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なめこ太郎/666文字奇譚  作者: 閉伊卓司
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 食欲の秋だというのに、連日の残暑にくわえて仕事によるストレスがたたり、すっかり食が細ってしまった。これから年末にかけ繁忙期になるというのに、まったく体に力がわいてこない。このままではいけないと思い、料理本などを読んで色々と献立を工夫してみるのだが上手くいかず、食は細るばかりだった。

 そんな折り、なにげなく通販サイトを眺めていて見つけたのが、これ――。


 食欲がわく魔法のくすり


 思わず飲みかけの紅茶を吹き出してしまった。なんて安直な商品名だ。でも百グラムたったの三百六十円だし、まあ笑い話の種にでもなればと思い注文してみた。届いたのは袋詰めの白い粉。それはなんの変哲もないグルタミン酸の化学調味料に見えた。やはりダマされたのか。ほんのわずかでも期待していただけに少しがっかりした。それでも捨てるのは勿体ないと思いビンに移し替えようとしたところ、あやまって左手の人差し指にかけてしまった。

 その瞬間ぞくっと鳥肌が立った。なぜだか自分の指がたまらなく美味しそうに見えるのだ。みるみる口中に唾がわき、胃が久かたぶりで元気に活動し始めるのが分かった。

 ばかな、自分の指だぞ。

 でも食べたい。

 理性では、もう抑えきれないほどに食欲がわいていた。

 この指が食べたい。

 口の端からつうっとよだれが糸を引き、気がつくと自分の指をまな板の上に乗せていた……。


 それから半月がすぎた。

 今では左手に指は一本も残っていない。両足の指もすでに十本とも食べ尽くし、残るは右手の指だけとなっていた。

 ここで、ふと悩む。

 さてこの状態で、右手の指をどうやって切り落とせばよいものか……と。




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