痺れの先に笑顔
4回表。俺は再びマロンに応援歌を使った。
マロンまで打順は回らなかったので点数は入らなかったが、守備の時に確実に0点に抑えることができる。
4回の裏。守備。
「ははっ、残念だな多間セイヤ。俺がそんなちょろいと思ったか?」
ビレンは応援歌を歌い出した。すると、投手ではなく捕手のマロンが痺れ始めた。
投手は痺れていないので完璧な球を投げるのだが、マロンは痺れているので上手にキャッチすることができない。
つまり、塁にランナーがいた場合、隙を見られて進塁されてしまうのだ。
「と、いうのがビレンの予想かな笑」
ビレンは気づいていない。俺がマロンの強化した部分は、視力だけじゃないってことに。
「マロンには精神力アップもさせているんだよなぁ〜」
マロンは強い精神力で痺れを我慢し、キャッチを行う。
「なぬ?アイツずるすぎるぞ!!!」
「くそくそくそくそーーー!!!」
「もういい!応援バトルで決めてやる!」
その後も同じ戦法を続けて0点に抑えていった。マロンの活躍によって点も入り、2-2の同点まで追いつくことができた。
8回。応援バトルの時が来る。
グラウンドが変形し大きなリングが現れる。
「絶対に倒してやるよ多間セイヤ。今までやってきたビギナークラスの試合の中で、今日が1番楽しいぜ!」
「認めたくないが俺は分かる。お前は絶対に上に行ける素質を持っている、、、だが!!俺の前にお前が立った以上、倒させてもらう!!!」
ビレンは応援歌を自身に使い、体に痺れの放電をまとう。
「あばよぉーーーーー!!!」
俺も応援歌を自身に使い、筋肉の強化をする。
ビレンのパンチを腕で受け止めるが、痺れがきて痛みを感じる。
「くっ、いたすぎるぞ!握手の時に比べてパワーアップしてやがるッ!」
「もう一回応援歌を使って俺の精神力をアップさせよう」
応援歌を歌おうとしたが、ビレンに邪魔をされる。
「何度も同じ手をやらせねーよぉ!」
ビレンの”放電を纏った痺れるパンチ”が連続で腹に入る。
「ぐはッッッッ!!!く、る、、しい、、、」
体中に痺れが走り。応援歌をする余裕がない。
「だが、こんなところで負けられない。今は同点。俺が応援バトルで負ければ、チームの負けはほぼ確実だろう...」
「だからこそッ、俺は絶対にこの勝負負けねぇぇぇーーーーーー!!!」
根性をふり絞って、右手を思いっきり後ろに引き、ビレンの眉間に拳をたたきこむ。
「どりゃああーーーーーーーー!!」
「な、なにーーーーーーー!!くそぉーーー!!」
ビレンはリング外へ飛ばされた。意識はあったが、非常にダメージを負った様子であった。
俺たちのチーム選手は大幅に強化され、試合が続行する。
8回の表。攻撃。
無事に選手たちをパワーアップすることができたのだが、なかなか点を入れることはできなかった。相手の投手に抑えられてしまっていたのだ。
「ここにきて選手の力の差が出てしまったか...」
守備の時、ビレンはヨレヨレな姿で応援歌を歌っていたが、効果も以前よりかは小さくなっており、痺れも弱くなっていた。
9 回の表。攻撃。
ここで点を入れなければ延長戦へと突入してしまう。
応援バトルの恩恵の効果もありヒットが続き、満塁になる。打席には、あの霧宮マロンが立っていた。
「マロンいけー!!!」
「気持ちで負けるなよー!」
「絶対いける!頑張れマロン!!」
みんなが大声でマロンを応援している。マロンの眼には涙があった。
(私もみんなの役に立ちたい!応援師をやってくれたセイヤ君にも恩返しがしたい!!)
「絶対にみんなでビギナークラス優勝するんだ!」
マロンは熱く燃え上がる。
投手が球を投げる。カキーーーーーン!
マロンの球は上に上にとグングン伸びていき、満塁ホームランを叩き出した。
「うぉーーーー!!!」
「やったーーーー!!」
「すげぇぞーーマロン!!」
ベースを一周してきたマロンに選手たちが駆け寄る。ベンチは大盛り上がりした。
「は...嘘だろ...満塁ホームラン打たれた...」
ビレンは顔を真っ青にして、意気消沈していた。
9回裏の守備も、マロンの活躍もあって、0点に抑えることができた。
結果、6-2でチーム『デシラドン』、応援師ビレンに勝利をすることができた。
「ばんばーい、ばんざーい、ばんばーい」
みんなでマロンを胴上げする。マロンは少し照れていた。
「よかった、本当に勝ててよかった」
「セイヤくん、ありがとう。私に応援歌を使ってくれて」
「信頼されている気がして凄く嬉しかった。最近チームに貢献できてなかったから嬉しかったの」
「マロンならきっとやってくれると思ってたよ。ナイス試合だ、ありがとうな」
そう言って俺は握り拳を前に突き出した。マロンは戸惑っていたが、すぐに理解してくれた。
グータッチを交わし、マロンの笑顔を見て、俺も笑顔になった。
投稿遅くなってすいません!