目指せ、最北の地
「みんなすまん」
俺はチームメイトの前で頭を下げた。あの約束をしてすぐにレジェンドチームと上層部の男はすぐに帰っていった。
「今更なんだよ。セイヤはいつもそんな感じだろ」
「そうよ。これまでよく振り回されてきたのよ」
「もう私たちは、どんな時でもセイヤについていくって覚悟決めてるのよ」
俺のわがままで仲間を振り回してしまい、申し訳ないと思った。だが、仲間たちと一切俺のことを責めたりせず、逆に賛同してくれたりした。
「八岐大蛇や大神蛸を勝たせたりしたら、世界の均衡が崩れるわ。絶対にそれだけは阻止したいしね」
ミレイの発言を聞いて、皆が大きくうなずく。それほどまでに、その2つの大陸はやばいらしい。
「私も別にいいわ。けど、レジェンドクラスに勝てる勝算があるわけ?」
「今のチーム状況だと、レジェンドの一番弱いチームと戦っても1点も取れないわ」
スズカが腰に手を置きながら、真剣な眼差しで言っている。
「最強の特訓場を作る!」
「いや、俺たちにそんなゴールドな・・・ってあるわ!」
「優勝賞金の5000ゴールドがあったな」
「そう。そのゴールドを使って最強の特訓場を作る。そして、俺の練習効率アップの応援を使えば効果は何倍にも膨れ上がる」
「なるほどね、それは一理あるわ。けど、最強の特訓場の作り方は知らないわ」
スズカがそう言いながら執事の方をちらりと見る。
執事はスズカの視線を感じ、ニヤリと笑いながら話し始めた。
「この大陸の最北端に、極秘特訓場があるという噂を聞いたことがあります。なんせその地でレジェンドチームを目撃した情報が多数あるのです。我らの大陸で1番の特訓場は間違いなくあそこでしょう。」
「よーっし、そうと決まれば行くぞ!」
「おう!!」
俺らはすぐに準備をし、グッドランドバスに乗って最北端の地を目指した。片道6時間もかかる大移動なので、寝ようと思っていた。
だが、向かう途中で”大陸放送ラジオ”が流れた。
『ただいま、”麒麟”が上陸し、我がチームとの試合が開始しました』
「え?どういうことだ?」
俺の眠たい気持ちは一瞬にして冷めた。
「第二次野球界大戦。それは一般的な試合形式とは違うのです」
執事が淡々と話し始めた。
「一般的な試合形式は日程を決めトーナメントで優勝者を決めます。しかし、この戦いはサドンデスなのです。勝手に敵大陸に上陸し、いきなり試合をふっかけるのです」
「じゃあ、俺らの代表チームが負けたら、もうお終いなのか?」
「厳密に言えば違います。例え、負けたとしても試合ができる戦力が残っていれば大丈夫です。こちらが降伏しない限り負けにはなりません」
「ん??戦力が残っていれば??」
どういう意味なんだ。負けたって戦力はずっと残るんだから、永遠に勝敗が付かないじゃないか。
執事は少しの沈黙をはさみ、再び話し始めた。
「負けたらチームから1人選手が奪われるのです。だから、負け続けていくと出場できる選手がいなくなり、強制的に負けとなるのです」
チームの最大人数は15人で、試合に出場できる最低人数は選手+応援師で10人となる。つまり、5回までは例え負けても大丈夫ってことか。
「そんな甘くはないですよ」
執事が俺の心を見透かしたように言ってきた。
「きっとまず狙われるのは応援師でしょう。試合を形成すると言われている応援師を取ってしまえば、勝率は格段に上がりますからね」
「まじか、勝ったチームは好きな選手を選んで奪えるのか...」
じゃあ実質1回でも負けてしまえば終わりみたいなもんじゃねーか。他のチームから代わりの応援師を呼んだとしても、すぐにチームに馴染めるわけでもない。
元々、チームそれぞれに合った戦略があって、応援師もそれを計算してチーム練習を行っている。他チームから強い応援師を呼んだとしても、チームの戦略とあっていなかったら意味はない。
それに応援師を取られなくても、チームのエース投手や野手を1人取られてしまうだけで、大きな戦力ダウンになる。
「1回も負けれない勝負ってわけか」
「えぇ、だからサドンデスと呼ばれているのです。1回負ければ、チームは死んだも同然なのです」
俺は完全に第二次野球界大戦を甘く見ていた。ただの野球試合だと思っていたところがあった。けど、この世界の野球はルールが同じであっても、概念というものが全く違う。
正直、野球の楽しさを伝えるなんて言えたもんじゃなかった。歴史の重み、そして残酷さが桁違いだった。
その実感は誰もが感じ、チーム全員が静かになってしまった。俺はそんな危険な試合にみんなを巻き込んでしまっているのか...
「み、みんな...」
と俺が言いかけると、ミレイがさえぎってきた。
「あんた今更やめるとか言わないでしょうね?私たちは覚悟をもって来てるのよ」
「応援師のあなたがビビってちゃチームが締まらないわ!」
「ほんとそう。ここに居る人はみんな同じ気持ち。今更辞めたいとか言ったらしょうちしないよ」
と、マロンもミレイに続いて言う。
俺は仲間たちの顔を見渡す。全員が真剣な顔つきで、強い眼差しを持っていた。仲間がバラバラになってしまう、と1番ビビっていたのは俺だった。
みんな覚悟を持って俺についてきてくれたのに、俺がこんな状態でいちゃいけないよな。
「みんな、ありがとう」
「俺たちは絶対に勝つ!そして世界を守ろう!」
「おーーーー!!!」
そうして更にチームの絆を深めたところで、目的地へと到着した。
「さ、さみぃ~~~~」
グッドランドバスから降りた瞬間、凍えるような風が待っていた。
あたりは一面雪だらけ、雪景色そのものであった。
「で、ぇ、、どこ行けばいいんだ?」
体をさすりながら俺はつぶやいた。
「あ、そこに小屋があるわ。何か手がかりがあるかもしれないわ」
俺たちは全員寒さに震えながら、近くにある小屋に向かった。
小屋はボロボロであり、ホコリや蜘蛛の巣があったりとお世辞にも綺麗とは言えないような見た目であった。中の灯りはついておらず、人は住んでいない様子だった。
「んー誰もいなさそうだなー。ごめんくださーい」
声をかけても返事はなく、俺らは引き返そうとしたとき。
「アチョーーォーーーーー!!!」
という声と共に、俺の頭に振動がきた。なにか木の棒で叩かれたような感触だった。
「てめぇらぇ!なにもんだ!!」
振り向いてみると、そこにはヨボヨボのおじいちゃんが立っていた。しかも、カンフースタイルだった。




