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なめこ太郎/666文字奇譚  作者: 閉伊卓司
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訃報


 夜やり残した仕事を片づけるため一人オフィスで残業していると、突然「訃報」と書かれたファックスが流れてきた。見てみると亡くなったのは自分が担当する取引先の部長だった。まだ若いのにと首をひねりながら、そういえば礼服をクリーニングへ出したままだったと舌打ちしているところへ、しばらくしてまた別の訃報が届いた。いっぺんに二度も訃報がくるなんて珍しい。葬式の掛け持ちはつらいので片ほう上司に押しつけようなどと考えていると、ややあってまた新たな訃報が送られてきた。どういうことだろう。ファックスがくるということは先方の事務所にも誰かいるということなので思いきって電話でたずねてみようか、などと思案しているところへ、ファックスがさらに四枚目の訃報を吐き出した。

 頭が混乱して仕事をする気も失せたので少し休憩することにした。コーヒーを入れ、応接室のソファーでテレビをつける。ちょうどローカルニュースが始まるところだった。

「まずはじめに事故のニュースからです。今日の昼過ぎゴルフ場へ向かう途中の貸し切りバスが崖から転落して……」

 これだ、と思った。今日は業界団体の親睦ゴルフコンペがあったのだ。案の定、アナウンサーの読み上げる死亡者の名前が、さっき送られてきた訃報の数々とぴたり一致した。

「そういうことか」

 こりゃ明日は忙しくなるぞ、などと思いながらコーヒーを口へと運びかけ、すぐにその手が止まった。

「だがまてよ、そのコンペにはたしか俺も参加するはずだったんじゃ」

 妙な不安にさいなまれ思わず凝視したテレビ画面で、アナウンサーが最後の死亡者の名を告げた……。




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