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なめこ太郎/666文字奇譚  作者: 閉伊卓司
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大泥棒の首


 江戸のむかし麹町は平川天神そばに、山田浅右衛門というお侍がおりまして。このかた、お試し御用と申しまして、罪人で試し斬りをするのが家業だったんですナ。伝馬町牢屋敷の片すみに死罪場がありまして、そこで獄門首をスパーッと一刀両断。それは見事な腕前だったと言われております。

 さて、あるとき平十郎という大泥棒が捕まりまして、こいつがとんでもねェ悪党で、商家へ忍び込んじゃ盗んだ金で賭場へと通いつめる。ところがあんまり派手に遊ぶもんで役人に目ェつけられ、あえなくお縄になったというわけで。

 さっそく刑場へ据えられたんですが、この男まるで猪みたいに首が太い。浅右衛門のほうは、赤字企業の人事課長と同じで首を切るのが仕事ですから、万が一にも斬り損じがあってはならぬ。「すわっ」てんで普段より力を込めて切ったところ、勢い余って首はポーン、見ている検視役人の鼻にガブリッ。

 もう大騒ぎになりましてナ。あわてて引き離そうとするんですが、よほど捕まったのが悔しかったとみえ、テコでも離れない。

 どうにも困っているところへ、斬首の順番を待っておりました、ある博徒の親分が、

「どうかここは、あっしに任せてください。ついては首尾よくゆきましたならば、なにとぞ罪一等を減じ遠島ということに」

 役人もほとほと困り果てていたので、

「では、やってみよ」

 ということに相なりました。

 さて親分なにをするのかと思えば、用意させた壷にサイを投じまして、ダンッ! 蓙のうえに叩きつけますってェと、ひと声。

「ちょう」

 すると平十郎ニヤリと笑って。

「はん」

 そのとたん、首はごろりと地に落ちたそうで。




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