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なめこ太郎/666文字奇譚  作者: 閉伊卓司
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ラーメン屋

 近所に新しくできたラーメン屋が美味しいと評判になった。そんなに美味しいのなら一度食べてみたいと思ったが、いつ行っても長蛇の列ができている。さすがに並んでまで食べる気にもなれず、また次の機会にでもと引き返すうち、いつしかそのラーメン屋のことは忘れてしまった。

 ある日のこと、寝る前にビールを飲みすぎたせいで夜中に尿意をもよおし、便所へ行ったきり眠れなくなった。時刻は午前二時を少し回ったところ。どうにかしてもう一度眠ろうとするが、ますます目が冴えてしまいおまけに腹まで減ってきた。冷蔵庫を開けてみると、案の定なにもない。仕方がないのでジャンパーをはおり、散歩がてらぶらりと夜食を買いに出かけた。

 途中、例のラーメン屋の前を通りかかると深夜にもかかわらず営業していた。ちょうど良いと思って暖簾をくぐると、客はだれもおらず店内はがらんとしている。厨房には無愛想な爺さんがひとり。「いらっしゃい」もなければ、注文しても返事もよこさない。けっきょくラーメンを食べ終えて店を出るまで、その爺さんとは一言も口をきかなかった。ただ愛想は悪いが味はそこそこで、満腹したためか部屋へ戻るなり急に眠気が襲ってきた。

 ところが翌朝になって、ひどい腹痛に見舞われた。下痢と吐き気がつづき、とうとう我慢しきれずに病院へ駆け込んだところ、便から大量のムスカリンが検出された。毒キノコなどに含まれるアルカロイドの一種だ。けっきょく私は、そのまま一週間も入院するはめになった。

 頭にきて、例のラーメン屋へ苦情を入れたところ、

「えっ、うちは夜の十時で閉店ですけど」

 と驚かれた。


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