《おまけ》長い設定の話『ファイムの独立した平等なシステム』
私が以前やっていたMMOもそうでしたが、どうしても時間をかければかけただけ強くなります。努力が報われない世界が望ましいとは思えませんので自然と言えば自然なのですが、やはりそれだと新参者やライトユーザーは、どうしても自分のモブ感が拭えないのです。華やかなトッププレイヤーを眺める惨めさよ・・・。
しかし、このゲームでは歳を取るのです。少年、少女から始まりピークを越えれば身体能力は落ちて行く。しかし経験値は溜まりマナとの親和性は上がる。それに合わせてプレイスタイルを変える必要があるのです。他にも様々なパラメーターが年齢によって適正が変わってきます。各年代に需要がある。人によってはかなり長く一つのキャラクターに拘りますが、人によっては転生を繰り返して同じ年代を繰り返します。レベルは存在せず、プレイヤースキルがそのまま戦闘力になる。転生に必要な条件を満たす必要もあるので一苦労ではありますが、それもまたこのゲームの醍醐味なのです。
ただ、これだと努力が報われにくい。人によってはいつまでも強くなれない。そこで知識は継承されるシステムが生まれました。ゲーム内の蓄積知識とはつまりスキル。魔法もスキルの一種になります。条件を満たさないと使えないスキルも多いがアドバンテージにはなる。ステータスは平等に全てのプレイヤーに同等にチャンスがありスキルも謎解きの様に自ら獲得が必要です。
攻略サイトは存在しません。アイズ・システムと直結したファイムの世界。禁止された情報はネットに流出する事は不可能なのです。自力取得が必要でありスキルが重要なこの世界。他のプレイヤーとの交流は非常に重要な役割を持ちます。口頭での伝達は可能なのです。ファイム内には情報に価値をつけて販売する事も可能です。
嘘の情報はペナルティを受けますが・・・。ファイムには法律も存在する。
しかも、この世界には配信システムが存在します。ファイムのアバターがそのまま、配信のフィルターになるのです。昔で言うところのvtuberですね。
ファイムの世界での冒険は勿論の事、他のゲームの実況ですらファイムのアバターとアイズ・デバイスを通して使用可能。これによりファイムの世界は現実に更に食い込む。
人によってはファイム・アバターでいる事の方が長い人すら出てきているのです。
ネットワーク上で繋がる時は現実とファイムアバターで使い分ける訳ですが『身バレ』、つまり現実の自分とアバターを公言してリンクしている人もいれば、していない人もいます。それなりにリスクもありますし、ロールプレイをする意味でも分ける意味は大きいです。非現実世界を自分じゃない自分で旅する。
多くの人はアバターと自分を切り離して活動している様でした。
私も当然、分けようと思っています。身バレ、コワイ!!
ファイム・アバターはいわば仮想空間での自分なのです。
一般的には『ファバター』と呼ばれていました。
人気のファバターは収益を得ています。その源泉は、まず投げ銭です。
現実のお金を推しのファバターに貢ぐのです!更に広告収入なども得る手段があります。
再生数などに準じて報酬が出ます。これで生活出来るのは、どうしても上層部のみにはなってしまいますが・・・。
ファイムの世界の価値は・・・マナと呼ばれるのですが、現実と直結している。
シンプルに換金が可能なのです。これもファイムの普及を後押ししました。
しかし、その換金は一方通行です。マナから円やドルに換金は出来ますが、逆の現実の通過でマナを獲得する事は出来ません。
『マナを入手する方法は魔物を倒す事のみ。』
魔物は必ず魔石を持っていて、魔石はマナを含有しています。そのマナは数値化が可能で魔石同士でマナの譲渡が可能なのです。これがお金と同じ役割をします。
ファイムの収入源、それは広告収入。
これほど確実な広告媒体はありません。普及率ほぼ100%のデバイスで60%を超えるユーザーを持つソーシャルネットワーク、その使用頻度は全ての人に廃人レベルでの接続時間を叩き出します。そして、その情報の信頼性も限界突破である。
企業はこぞってファイムに広告を出します。更に個人からも収益を得ます。
しかし、現実のお金がゲーム内に影響する事をファイムの運営は嫌います。
なぜか?お金をかければ強くなるなら、現実のお金持ちが最強です。
一時、ソシャゲと呼ばれるゲームを含めた全てのゲームはそのルールに飲み込まれました。なぜなら儲かるから。利益の為にゲームが作られるのは当たり前だったのです。
しかし、ファイムは利益を必要としない事で、独自価値を生み出し、独立した世界を構築したのです。
では広告収入以外に個人から現金を得る方法とはなにか?
ステータスや能力値、レベルなどの強さとは関係ない部分。
デザインとしての追加コンテンツ。これは、課金以外でも変更が可能です。
ユーザーからも購入が可能なのですが、公式でも販売されています。
後は全て広告収入。それでも莫大な資本がファイムには溜め込まれていた。
MMOの独立の壁、それはRMT。
「現実でお金を渡すから、マナを売ってくれよ!」
ファイムにハマった人達は、マナを欲した。これは運営が求める独立した世界に反していた。リアルマネーを使って強くなれてしまう事。
しかし、譲渡にリアルマネーが絡んでいるか判断する事は難しい。
結果、プレイヤー同士のマナの取引が出来なくなった。そうなると今度は、価値の安定したアイテムが取引に・・・イタチごっこです。
そこに一石を投じたシステムがファイムで生まれた。ファイムには相場を記録するAIが内蔵していた。取引履歴、その流通量、希少価値、有用性を判断してある程度の相場データが蓄積されているのです。そして、相場を大きく下回る取引はその額面が記録された。
一方的なマナの譲渡についても記録される。そして、それは性向値と呼ばれ他のユーザーにも見えるように表示される。NPCはアライメントが低いと態度が変わる。誤って極端に低い金額で購入してしまった場合は、警告が発信されキャンセルできる仕様となった。
一部プレイヤーは、あえてアライメントを下げた敵役を楽しんだが、
その扱いは盗賊に近く、PKをされても相手にペナルティがなくなる。一部施設が使えなくなる。NPC商店が利用出来なくなるなど、かなりキツイ、プレイを強いられる事となった。
ファイムが蓄積した資産はAIによって管理され、換金レートはその蓄積額と世界のユーザーに流通しているマナの総量によって決められた。
マナはある意味、最も信頼できる仮想通貨となった。自由に取引できないから投資に使われる事はないけど・・・。
更に『アイズ・デバイス』には驚きのシステムが存在する。
これが更なる公平を生み出す。それは『デュアル・ワールド』というシステム。
現実世界を生きている間にも、脳の余剰領域を使いファイムで活動し続ける。
お風呂以外の時間は常に『アイズ・ デバイス』を装着している。
しかし、それだけでは説明がつかない現象が存在する。
『他のプレイヤーとの時間経過が揃っている。』
ここから導き出される『アイズ・システム』が行なっている処理。
『アイズ・システムは・・・仮想領域に脳をトレースしている』
ファイムに接続するには、アイズ・デバイスを一日四時間以上、装着する必要がある。
これはきっと・・・同期作業です。
寝ている間に1日分のファイムでの活動した記憶がインストールされる。
睡眠がなかった場合、起きたままでも実行される。
『このシステムによって、プレイヤーは時間的平等を獲得します』
そして、この事はある可能性・・・いえ、事実を導き出します。
『アイズ・システム』は仮想空間に人を生み出す事が出来る。
これは不老不死を意味する。
これは人を超えた人を生み出せる事を意味する。
それは・・・現人類の終焉なのかもしれない・・・。