家さんと通じてしまいました。このことが女嫌いで有名な伝教大師の耳に入りまして「お前は破門だっ」てんで、とうとう比叡山を追われてしまいます。

 生みの親に捨てられ、育ての僧にも捨てられ、最後には大師様にまで捨てられて、

「あな口惜しやな、われ三たび捨てられしぞ、このうえは鬼となりて、世を呪いたてまつらん、なうまくさまんだ、そわたやうんたらた……」

 美童丸、ついには鬼へと変じてしまいました。

 これがご存知、酒呑童子でありまして、一説には「捨て童子」がその語源なんだとか。

 とまあ、美貌が仇になったという話でしたが、見たところ読者の皆さまは、そのような心配はご無用でございますかな。ハハ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ