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なめこ太郎/666文字奇譚  作者: 閉伊卓司
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オシラサマ


 東北地方を旅したときの話。

 いきがって行く先も決めずに一人旅としゃれ込んだあげくバスに乗りそこね、宿にもあぶれてしまった。宮城県北部にある山あいの町だ。さびれた目抜き通りを徘徊すること一時間、ようやく民宿とおぼしき平屋建てを見つけた。土台が腐っているらしく家は少し右にかしいでいた。そのせいか私が玄関に身を入れるなり、がらがらと引き戸が勝手に閉じた。

「……あの、一晩泊まりたいんですが」

 薄暗い廊下へむかって声をかけると、しばらくしてひどく腰の曲がった老婆が現れた。

「もう宿はやってねえでがんす」

 どうやらすでに廃業しているらしい。

「いや、そこをなんとか。寝るところを貸していただくだけで結構ですから」

 ここで断られては大変なので何度も頭を下げると、さすがに気の毒に思ったのか老婆は、使われなくなった離れの座敷へと案内してくれた。そこは家具もない八畳間の和室だった。

「宿でねえがら、飯も風呂も用意でぎねけんども……」

「いえ、夜露をしのげるだけでありがたいです」

「それがらその奥の部屋ね、オシラサマの間だで、戸ひらいだらいけんよ」

 その部屋には、さらにつづきの間があったのだ。


 ――深夜。

 その奥の間から、にちゃりと妙な音がした。ところてんを握りつぶすような音だ。気味悪かったが好奇心も手伝い、私は部屋の明かりをつけ奥の間の戸をそっと開いた。

 天井から、馬の生首がぶら下がっていた。その切断部から凝固しかかった血が床へ垂れる音が聞えていたのだ。

 にちゃり

 私は、そのまま気を失った。


 翌朝、ゆうべの出来ごとを話そうと老婆を探したが、その家は無人だった……。




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