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なめこ太郎/666文字奇譚  作者: 閉伊卓司
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雨のなかのチロ


公園へむかう坂のとちゅうに、その家はありました。

白いかべと、赤いやね。

きょ年までわたしたち家族が暮らしていた家です。

そこには大きな庭があって、花だんのわきに手作りのお墓が立っています。

わたしが飼っていたスピッツのお墓です。

名前はチロといって、まっ白い毛なみがふわふわの小さくてかわいい犬でした。

わたしは今日もこっそり、そのお墓のようすを見にきたのです。

庭では知らない男の子が遊んでいて、植え込みのかげからのぞくわたしに気づくと大声でさけびました。

ママ、へんな子がいるよ!

わたしは、あわてて逃げました。

どれだけ走ったでしょう、いつのまにか降りだした雨に気づいて立ち止まると、後ろから犬のなき声がしました。

わん、わんっ

ふりかえると、なにか黒いものがこっちへむかって駆けてきます。

どう見てもドロのかたまりでした。

でも、わたしには分かります。

それはチロのかたちをしていたのです。

チロ!

わたしは、うれしくて泣きそうになりました。

だってチロが生き返ったんですもの。

チロ、チロ、わたしに会いにきてくれたのね!

わん、わんっ

でもなんだか動きがへんでした。

チロはよろよろとよろけて、いまにも倒れそうなのです。

そうです、降りしきる雨にドロでできたからだが溶けはじめているのです。

たいへんだあ!

わたしはあわててチロのもとへ駆けよると、服がよごれるのもかまわず抱きしめました。

チロッ、チロッ!

でも雨にうたれたチロのからだは、わたしの腕のなかでぼろぼろとくずれ、あとには小さな骨がいくつも、いくつも、まるで花火のもえかすみたいに散らばっているばかりでした……。




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