ゾンビちゃん
焼けこげた大地のまん中で女の子ゾンビが一人、ぽけらんと空を見上げていました。
風がそよぐだび、栗色のショートヘアーがはらはらと抜け落ちます。
空なんか見上げて一体何を考えているのでしょう?
彼女の脳はもうすっかり腐って、ひからびて、虫食いの穴まであいているというのに……。
まうー
遠くのほうでママの呼ぶ声がしました。
どうやらお昼のようです。
あうー
元気良く返事をして、ずりりりり、ゾンビちゃんはねじ曲がった足を引きずり歩きはじめます。
お家へ帰るとパパもいて、テーブルにはご馳走が並んでいました。
人間の生肉です。
まだ、ほかほか湯気が立っています。
パパは毎日、防衛省のシェルターまで出掛けていっては中に立てこもる人間を引きずり出し、こうして持ち帰ってくるのです。
がうー
いただきますを言って、三人仲良くご馳走にかぶりつきます。
あまりの美味しさに胃の中のウジ虫もびっくりしているようです。
――と、そのとき何処からか、ひーんと空気を切り裂く音がして、ゾンビちゃんは食事の手を止め、ガラスのないひしゃげた窓から空を見上げました。
あ。
青い空、白いうろこ雲の合間から、黒い点が一つ、ぐんぐん近づいてきます。
うぎぎぎ
……やっと来たわ。
ゾンビちゃんは立ち上がって小躍りしました。
それは彼女がずっと待ちこがれていた空からのお迎えだったのです。
見る見るうちに迫りくるその黒い物体は、やがて大地に突き刺さり、ぴかっと眩い閃光を放ってもの凄い爆風で何もかもを吹き飛ばしてしまいました。
ゾンビちゃんのお家も木っ端みじんです。
あはは――。
彼女は、笑いながら土へと還りました。