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生きる伝説

 真冬で雪が降る中、試合が始まった。おじいちゃんが好きな方を選べと言うので、俺は先攻を選んだ。とっとと点をとって、試合の流れをよくしたかったので。


 1回の表。俺らの攻撃。


 「俺らは容赦しないぜぇ~」

 1番打者の選手が投手に対して言う。


 「ほっほ。それはこちらのセリフですぞ」

 長くて白い髭を生やした投手の人は、腰を曲げ投げる態勢に入った。


 次の瞬間、俺の眼に映ったのは、キャッチャーが球を取っている姿であった。


 「え?...」


 ヨボヨボで腰が曲がっているおじいちゃんが投げるような球では無かった。その見た目に反して、投球が物凄く早く、まるでトリックアートを見ているかのような気分であった。


 そして、続く2番打者も3番打者も簡単に抑えられていった。こっちが点を取って流れを作るどころか、相手の調子が良くなって流れがあっちになってしまった。


 「本当に歳を取ってるのか?」

 と、俺は疑問に思った。


 1回の裏。相手の攻撃。


 腰の曲がったおじいちゃんが打席に入る。見るからにして打てなさそうではあったが、さっきの件があるので油断は出来なかった。


 だが、俺たちはこれでもビギナークラス優勝者だ。ちょっとやそっとで打たれるような投手ではない。


 打席に立ったおじいちゃんがバットを華麗に振り回す。まるでいつも打席に入るときのルーティンのような感じであるように。


 「んーーーーー」

 隣でミレイが首をかしげながら、考え事をしている。


 カキィーーーーーーーン!!

 

 おじいさんが打った打球は遠く遠く飛んでいき、グラウンド外の積雪に入っていった。いきなりの戦闘打者ホームランである。


 「え...強すぎないか?...」

 俺は今にでも膝から崩れ落ちそうであった。


 続く打者たちも次々と打ってきたので、俺は慌てて応援を投手へ使った。ノーアウト1,2塁だったが応援の力を使ったおかげで追加点を入れられることはなく1回の裏を終わらせた。


 「くそぉ~もう少し点を取りたかったのぉ~」

 ベンチでおじいちゃん達が悔しそうに話している。


 俺は悔しかった。これまで積み上げてきたものが全て無駄のようにすら感じられた。決して相手チームを馬鹿にしているつもりはないのだが、ここまでやられるとは思ってもなかった。


 「くっ、何でなんだ」


 対策という対策も考え付かなかった。相手チームは特別な作戦は使っておらず、素の力でこちらをねじ伏せている。


 そう、まるでビギナークラス大会決勝戦のスチームパンクと同じように。だが、今回は同じような手では勝てないだろう。


 前のスチームパンク戦は相手のチーム雰囲気を悪化させて、隙をついた。また、応援師のガイが最後らへん諦めてくれてたのも大きい。


 2回の表。俺らの攻撃。


 「よし、俺も打席に入る」

 と、俺は言いバットを持った。


 「えぇ!?ほんとか?」

 ベンチにいたチームメイトたちが驚いた。


 「大丈夫。もうトラウマは克服しているし、元々バッティングには自信があるからね」


 「流石だな~。応援師と選手の2刀流なんて初めて見たぜ」


 背中から声を感じながら、俺は次の打席に入る準備をした。


 俺は思い出した。スチームパンク戦で最後俺がサヨナラタイムリーを打っていたことを。


 DH(打撃のみ)として俺は選手出場する。これは前回得た大きな成果であった。この世界で応援師と選手の2刀流は聞いたことないらしい(ミレイいわく)。


 俺の前の打者はゴロを打ってアウトになった。そして、遂に俺の打席の番となる。


 俺がバッターボックスに入った瞬間、相手ベンチから”お~”という声が聞こえてきた。


 「ほ~。応援師もやりつつ選手としても出るとは中々面白い奴だなぁ~」

 相手チームのリーダーおじいちゃんが関心したように言っている。


 シュッ!!


 打席で見るのとベンチで見るのでは全然違った。投球のスピードも凄いのだが、威圧感というものを大きく感じた。


 だが、俺だって負けてはられない。転生前は将来有望とされていた野球選手だったんだ。そこらの野球坊主とは全然違うぜ。


 「おりゃああああ!」


 スイングし球をバットの芯でおさえた。打球はみるみる奥へと、飛んでいきライトとセンターの間に落ちようとしてた。


 これは2ベースヒットかと思われたが、センターによるダイビングキャッチでアウトになってしまった。


 「ほ~~危ないわい」

 センターのおじいちゃんは額の汗を拭きながら、余裕そうな表情でこっちを見ていた。


 まじかよ。本当にこの人たちは何者なんだよ。全員見た目がヨボヨボのおじいちゃんなのに、投球早いわ、めっちゃ打つわ、ダイビングキャッチもしてくるわで、強すぎるって。


 俺が落胆しながらベンチへと戻って、道具をしまっていると、ミレイが突然叫んだ。


 「あーーーーーー!!!」


 「おいおい、急に叫んでどうしたんだよ」

 

 「私分かっちゃったかも。あの人たちの真の正体に」

 「まさか本当に存在するとはね」


 「もったいぶらずに教えてくれよ」

 絶対に何かしらあると思っていたので、俺はミレイの考えを知りたくてうずうずした。


 「あれは、伝説の”フェニックスナイン”よ!」

 「第一次野球界大戦で私たちの大陸を守り抜いた最強のチーム。平和主義がゆえに勝っても相手チームから引き抜きはせず、ただただ自国を守り続けた国の英雄よ」


 第一次野球界大戦は100年も前の話のはずなのに、まだ生きていたっていうのか。しかも、今でもこんなに動けて強いなんて、現役時代はどんな化け物だったんだよ。


 「あの打席に入る前のルーティンに見覚えがあったのよ。そして、あなたが打った球を取ったのを見て確信したわ」


 「ほっほっほっ~、気づかれてしもうたか」

 「我らこそが国の英雄と呼ばれし”フェニックスナイン”じゃ。そして、私がキャプテンのドン・ファンだ」

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