詰みました♪
『おはようニャ〜。無事エディットは終わったのニャ?』
猫らしい仕草で顔を擦りながら手を舐めるイパミニちゃん。
どうやら姿はアイズ・デバイスで見ていた猫の姿のままの様です。
「そうですね♪モフモフは約束された様なモノです!!」
何せ脅威の初期愛情値44である!!他のステータスは軒並みに最低値を叩き出しておりますが、モフモフ以外はどうでも良いです♪
『にゃ・・・』
にゃ?
『ニャンなんじゃ、このステータスはああああああ!!?』
イパミニちゃんが取り乱しておりました。
毛を逆立ててただでさえ大きい目を、より大きくしながらヒゲをギザギザにしています。
なんだかジ⚪︎リっぽいですねぇ。
「これでテイムし放題です♪」
私は満足気の無い胸を張って見せます。
そういえば、十歳の狐獣人『タマモ ポテテ』として転生した私。
その姿は・・・控えめに言っても超絶美少女でした。
イパミニちゃんのキャラデザ能力パねぇです!!
『いや・・・それ以前に、このステータスでどうやって生きて行くのニャ!!?』
聞くところによると、基本は冒険者、魔物を倒すか、クラフトスキルで道具や料理を作って稼ぐか、農業や採取で素材を売るかです。
改めてステータスを確認。
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《ステータスボード》
HP:10
MP:10
SP:10
【パラメーター】
A本能:1 B攻撃:1 C技術:1 D向上:1 E愛情:44 F防衛:1
【不明領域】
特殊領域:0 未知領域:0
《スキル》
・テイムlv1『魔物や動物を服従出来る』
・ストックlv1『仲間のスキル使用可能回数を一回増やす』
分配可能スキルポイント:1
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魔法は無理そうですねぇ、技術が必要そうですし。攻撃力も防御力も皆無なので戦闘職も無理そうですねぇ・・・。獣人族の身体能力が泣いている気がします。
クラフトをしようにも技術がありません。本能もないので種族由来のスキルもなさそう。
というか愛情値しかないんですよねぇ。
回復とか補助の魔法を期待したりもしましたが・・・ダメだった様です。
どうやら、愛だけではとても大変な世界のようです。
リアルですニャ〜・・・。
これからどうしたものか、と悩む暇もなくシステムさんの声が響きます。
『チュートリアルフィールドへの転送が実行されます。』
なんという親切設計♪どうやら、チュートリアルが存在する様です。
ここで打開策を見出せる!と思ったのですが・・・
『マネジェルを倒して下さい。』
・・・どうやって??
システムさんはそれ以上の情報を現時点では教えてくれない様でした。
フィールドには沢山の金色をしたゼリー状のモンスターが溢れていました。
どうやらコレがマネジェルという魔物の様です。琥珀色のゼリー状の中にはコアがあり、触るとヒンヤリ気持ちがいいです。
モフモフではありませんが、これはこれでアリですね!
しかし、倒さないとお話が進まない様なので、大人しく指示に従う事としましょう。
私は拳を振りかぶり、力一杯にマネジェルに向けてねじ込む様に打ち込みました。
ほとばしるパッション、滲み出る熱血!!
私のこの手が轟き叫ぶのですよおおおおお!
『ぺちっ』
ヒンヤリ気持ちがいいです。
・・・
「・・・ダメージ通ってます?」
『通ってないニャ。どれだけ殴っても一生倒せないのニャ』
あくびをしながら、呆れているイパミニちゃん。
別に遊んでいる訳ではないのですよ・・・?
私の今の最大火力を叩き込んだのです。本来あるべき攻撃手段が何もありません。
一切攻撃してこない最弱モンスター。そしてそれすら倒せない私・・・。
虫も殺せぬ愛情に満ちたワタクシ様は、最弱モンスターすら殺生出来ないらしいのデス。
・・・詰んだのでは?
「イパミニちゃんがこう、なんかいい感じになんとか出来たりしませんか?」
『無理ニャ。私はサポートユニットだからせいぜい情報をあげられる程度ニャ』
「ならば、この状況を打破する一番いい情報を頼みます!!」
私は切に願います。大丈夫じゃない、問題だ!
『200分の1の確率でテイムが成功するニャ。本来はゼロにゃんだけど馬鹿みたいに高い愛情値のせいで0.5%の可能性が発生しちゃってるのニャ。ほぼバグだニャ』
どうやら他に手段はない様です・・・。
リセットしたいですが無理ですし。私のSPは今10。1日経つとHP、MP、SPは全回復します。他に回復手段はありません。テイムにはSPを1消費します。
つまり・・・チャンスは一日、10回です!!
「テイムっ!!」
・・・
私の詠唱は、10回虚空に吸い込まれました。つまり初日は失敗に終わったのでした。
時間が余りました。未だにチュートリアルなう。
『ここはメインフィールドとは別次元にあるチュートリアルフィールドにゃ。マネジェル以外の敵は湧かないし寝泊まり出来る簡易な古屋と食料、水くらいしかないニャ』
とりあえず最低限、生きられる環境は用意してくれている様です。
チュートリアルフィールドでサバイバルはどう考えても想定外なんでしょうけど。
眺める景色。小川が流れていて水がとても綺麗です。
まばらに生えていいる広葉樹。木陰に入り地面に座り木にもたれ軽く目を閉じる。
川の音が聞こえる。とても静かで・・・穏やかな時間。
「のどかだなぁ〜・・・」
安らぎを感じている事に気付いた。どうやら私は、私の思う以上に疲れていた様です。
『ゲーム・・・楽しめてるのニャ?』
少し心配そうな声。本当にこの子は・・・。
「思ってたのとは随分と違ったけどね♪でも・・・これはこれで楽しいよ」
思えば思った通りになった事なんて、現実も合わせて全然なかった。
私が胸躍らせた新しい冒険者、それが予想通りそのまま訪れたとして、私はドキドキ、ワクワクするだろうか?きっとしないと思う。
『そっか♪ならよかった・・・ニャ』
さてはイパミニちゃん。今、語尾を忘れかけたニャ?
こうして始まった、私とイパミニちゃんの異世界ファンタジーの冒険。
その1日目はまさかのスロースタートとなったのでした。
しかし、なんでテイムの成功確率をイパミニちゃんは知ってたんだろう??
相変わらずの謎性能です。
まぁ、イパミニちゃんだしなぁ・・・。
そう言いながら、私は道草を楽しむ。
「あ、雑草引き抜いたらアイテム化した!?自由度高っ!!」
『道草喰ってるニャぁ・・・』