表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なめこ太郎/666文字奇譚  作者: 閉伊卓司
3/100

なめこ太郎


 信州は伊那の蛇峠山に百太夫を祀った社あり。いつの頃よりかそこのご神木の根元に一本のナメタケ生えたり。陰茎のごとくに隆々とした姿なり。麓の村の者これを見てきっと神霊宿りたる尊き物に違いなしと結界はりめぐらし、夫婦和合、子孫繁栄の神として慎重に祀りたれば、これをナメコ様という。あるとき在所の土豪の跡取り息子に嫁来たり。美しく気立てよき娘なりしが夫衆道に熱上げたるなればいっかな肌合わそうとはせず、家の者これをたいそう憂えたり。子宝かなわざれば里へ返すべしと言いしところ娘たいそう悩みて、夜な夜なナメコ様に願掛けたり。満願叶ってようよう娘孕みたるに夫これを訝しんで責めたり。事の次第知りて、其は我の子にあらずと夫たいそう怒りついに娘を山へ逐いたり。村の者これを憐れみ山中の醜屋にて破れ菰かけ匿いしところ、いよいよ産み月となりて娘気狂いになれり。そのまま山中へと隠れたるに山犬にでも喰われたるべしと諦めしところ、ある夜山の頂より元気なる産声山々に谺せり。さては魔性の子産みしかと夜明けてより村の者打ち揃いて山中深く入りたれば、娘一人大岩の上にて倒れ臥しおり、見ればすでに血荒れにて事切れてありたり。かたわらに醜き嬰児の亡骸あり。ぜひなしとてそこに打ち捨てたるに、夜な夜な赤子の声にて泣きたれば淋しきこと甚だしかるなり。村の者たいそう恐れてこれを持ち帰り、尹良大神の首塚のそばに埋めて丁重に祀りたり。やがてその傍らにありたる古木より見事なナメタケ生じ出でたり。人々これをナメコ太郎と呼びて、猿田彦神の眷属なるべしとて後々まで信仰せりという。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ