心を1つに
日は沈んだのだろうか?
地下の特訓場でずっと悩み続けているチームには、今の正確な時刻は分からない。何時間も悩み続けているような気もするし、数分の短さのような気もする。
こうして仲間が迷い続けている中、誰かが地下の特訓場に降りてきた。
「おい、もうすぐ日を越えるぞ」
ドン・ファンが気にかけて来てくれた。
「すいません助けてください。どのレジェンドチームと戦うかについて、チーム内で意見が割れているんです」
すかさずミレイがすがりつくように助けを求めた。
ドン・ファンはすぐに返事はせず、一旦俺らの方をじーっと見て考えこんだ。
「お前らで解決せえ」
返ってきた返事は少し冷たい内容で、ミレイは落ち込んだ表情をした。なんとか、アドバイスを貰えないかと必死に質問を繰り返したが、ドン・ファンは何も言わず去っていった。
「ちょっと冷たくねーか?」
仲間の1人がぼやいた。
だが俺は冷たいと思わなかった。今この瞬間、チームの力を試されている気がした。ドン・ファンがチームを見渡した時、俺は目があった。
期待と応援、温かさをもった目をしていた。ドン・ファンはここでアドバイスをしては、このチームの為にはならないと判断したから、何も言わず去っていったのだろう。
「で、どうするんだ?俺はセイヤの意見には反対だぜ」
「すまないが俺もだ。今回ばかりは流石に無茶すぎる」
「そもそも第二次野球界大戦に出ること自体違うんだ...」
「確かにそうだな。俺たちはゆっくりゴールドを稼げればいいんだよ」
「そうだそうだ。大陸の運命を任されるのなんてごめんだぜ」
仲間のほとんどが反対意見として固まってきている。反対意見の声は強くなり、場は完全にそっちの雰囲気へとなっていた。
「ちょ、ちょっとみんな落ち着いて。今更、野球界大戦に出たくないなんて言わないでよ!みんなでセイヤについていくって決めたじゃない!」
ミレイは涙目ながら必死に訴えた。
「あの時はそうしちまったが、今思えば違うかなって...」
「なによそれ、最低」
もう空気は最悪だ。チーム史上1番の最悪の雰囲気。こんなにも近くに居るのに、みんながバラバラに感じる。数日前のビギナークラス優勝が嘘みたいだ。
「みんなは野球が好きか?」
久しぶりに俺が口を開き、皆が驚いて静寂が訪れれる。
「ドン・ファンはどうして俺らに特訓場を貸したか分かるか?」
「そりゃあ試合に勝ったからでしょ」
「勿論そうだが。それ以上に大切な理由があった」
「それは野球を楽しんでいるかどうかだ」
「ドン・ファンは戦ってきた相手の中で1番野球を楽しんでいたし、野球を楽しんでいる俺らをみて更に喜んでいた。応援バトルで負けたのに、満足そうな顔をしたのを俺は忘れられない」
「もう1度聞く。みんなは野球が好きか?」
少しの間を開け、バラバラにうなずく仲間たち。
「俺たちはこれまで一貫して野球を楽しんできた。だから、それをこれからも続けていきたい。相手がどうとか正直どうでもいい」
「みんなでずっと野球がしたいんだ。その為には、この大陸を守らなきゃいけない」
「分かってる。けど、俺たちにそんなことが出来ると思えないんだ...」
仲間の1人が怯えながら言う。
「”成功”か”失敗”かじゃなく、”やる”か”やらない”かが大切なんだ。後からやっておけば良かったなんて後悔したくないだろ」
「負けたらさ、また一緒にビギナークラスからやり直そうぜ」
俺は初めて涙を流した。話している途中は泣いているのに気づかなかったが、話終わった瞬間に頬に冷たいのを感じ気づいた。
仲間たちが立ち上がり何も言わず集まってきた。そして、大きな塊となる抱擁をかわした。全員が泣きながらしていた。
言葉としての返事はなかったというよいり、出せなかったのだろう。誰もが泣いてしゃっくりをしている状態なので、まともに話すことが出来ない。
ただ言葉はなくても、仲間の意思はしっかりと伝わった。俺はこのチームの応援師なんだ。
俺たちは野球が好きで野球を守るために戦う。野球を戦争や争いのものとはせず、楽しめるものとして広める。それが俺たちの使命。
例え負けて失敗しても、何度もやり直せる。どんな酷い状況になっても、このチームなら何度でもお蘇れる。あの伝説チームのフェニックスナインのように。
俺たちは地上へ上がった。日付はとっくの前に変わり、朝日が出始めた頃であった。
後光に刺されながら出てくる俺たち。目のまえにはドン・ファン率いるフェニックスナインが待っていた。
「全く心配かけよって。遅いんじゃよ」
言葉とは裏腹に、何故か嬉しそうに喋るドン・ファン。フェニックスナインの一同も嬉しそうに微笑んでいる。
「遅くなってすいません。チーム名『メルエトワーズ』、ただいま戻ってきました!」
「そして!このチームの応援師、”多間セイヤ”です!!」




