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なめこ太郎/666文字奇譚  作者: 閉伊卓司
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魔のカーブ


 天険トンネルを抜けた先につづら折りのカーブがあるだろう。あそこ、地元のもんは魔のカーブなんて呼んでるんだぜ。

 夜中に、暗闇からひとが飛び出してくるんで、事故が絶えないんだ。いや、あのへんにゃ民家なんてないよ。釣り人も滅多に来ない。なにせ片ほうは切り立った崖だし、反対側は深い木立だ。地元のやつも、みな旧道のほうを歩いてる。

 なら、ひとが飛び出すのはおかしいだろうって?

 むかし、あのあたりは親知らず子知らずの難所なんて言われてな、やれ子どもが波にさらわれたの、旅人が崖から落ちたのって、そんな話が絶えなかったんだ。国道を通すときも、そりゃあ難工事で、出稼ぎ労働者が何人も亡くなってるらしい。

 そういう場所だから、なんていうか、海で命を落としたひとたちの霊が、こう、成仏できずにさまよってるんじゃないかって……。

 カーブの手前に観光ホテルがあるだろう。建物のわきに木で造られた細長い階段があるの知ってるか? そう、浜のほうへずっと下りてゆくやつだ。あれ、じつは霊の通り道なんじゃないかって、もっぱらの噂だ。

 水死者の霊が陸にあがりたくても、あのへん断崖ばかりだろう、けっきょく水から出られず、悔しまぎれに生きてる人間を海へ引き込もうとするって、年寄りどもがよく話してた。だからそうならないよう、霊の通り道を造ったんじゃないかって。

 きっとカーブを横切るのは、そんな霊たちのすがたなんだろうよ。

 うん? おまえ、夜になるのを待って、あの階段おりてみようとか考えてるだろう。よせよせ。今の話はぜんぶ冗談だから。日が暮れてからあそこへ行くのだけは、ヤメテオケ。




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