平凡な日常の終わり
皆さんこんにちは、K.ataです。
この小説は以前執筆していた物のリメイク版になります。
リメイク前と色々内容を変えていく予定ですので、どうぞお楽しみに。
――突然だけど、みんなは『異世界』って知ってるかい?
俺たちの住んでる所とは全く異なる世界、それが異世界さ。
異世界というのが具体的にどんな所なのかはまちまちだけど、一般的には中世ヨーロッパ風のファンタジー系が有名かな。
俺は昔からそういう世界に憧れていた。色んな地方を冒険したり、強いモンスターと戦ったり、可愛い女の子に囲まれたり――とか。
だけどそういうのはあくまでもフィクション、現実にそんなものはない。それは中学生である俺でも十分知っている事だ。
俺はそんな事を思いながら学校生活を送っていた。
――そう、あの日が来るまでは…。
「う、ううん…」
俺は目を覚ますと、知らない空間の中にいた。
全体が真っ白で、地面や天井がタイル張りのような物で出来た謎の場所。
ここは一体どこなんだ?
俺はあまりにも非現実な光景にパニックになりそうだったが、何とか気持ちを落ち着かせる。そして俺はさっきまでの出来事を思い出していた。
…確か、俺は学校から家に帰る途中、横断歩道を渡っていたら横からトラックがやってきて…。
その後の出来事は全く覚えていない。だがトラックに轢かれたら普通は病院行き。しかし、ここは明らかに病院の中じゃない。
――そっか、俺は夢を見ているんだな。
そう思い込みながら俺はゆっくりと立ち上がり、この真っ白な空間の中を歩き始めた。
「おーい、誰かいないのかー?」
俺は大きな声を上げながら空間の中を歩き続ける。もしこれが夢の中なら意味はないと思うが、それでも誰かはいて欲しい。
…それにしてもこの空間、どれだけ歩いても同じ光景しか見えないぞ。何なんだここは?出口ぐらいあってもおかしくはないのに、それがないというのは夢とはいえあまりにも妙だ。
"――やあ。僕を呼んだのは君かい?"
突然、後ろから誰かの声がした。声変わりの少年のような声だ。俺は急いで振り返ると、そこには白い服を着た銀髪の少年がいた。
銀髪の少年はまるで漫画から出てきたような風貌をしている。見た目は子供なのに、どこか落ち着いた雰囲気が出ていた。まるで100年以上も生きているかのような――。
「あ、ああ…」
「そうか。ふむふむ…その様子から察するに、君はここがどこなのか知りたいようだね」
「そ、そうだけど」
「そして同時に君はこう思っている。今見ているのは全部夢だと」
「なっ…!?」
この少年、俺が考えている事は全部お見通しだってのか!?
「あんた、一体何者なんだ?どうして俺の考えている事が分かるんだ?」
「おっと、自己紹介しないとね。――僕の名前はロゴス。この世界を生み出した創造神さ」
「そ、創造神!?」
「そうだよ。…あ、だからと言って無理に敬語は使わなくても大丈夫。普段の喋り方でいいよ」
信じられない。僕の目の前にいる少年が創造神――つまり、神様だと言うのだ。いくら夢の中とはいえ明らかにおかしすぎる。
くそ、夢ならとっとと覚めてくれっ!僕は急いで自分の頭を両手で叩く。
「…何をやっているんだい?」
「今見ているのが俺の夢なら、頭を叩いても痛くないって事だよ!くっ、覚めろ!早く覚めやがれっ!」
俺は何度も頭を叩く。しかし夢から覚める気配はなく、ただ痛いだけだった。…まさか、これは現実だと言うのか?
「ははは、人間の考える事は相変わらず面白いね。言っておくけどこれは夢なんかじゃないよ。紛れもない現実さ」
「現実?」
「そう、現実だ。君が死んでこの空間にいるのも、全て現実なんだよ。それは受け入れてくれるかい?」
は?俺が死んだって…?ますます信じられない。
「な、なあ…。俺は本当に死んだのか?」
「ああ、死んだ。君はトラックと呼ばれる乗り物に轢かれて、そのまま死んだんだよ」
「なんでそんな事を…」
「君の情報は既に記録してあるからね。――藤崎直人、14歳。日本の東京という場所で生まれ育ったごく普通の中学生。身長は163.7cm、体重は53.7kg。血液型はO型。好きな食べ物はから揚げで、趣味はゲームをやる事と漫画、小説を読む事。家族との関係も良好で、友達もたくさんいる。幼少期の頃に大型犬に襲われそうになった事がトラウマになり、犬全般を苦手としていて…」
「わ、分かったよ!もう俺の情報は言わなくていいからっ!」
まさか俺の事をここまで知っているなんて…。本当に神様なんだな、この人。
って、関心している場合じゃない!俺が死んだなんて絶対に認めたくないぞ。まだ俺にはやるべき事がたくさん残っているのに…!
「なあ、あんたは神様なんだろ!?だったら俺を生き返らせる事は出来ないのか?」
「…残念ながら、それは出来ないよ。人間に限らず一度死んだ生物を蘇らせる事は世界への冒涜だからね。死んだ者は全員あの世に送られる。それがこの世界のルールさ」
「この世界のルール…」
「そうだ。それだけは受け入れてくれ」
そんな、ことって。俺は事実を受け入れる事が出来ず、思わずその場にへたり込んでしまう。
本当に俺は死んだのか。まだまだ俺にはやりたい事がたくさんあるのに。まだクリアしていないゲームがあるし、友達から借りてた本を返す約束もしていたし、それに来週は前から楽しみにしていた修学旅行があるというのに…。
こんな所で俺の人生が終わってしまうなんて、認めたくないよ…。
「ところで、この空間の事についてまだ話していなかったね。ここはあの世とこの世を繋いでいる狭間さ。死んだ者は一度ここに送られ、この僕の手によってあの世へ送られるんだよ。どこへ送られるのかは生前の行いによって変わるんだ」
「…つまり、天国か地獄のどっちかに送られるって事か?」
「そうだね。君は生前、悪い行いはしていなかった。だから天国行きだよ」
そっか。それならよかった――で、俺が納得出来る訳がない。俺が望んでいるのは、またあの頃の生活を送りたい事。ただそれだけだ。
「…なあ、ロゴス。本当に俺を蘇らせる事は出来ないのか?もし蘇る事が出来るなら俺は何だってするよ。だから――」
「先ほども言ったけど、それは出来ないよ。諦めてくれるかい?」
「諦めるなんて、出来る訳がないだろ…!俺にはまだやりたい事があったのに…!」
俺は悔しさで両手を床に叩きつける。一度死んだ人間は蘇れない、その事実が何よりも悔しかった。
「…ふむ。その様子だと君はどうしても元の場所に戻りたいようだね」
「当たり前だろ!死んで納得する人間なんている訳がない!もし蘇らせる事が出来るなら、全員がそうしただろうさ!」
「やはりそうなるか…。だったら、君にはもう一つの道を選ばせよう」
「もう一つの道?」
一体それは何なんだ…?俺は黙ってロゴスの話を聞く。
「ああ。――君のもう一つの道。それは、こことは異なる別の世界に君を転生させる事だ」