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なめこ太郎/666文字奇譚  作者: 閉伊卓司
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タラバガニ


 毎朝電車で一時間半もかけて通学するのがしんどくなり大学の近くにボロアパートを借りたのだが、引っ越して二ヶ月ほどしてから自分がひどく痩せていることに気づいた。頬がげっそりとこけ、目の下には不吉な感じのくまも出来ている。そういえば近ごろ頻繁に立ち眩みがするようになった。

 病気かなと思い医者に診てもらったが、単なる栄養失調だと言われた。きちんと自炊してそれなりの食事を摂っているのに妙な話である。いよいよ体が辛くなり同じゼミの先輩に相談したところ、それは霊障に違いないと言われた。すぐに知人の霊能者が紹介され、辻占みたいな格好の老婆がやって来て、加持祈祷、読経呪誦、そこらじゅうの壁にお札をべたべた貼ったあげく高額な請求書を置いて帰っていったが、体の調子はいっこうに良くならない。ついに万策尽きて、田舎の婆ちゃんに泣きついた。

 新幹線で飛んできた婆ちゃんは、部屋のなかを見回すなり「こんなもん役に立つか」と言ってお札をすべて剥がし、薬局で燻煙式の殺虫剤を大量に買い込んできた。

「ちょっと表へ出ておれ」

 言われたとおり部屋の外で待っていると、しばらくして「ぐえええっ」という喚き声がして、見てみると四畳半の中央に馬鹿でかいアシダカグモがひっくり返っている。

「こいつは育ちすぎると魔性をおびて人間の精気を吸い取るようになる」

 さすが年寄りは物知りである。

 死骸を知り合いの寺へ送るというので発泡スチロールの箱に詰めて宅配便の事務所へ持ち込んだところ、送り状の品名欄に祖母がこう書き込むのを見てギョッとした。

 タラバガニ

 まあ、大きさはそんなものだが……。




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