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農業エルフとガチャ髑髏

前回までのあらすじ♪

 私『タマモ ポテテ』こと『玉藻井たまもい もえ』は真面目にブラック企業で働くアラサーでしたが突如、会社が倒産♪ある程度蓄えもありましたし、若干の罪悪感は抱えながらも、晴れて無職となった私は今流行りの『フロンティア・アイズ・マナ』略してFEyMファイムを始めるのでした。ネトゲニートと化したタマモはキャラエディットを始めます。幼少からの相棒である、未来の世界からきた訳ではないむしろ時代遅れの旧世代猫型ロボットからアップデートを繰り返してきたイパミニちゃんと共に。キャラデザは超絶美少女の狐獣人。ステータスはバグを疑うレベルの愛情値44という超低確率の理論値最高となるが、攻撃手段がない為にチュートリアルで詰んでしまうのであった。そして、美しい景色のチュートリアルフィールドを眺めて私、タマモは呟くのでした。「のどかだなぁ〜・・・」


***


「はっ!?何やら呼ばれた気がしますよぉ!!」


 彼女の名前は『土井中どいなか 和佳のどか』。

 この世界では『ノドカ ルーラル』と名乗っています。


「気のせいだろ。何も聞こえてないぞ?」


 彼は『只野ただの 信仁のぶひと

 この世界では『モーブ ウィーク』。


「相変わらずの薄い普通のモブ発言ですよぉ。モーブは」


 ノドカがモーブを挑発する。


「ファイムでは珍しい農家なんて地味なジョブをやってるお前にだけは言われたくないけどな。まぁ、俺のコレはそういうロールプレイだし!陰で暗躍するモブ・・・。カッコウィ〜♪」


 どちらも癖の強い面々である。彼らはファイムでの古参プレイヤーであり、この世界オープン当時からログインしているプレイヤーです。そしてノドカは何を隠そう、タマモにファイムの知識を伝授した玉藻井の元同僚であり、玉藻井をこの世界に誘った張本人だったりします。


 モーブはこの世界の情報屋の様な事をコッソリとやっている。ギリギリ、システムのブロックに引っかからない際どい情報なんかを裏で売買していたりする。アライメントは辛うじてプラスなので制限は受けていないがギリギリである。古参プレイヤーで有名なプレイヤーは皆、アライメントがとても高い。悪事を働く人は基本的には好かれませんから。そんな中でモーブは地味に人気だったりします。


 ノドカは言うまでもなく人気者だ。スローライフに憧れるアラサー、アラフォーのナイスミドル達から大人気のファバターなのです。ちなみに種族は女エルフ。モーブは魔族で常に黒いローブを纏っています。その外見はアンデットスケルトンと言う超特殊な姿だったりします。


 ファイムの世界の情報を発信する唯一といってもいい方法があります。

 それが実況配信なのです。アフレコ《アフターレコーディング》はダメですがリアルタイムで実況した動画はアーカイブに残り情報として残ります。

 情報が限られるファイムの世界。有益な実況プレイ動画は億単位の再生数を稼いだりします。そして、その動画は莫大な広告収入を生み出すのです。


「ところでこの間、話したリアルの友達がログインする件なんですよぉ」

「あぁ、今時珍しい成人で機械音痴の新人ルーキーだったか?」


『アイズ・デバイス』は今や子供でもつけています。そんな子供がファイムに新人として訪れる事は割とありますが、大人の新人は最近では珍しくなっていました。それ程に普及率が高いのです。ごく稀な根拠のない『アイズ』を危険視する少数組織に所属する人なんかが普及率を下げているだけで、基本的にはみんな持ってます。そして持っていればファイムにログインします。シンプルに時間が倍、使えるのです。体に害もありません。

 やらない方が損です。なぜかタマモは、それでもやっていなかったのですが・・・。

 それは、まるで誰かが意図して遠ざけていたかの様に・・・。


「昨日、ログインしてたみたいなんですよぉ。しかも・・・初日からガッツリ配信もやっていて、ちょっと話題になっているのですよぉ!」


 勿論、配信をしていたなんて事はタマモは知らない。

 となれば犯人は一人しかいません・・・。そう、イパミニちゃんです。


「確かに初心者配信者はほぼいなくなって真新しくはあるが、それだけで話題にはならんだろ?」


 未成年の子供は配信規制がかかる事もあるため制限がかかる。バズる事はない。

 成人の新人プレイ動画は魅力ですがそれだけで昨日の今日で話題になったりはしません。

 原因はその内容であるのです。


「それが、超極振りプレイングスタイルでしてぇ・・・。私の説明も悪かったのかも・・・。あの子、途中からモフモフ、モフモフとうわ言を呟いていてちゃんと聞いているか怪しかったですしぃ・・・」


 ノドカは少し申し訳なさそうに話す。どう考えてもタマモの自業自得なのですが。


「初心者には厳しいだろうけど面白そうではあるなぁ。で、なんの極振りなんだ?」

「愛情値・・・ですぅ・・・」


「はぁっ!!?教えてやらなかったのか!?テイマーとかクソ雑魚で愛情値は一番ゴミなステータスだって!!」


「教えましたよぉ!!それはもうコッテリ、ネッチリと教えてあげたのにぃ・・・。自分より強い魔物はテイム出来ませんし、テイマーは最弱ですからそもそもレベル上げもなかなか出来ませんし、スキルレベルも滅茶苦茶上がりにくいから詰みますし絶対にやめる様にオブラートなしでガッツリ伝えたんですよぉ!?」


 ノドカも信じられないといった面持ちだった。


「まぁ、でも効率だけがこの世界じゃないしな。この世界は広いし自由度も無限と言っていい。どんなステータスでも楽しみは見つけ出す事が出来るだろう・・・」


 モーブは存在しないスケルトンの眼球を遠くに向けて、遠い目で語っていた。


「ふ・・・ふふふ。そうですねぇ・・・。広い世界に・・・出れればいいんですけどねぇ・・・」

「おい。どう言う事だ!?」

「マネジェルが倒せず、チュートリアルが終了出来ずにチュートリアルフィールドで三時間以上、景色を眺めていましたねぇ♪」


 ノドカは光の宿らない目を、モーブよりも遥か遠くへ向けながら諦めて開き直るかの如く明るく言い放ちました。


「いやっ!攻撃値が3もあれば素手でも倒せるだろ!?技術が5あれば初級魔法でも一撃だし道具も使える。本能が3以上あれば石を拾って投擲もガイダンスで教えてくれるだろうし、防衛が5あればカウンターで・・・向上値だって・・・まさか・・・」


「・・・愛情値44ですぅ♪」

「嘘・・・だろ・・・?六属性ステータスの初期値は干渉不可でその人の性質を正しく映すと言われているんだぞ・・・?ロボじゃないんだから理論値最高の極振りなんてあり得ないだろ!!しかも愛情値って!!?」


 動揺するモーブ。それくらいありえない事なのです。


「バグだとか、チーターだとか話題になってますねぇ・・・。他にも加工動画だと言う人もいますが、そもそもに『アイズ・システム』は神で、その決定は絶対ですぅ。そのアイズ・システムが黙認しているのですから、正直言って誰も文句は言えないと、今は収束していますぅ」


「まぁ、それもそうだな。というか聞く限り現時点でなんの恩恵もないしな」

「むしろ詰んでますねぇ。でも、農家ジョブの私よりものどかでスローなライフを満喫していますよぉ。病んだ生活をリアルでしてましたからねぇ・・・」

「そ・・・そうか。まぁ、本人が楽しめているのはせめてもの救いだな。後で投げ銭送って応援メッセージでも送っておくかな」


 そんな人が意外と沢山いたりしたり。

 こうして、タマモは知らず知らずのうちに少しずつバズっていくのである。


 応援の言葉とは、本当に力になるものです。


 モーブは初見ながらもタマモに協力的でした。ノドカさんのリア友という事もあるでしょうが、そもそもに案外、彼は面倒見が良く彼自身のコミュ力によって集約した情報は彼を情報屋として成り立たせているのでしょう。それに彼はタマモに少しシンパシーを感じていたのかもそれません。


「さすが、ガチャ髑髏の異名を持つ情報屋さんの言う言葉は伊達じゃないのですよぉ♪私はモーブさん程の縛りプレイをしている人は知りませんし説得力がありますよぉ」


 笑いながらモーブに冗談を言うノドカ。彼は魔族でNPCの種族制限をガッツリと受けているのです。その代わりと言ってはなんですが、彼は鑑定スキルを持っています。知りうる限り彼しか持っていないスキル。しかし、その使い勝手はかなりピーキーです。鑑定範囲もその重要性も精度もランダムなのです。リンゴを調べて『赤いです』と鑑定される事もあるくらい大雑把なのです。ごく稀に世界の秘密に迫る様な情報が出たりするらしいんですけどね・・・。彼は戦闘は出来ずクラフトも出来ません。そんな彼だからこそ、タマモに親近感を感じたのかもしれません。


 彼にはこの鑑定スキルがとても相性が良かった。彼は世界の秘密を紐解く事にやり甲斐を見出した。時に情報を売り、交換し、誰よりもこの世界に精通していた。


 そんな彼、モーブは・・・この物語のキーパーソンの一人とになってくる。


 そして現実世界でタマモと繋がりのあるノドカも・・・。

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