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なめこ太郎/666文字奇譚  作者: 閉伊卓司
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道通さま


 医者坊主なんてえのは、多少とんちが働かないと出来ない稼業でして。


 そう、あれは大火事のあった翌年のこと。

 行人坂の大黒さまから出た火が、お東さんの御堂にまで燃え広がったひどい火事で、日本橋あたりの大店もほとんどが焼けちまいました。その修繕に、ご府内はもちろん近在からも職人が出て朝からとんかんやってましたっけ。

 そんなとき、政八って大工があたしんとこへ訪ねてきて、うちの娘を診てくれないかって言うんです。

 年の頃なら十七か八の、面立ちの可愛らしい娘さんでした。

「どうしたね?」

 訊ねてみたんですが、もじもじするばかりで何も語ろうとはしない。しまいにあこっちも辛抱が切れて、

「こちとら法印の弟子から学んだ歴とした薬師だぜ」

 って大見得切ると、観念したのか頬を赤くしておずおずと話し始めました。

 なんでも夜寝ているすきに陰門から蛇が入り込んで、そのまま居座ってるって言うんです。驚きましたね。そんな話は聞いたことがない。どうしようかと悩んだあげく、ある苦肉の策を思いつきました。

 三宝に鶉の卵を乗せ、ゆもじを付けずにその上をまたがせるというものです。やってみると案の定、蛇のやつは匂いにつられて顔を覗かせました。そこを待ち構えていて、首根っこ掴んで一気に引きずり出したんです。

 五寸くらいの黒蛇でした。首んとこに金色の輪があって。

「娘の股ぐらに潜り込むたあ、太てえ野郎だ」

 庭で打ち殺そうとしたんですが、立ち会っていた取上げ婆が、

「そりゃ道通さまちゅうて玉菊大明神の眷属だで、殺生すっと祟りがあっど」

 なんて脅すもんでね。仕方なくそのまま放してやりましたよ。




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