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なめこ太郎/666文字奇譚  作者: 閉伊卓司
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吉祥寺の占い師


 吉祥寺駅前のハーモニカ横丁にすごい占い師がいるというので、冷やかし半分で行ってみた。どうせ「くもり時々晴れ、所により一時雨が降るでしょう」的な玉虫色の言動を繰り返すインチキ占い師に違いないと思った。

 入り組んだ細い路地を探してまわるうち、のれん小路の片隅にぽつんと「八卦見」の屋台を見つけた。すでに十人近い客が列をなしており、私が来てしばらくすると、さらに十人ほどが後ろにならんだ。すごい人気である。

 占い師はいかにも易者ふうの中年女性で、私を見るなり開口一番こんなことを言った。

「あら、おめでとう。あなた来年ご結婚なさるのね」

 驚いた。なぜそんなことが分かるのだ。

「でも気をつけてね、あなたのお姉さんがそのことを大変妬んでいます」

 今度はハズレ。私に姉はいない。

「いえすでに亡くなっていますが、たしかにあなたには三つ違いのお姉さんがいるのですよ」

 私は両親が結婚した翌年に生まれている。ゆえに姉などいるはずがない。「いる」「いない」で口論となり、ついに彼女は「信じていただけないなら、お代は結構です」とそっぽを向いてしまった。どうやらプライドを傷つけてしまったようだ。

 ところが帰ってこの話をすると、母の顔が見る見る青ざめていった。機嫌良くビールを飲んでいた父もテレビを消して書斎へ引っ込んでしまった。なんなのだ、この反応は……。

 言いしぶる父を問いつめると、なるほど母には結婚する前に死産した子どもが一人いた。女の子で、実家に位牌もあるという。

 これはお詫びをしなければと思い、後日占い師のもとを訪ねてみたが、すでに屋台は引き払われた後だった。




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