個 vs チーム
8回。応援バトルの時がきた。
グラウンドが変形しリングが現れる。
「セイヤっていう名前だっけ?この世界は8回の応援バトルで勝てばいいんだよ、それまでの試合は全て無駄さ!結局は応援バトルで全てが決まるんだ!!」
「だから、選手なんて応援したって意味ないんだよ」
「意味無いことなんてない。野球は1人だけ強かったら勝てるようなスポーツじゃない。チームで強くないと勝てない奥深いスポーツなんだ!」
「じゃあ、俺様が証明してみせるよッ!!!」
ドランは応援歌を歌い出し、筋肉を強化させた。俺と同じようなスキルだが、増えている筋肉量が異次元であった。腕の太さが何十倍にもなっており、もはや大きな壁に見えた。
「くッやるしかねぇぇ!」
俺も応援歌を歌って、筋肉を強化させた。ドランに比べれば貧相な体だが、俺には勝算が見えている。
「くたばれぇぇぇぇぇぇ!!!」
ドランの大砲のような拳が飛んでくる。
「だが、おそい!」
「な、なに!?」
俺が筋肉強化したのは腕だけでなく、脚もなんだよなぁ。腕はあくまでも注意を引くための、おとり強化ってわけだ。
「ふき飛べえぇぇぇぇ!!!」
俺は拳に力をこめ、思いっきりドランの腹を殴った。
「ぐはッ、、、」
ドランが腹にパンチをくらい、うろたえているので、追い打ちの拳連打をする。
「どりゃあぁぁぁぁぁああああああ!!」
「うッ、、、、、、う、、、、、、」
あいつホント化け物だな。ほぼ気絶しかけているが、立ったまんまだぞ。だが、これでトドメだな。俺は右拳に力を入れ、ドランに向けて、最後の一発を放とうとした時。
「ふっ、まだこれからだぜ」
ドランに拳を止められる。
「な、なに、、、なぜまだ動けるんだ、、、」
「んーもしかして、これかもなぁ??」
ドランの手には、注射器のようなものがあった。
「あれは違法よ!自分の力を限界の先まで高める、試合で使用禁止されている薬だわ!審判あれはアウトよ。今すぐ相手に強制敗北を宣言してちょうだい!!」
ベンチで見ているミレイが審判に訴えるが、肝心の審判は宣言をする素振りすら見せなかった。
「マネージャーちゃん。ビギナークラスの審判がそんな高性能な訳ないだろ、しかも予選の審判だ。ビギナークラスにはビギナークラスの戦い方ってのがあんだよ」
ドランは違法の薬の力で更に筋肉を巨大化させている。
「これでサヨナラだあぁぁぁぁぁはははは!!」
ドランの拳が俺の腹に入る。しかも、連続で、、、、
「!、、、、、、、、、、、、」
あまりの強さに声を発することすらできなかった。
息ができない。俺はリングの上で倒れ込んだ。
こんなズルした奴に負ける訳たくねーよ。なんとかして勝つ方法はないのか、俺は必死に頭を回転させた。
「危ないわ!セイヤ!」
ドランが俺のすぐ近くに立っており、今にでも拳を突き下ろそうとしている様子であった。
「残念だったな。お前の負けだ」
「いいや、ただ1つの勝ち筋が見えた」
俺は最後の力を振り絞って脚に力をこめて、勢いよく走り出した。そして、リングの外へと出たのでる。
「は?あいつ馬鹿だw 血迷ってリングの外に出やがった。これで応援バトルは俺の勝ちだあ!そして、この試合の勝利も貰ったぞぉー!!!」
8回。応援バトルの勝者:ドラン
「セイヤ、、、私やチームのみんなは絶対にセイヤのことを責めたりなんかしないわ。そもそもこんな弱小チームが1勝できただけで凄いんだわ」
「ミレイ、まだ俺らは負けてない。まだ諦めるには早いぞ」
応援バトルで勝利したドランのチームの選手は、ステータスが大幅に上がった。その為、次々とヒットを打たれてしまい、満塁になってしまった。
俺は投手に応援歌を使って、『球速と変化量アップ』をした。これが俺の最後の勝ち筋のやり方だ。あのまま応援バトルで戦い続けたら、きっと気絶して負けていただろう。
気絶してしまうと、8回と9回で応援歌を歌えなくなってしまう。だから、わざと自分からリングの外に出て行って、応援歌を歌う体力を残しておいたんだ。
しかし、応援バトル敗北の代償は大きかった。
カキーーーーーーーーーーーン!!
変化球の球を上手く捉えられ、満塁ホームランを打たれてしまったのだ。そして、その後もヒットが続き、合計で5点も取られてしまったのだ。
8回の裏。俺らの攻撃。
5-6でギリギリ勝っている状況。追加点が欲しいところではあったが、応援バトルで強化された相手選手は強く、三者凡退で終わってしまった。
9回の表。相手の攻撃。
ここで0点に抑えなければ負けは確実だ。なんとしてでも0点に抑えないと。
しかし、そう上手くいくことはなくヒットを打たれ続け、またもや満塁になってしまう。2アウト満塁で相手は4番打者。絶対絶命の状況。
「絶望的だ、、、、けど、俺は応援し続ける。最後まで絶対に諦めない」
俺はボロボロの体にカツを入れ、今までにないくらいの声量で応援歌を歌った。さっきは変化球を上手く捉えられた。最後は、直球勝負で仕留めるしかない。
俺は投手の『球速を400アップ』させた。アップさせる項目を2つ選ぶと、強化量が減ってしまう。だからもう、早い球で相手を追い込む。
ストライク、ファール、ボール、ボール、ファール、ボール、、、
2ストライク3ボールのフルカウントとなる。
「あいつまだそんな力が残っていたのか。投手のスピードが異次元に速くなっていやがる。うちの4番打者が打ちにくそうにしてやがる」
「俺様が応援バトルに勝ったっていうのに、チームのやつらは何してんだよ!とっとと打てや!!」
頼む、、、抑えてくれ、とチームのみんなが拝んでいる。
投手が球を投げる。
「やばい、球が少し高いわ!打たれてしまうわ!」
「いや、これで大丈夫だ」
少し高い球は、スピードを上げ、更に上へと上がる。胸ぐらいの高さだったものが、突き上がるような軌道で、打者の目線の高さまで上がったのだ。4番打者は大きくスイングをした。
バシッ!!ストライーーーーク!! バッターアウト、ゲームセット!
「やったああああぁぁぁぁぁぁあああ!!」
投手のところへ、みんなが駆け寄る。
「また勝ったぞおおおおお!!」
「これで本戦に行けるぞおおお!!」
「ありがとうセイヤ!」
「セイヤの応援のおかげだよ!」
「ありがとう!みんな!」
「そしたら、セイヤを胴上げだ~!!」
俺はみんなに胴上げをされた。バンザーイという掛け声と共に、俺の体が宙に浮く。みんなが支えてくれる背中から、温かみを感じる。
よかった、このチームの応援師になれて俺はよかった。
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