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天才応援師

 解明できないからといって試合を中断することは勿論出来ない。俺らはひたすらに頑張っていくしかないんだ。


 「よーっし!かっとばせ!」

 俺は最初の打者に応援歌を使って、『パワーを200アップ』させた。


 こちらのパワー200アップだって、並大抵のレベルじゃできない技だ。簡単に打ち取ることはできまい。


 「ほー、ブロンズの割にやるのぉ~」

 「じゃあ、ワシも応援使おっと」

 ドン・ファンは先ほどと同じ応援スタイルで応援歌を歌い始めた。


 スキル『応援の心眼』使ってステータスをみると、またもや『やる気』のメーターが大幅に上昇していた。


 またもや『やる気』の上昇を使われた。さっきみたいに、見たことのない力を発揮され打者は打ち取られてしまうだろう。


 だが!これはチャンスだ!


 相手の応援の謎を解明する機会が設けられたってわけだ。ピンチこそチャンスになるんだ。ここで相手投手を注目してみれば何か手がかりを得られるかもしれない。


 バシッ!!


 気づけばキャッチャーミットに球が到達している。音を置き去りにして、先にストライクという事実が襲ってくる。


 さっきの相手の打席と全く同じであった。打球音が聞こえる前に、球が上空を飛んでいた。音を置き去りにするほどの強烈な力。


 こんなのはただのミートやパワーを上昇させるだけでは無理な気がする。そういう表面的な数値を上げていけるようなレベルではない。


 もっと深層的なところの力を底上げしている感覚だ。深層部分の力を爆発的に上げているのが、もしかしたら『やる気』なのかもしれない。


 深層的部分の底上げ、、、精神保護と言われる応援歌スタイル、、、爆発的な力、、、



 「そうか!そういうことか!」


 俺は気づいてしまったのかもしれない。応援歌スタイルの真の強さに...


 謎を解明できたものの、点は取れないまま俺らの攻撃は終了する。


 3回の裏。相手の攻撃。


 お互いに表で応援を使ってしまったので、裏では応援は使えず素の勝負となる。だが、素の勝負でも俺らの力はフェニックスナインの足元には及ばない。

 

 おじいちゃん達は何食わぬ顔でヒットを打ちまくり、追加点を2点といれてきた。だが、俺らも黙って負ける訳にはいかない。


 相手の打ちミスを逃さず、キッチリとアウトを取っていき、3回の裏を終了させた。


 4回の表。俺らの攻撃。


 「さぁ俺らの攻撃だ!いくぞ!!」

 俺は元気よくベンチに声をかけた。


 「なんか元気だね」

 キャッチャー用具を外して、打席の準備をしているマロンがこちらを見ながら言ってきた。


 「まぁな!謎を解明できたんだ!」

 俺は自身満々に答えた。


 「そうなのね、じゃあ私に応援かけてちょうだい」

 マロンは優しく微笑みながら言った。そして、バッターボックスへと向かって行った。


 マロンが打席に立ち、俺は応援を使った。しかし、今回はいつもと違う。パワーやミート、走力とかを上げたりはしない。


 俺が上げるのは、もちろん『やる気』だ!


 俺が考える『やる気』の仕組みはこうだ。

 精神保護と言われている応援歌スタイル。だが、それだけではなかった。体の底に眠っている力を爆発させることが出来るのだ。

 

 それはつまり、選手を覚醒状態にすることができるってこと。だから、音を置き去りにした打球や投球ができたんだ。


 応援歌スタイルはただの精神保護ではなく、選手の覚醒を行うことができる!

 だから俺は今ここでマロンを覚醒させるんだ。


 「うおぉぉぉおおぉぉおおお!!」

 俺は応援の力を貯め始めた。


 この選手の覚醒は絶対に簡単に出来る技じゃない。誰でも出来るやつなら、精神保護という情報だけが広まるのはおかしい。


 覚醒状態に出来るなら鳴物スタイルの応援師ばっかじゃなく、応援歌スタイルの応援師が増えたっていいはずだ。だから、それぐらい覚醒は難しい技なのだろう。


 「いけえええええええええ!!」


 俺は最高潮に応援の力をためて、マロンに応援を使った。


 マロンの体からは金色の神々しいオーラが出始め、威圧感が物凄く上がった。目の色も金色へと変化しており、まるで人が違ったように見えた。


 「な、なんと...」

 「いきなり覚醒をやってのけただと...」

 覚醒状態になったマロンを見て、ドン・ファンは目と口を大きく広げ驚いた。


 「何人もの弟子に応援歌スタイルを伝授してきた。だが、誰一人として覚醒を成功させることはできなかった。そう、何十年も」

 「だが、こやつはたった1発で成功させただと...天才応援師だ...」


 「さぁ決めてやれ!マロン!!」

 俺の声と共にマロンはスイングをし、打球を空高く打ち上げた。


 遠く遠く、遥か遠くへ打球は飛んでいき、空の雲を突き破っていった。

「そこそこ面白いじゃん!」


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