嬉しい悩み
「わーい、わーい、わーい」
俺は仲間たちに胴上げをされた。
観客もみんなが立ち上がり、拍手をしていた。
スチームパンクの選手は俯き絶望していた。まさか自分たちが負けるとは思っても居なかった様子だった。ガイも同じような様子だった。
「ガイ、勝負の明暗を分けたのは君の諦めだよ」
「最後まで諦めずに応援していたら僕らは負けていたかもしれない」
俺はそうつぶやいた。ガイにはきっと聞こえてはいないだろう。
その後は本当にあっという間だった。ビギナークラスの優勝トロフィーを貰ったり、集合写真を撮ったり、ルイと話したりして忙しかった。
そして、クタクタな体で自分たちのテントへと戻った。ここのテントで過ごすのも今日で最後になった。優勝者は特別な高級宿に泊まれるらしいのだが、俺たちは断った。
悩み、苦しみ、けれど諦めずに過ごしてきた大会期間。その思いでが沢山詰まっているテントで最後の夜を過ごしたかったからだ。
「改めまして、優勝おめでとう!!」
グラスを上にかかげ、皆で乾杯をする。今日の晩御飯はいつもより豪華で、でっかい肉が沢山あった。さらに装飾もみんなで着けて、華やかにした。
「まさか、俺たちが優勝するとはな」
「最後のセイヤの打席痺れたぜ」
「あのハラハラ感最高だったよな」
「セイヤには本当に感謝しきれないわ」
食事を楽しみながら、仲間たちから感謝の言葉を並べられる。何回言われても、照れてしまうんだよなぁ。
「これは全員で勝ち取った勝利だよ。みんなが居てくれなきゃ俺は何も勝てていなかった」
「嬉しいこと言ってくれるわねー!」
ミレイが俺の背中を思い切り叩く。急に叩かれたものだから、食べ物が喉につまりそうになって危なかった。
「それより、優勝賞金5000千ゴールドの使い道を考えない?」
マロンが賑やかに騒いでる所で、冷静な発言をした。
「確かにそうね。私は寮のグレードアップがいいわ。まるごと寮を買い替えるのが夢だったのよ~」
ミレイが楽しそうに話す。
「えー俺は野球道具を買い替えたいぜ。もうボロボロなんだよ」
「俺はピッチングマシーンが欲しい!」
「ジムとか欲しいなぁ~」
選手たちも色々欲しいものがあり、意見はバラバラであった。
「ん~困ったわね。セイヤはどうしたい?」
「俺は、、、」
俺はどうしたいんだろう。勝負に勝つことだけに集中していたから、賞金のことは全然考えていなかった。この世界はゴールドを獲得するために野球をやっている世界だった。
俺はみんなと居れれば十分。けど、ずっと一緒にいるにはチームが強くなければ、ゴールドが無くなって強制解散してしまう。
「俺は、とにかくチーム強化に繋がることに使いたいかな」
俺の意見を聞いて、皆が”うんうん”とうなずく。その後もずっと、どれにゴールドを使うべきかの話し合いをしたが、結局その日の夜に決まることはなかった。
きっと、僕たちは今ままでゴールドを大量に持つ機会が無かったから、ゴールドの使い方が良く分からないんだなと気づいた。
翌朝、俺たちは奇病な形をしているグッドランドバスに乗って、自分たちの寮へと戻った。乗るのは2回目ということもあり、ある程度の耐性が付いていた。
「うわ~懐かしい~」
寮へ戻ってきた時、俺は少し感動してしまった。今までは、汚い寮という印象でしかなかったが、こうして帰ってくると実家のような安心感があって居心地がよかったのだ。
「なんだか安心するわね」
その気持ちは皆も同じようであった。
「寮をまるごと買い替えるのは、なんだかちょっと寂しいからやめようかしら」
と、ミレイが頬に手を添えながら言った。
「まぁ、無理にすぐ決める必要もないさ。じっくり考えて、みんなが納得するものを買お!」
「そうだね」
その後、俺たちは久しぶりの休暇を満喫した。あまり練習もせず、ゆっくりと部屋で過ごした。夏休みの帰省感があって楽しかった。
ビギナークラス優勝できたのは良かったが。ここから、ゴールド、プラチナ、レジェンドって上がっていかなければならない。けど、少し面倒だなぁ...
かといって今いるブロンズクラスで手を抜いて試合をすると、すぐにビギナークラスに落とされてしまうからなー、難しい。
「あ~もっと一気に進めるルートないのかなー」
俺は少し汚い天井を見ながらつぶやいた。すると、、、
ドゴーーーーーーーーーーーン!!!
という大きい音がグラウンドの方から聞こえてきたのだ。
俺たちは何の騒ぎだと慌てて、外へと出ていった。




