覚醒!?
プレイボーーーール!!
1回の表。スチームパンクの攻撃。
応援師のガイ以外のみんなも機械のスーツを着ている。1番打者の男が打席に立つ。
「俺のチームの投手もパワーアップしているぜ」
俺が入った時は球速130キロだったが、今では球速150キロまで成長した。簡単に打たれるようなピッチャーではない。
投手が球を投げる。剛速球だ、これは簡単には打たれないぞ。
「へッ」
1番打者の男はニヤリと笑う。機械のスーツから蒸気が噴き出て、力が入っている様子だ。すると、、、
バギーーーーーーーン!!
今までにない音を出しながら、球は遠く遠くへと飛んで行った。そして、会場の外へと落ちていったのだ。
「いきなり初回ホームランだと...」
俺は少し心が折れてしまいそうになった。過去最高ともいえる投手の状態で、完璧な球を投げ込んだのに、簡単にホームランを打たれてしまった。
「とりあえずホームラン打っといたぜ」
1番打者の男はベンチで他の選手とハイタッチしながら言っていた。
だが、これまでも1番打者からホームランを打たれることはよくあったことだ。変に意識しても良くない。切り替えていこう。
そう思っていた、、、
バギーーーーーーン!!、バギーーーーーーン!!、バギーーーーーーン!!、・・・
しかし、彼らの攻撃は止らなかった。2番打者も3番打者も、その後の打者もずっとホームランを打ち続けてきたのだ。
「レ、レベルが、、違いすぎる...」
俺も選手も絶望してしまった。1回の表から何発もホームランを浴び、試合開始から15分も経たずに、6点を入れられてしまったのだ。
もうこのまま俺らの攻撃は来ないのかもしれない、とまで思った。だが、スチームパンクの選手が急に三振をしだした。
「このまま点取り続けても試合終わらないから、わざとだよ(笑)」
スチームパンク応援師のガイが呆れたような口調で言っている。三振をしだして、俺が驚いた表情をしたからだろう。
スチームパンクはわざと三振をして、3アウトとなりチェンジとなった。ベンチに戻ってきた選手たちは、みな顔が死んでいた。
「まだ始まったばっかだぜ!楽しんでいこうぜ!」
俺は雰囲気を良くしようと皆を励ました。けれど、その思いは届かず空返事しか返ってこなかった。
1回裏。俺らの攻撃。
この試合の雰囲気をなんとか変えたかった俺は、すぐに1番打者に応援を使った。『パワーを250アップ』させた。
なんとかこの流れを変えてくれ。俺は強くそれを願った。しかし、結果は三振。一度も球をバットに当てることすら出来なかった。
スチームパンクの投手も相当強かった。投げるときにスーツから蒸気のようなものが噴き出て、目に捉えることができない早い球を投げてくるのだ。
落ち込んでベンチに戻ってくる1番打者に俺は肩を叩いて、励ました。今の俺に出来ることはそれぐらいしか無かったのだ。
これまでは、相手チームに何か特徴があり、それを対策してきて勝ってきた。しかし、今回は違う。相手チームには、大きな特徴点はない。
ただの力の差の問題なのだ。圧倒的力の差に、俺らはどうすることもできないのだ。
俺らの攻撃はあっという間に終わり、1回が終了する。チームの雰囲気は最悪だった。誰も何も話さず、うつむき、絶望してた。
2回の表。スチームパンクの攻撃。
「おい、今回は10点取っちまえ」
と、応援師のガイは選手たちに伝えた。
「ずいぶんとやる気満々っすね。いつもなら、9回までわざと三振して試合を早く終わらせるのに」
「フッ、アイツらをもっと絶望させたいんだよ。俺はあの生意気な応援師が気に食わないんだ」
「あのチームを崩壊させ、二度と野球をしたくないようにしてやる」
スチームパンクの選手たちは、1回の表同様に簡単にホームランを連続して出していった。
俺はどうすることも出来なかった。その光景をぼーーっと眺めていた。
「このまま何も出来ないのか...」
頑張ってやってきたのに...。ここで負けたらまた1年ビギナークラス決定だ。せっかくここまで戦ってきたのに。応援の力も駆使してきたのに、、、
応援の力、、、そう、俺は応援師だ。
仲間を応援してやれなくて、何が応援師だ。俺が1番最初に諦めてどうするんだよ。仲間たちは今もグラウンドに立って、試合を続けているっていうのに。
打たれると分かってていても、一切手を抜かず投げ続けている投手。全部ホームランだから守備する必要もないのに、いつでもボールが来てもいいように構えている守備。
みんな一生懸命に戦っているのに、、、俺っていう奴は、、、
「大馬鹿だ、大馬鹿者だった」
「俺はこのチームを世界1へと導く応援師になるんだッ!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
全身に力が湧き出てくる。これまでの疲れや悲しい感情は全て消え去っていった。俺の体に残るのは、応援の力、それのみだ。
体から青白いオーラが出ている。応援の力が溢れ出すぎて、体内からはみ出しているのだ。
「勝利へ導け。華麗に舞い上がれ。魅せつけてやれ剛速球」
俺は投手に応援歌を歌った、これまでにない力を込めて。投手に青白いオーラが移る。
「なんだ、これは!嘘みたいな感覚があるぞッ!!」
投手は興奮を抑えられない様子だった。そして、大きく振りかぶって球を投げた。
風を切り裂き、キャッチャーミットへと飛び込んだ。相手バッターは空振りしたのだ。
「おい、何遊んでんだよ。ちゃんとホームランを打て」
ガイが、打席に立っている選手を注意する。
「分かってます。ちょっとふざけただけですぜ」
選手は明からに焦っていた。急激に球速がアップした球に驚きが止まらなかったのだ。
投手はまた先ほどの球を投げつける。打者は思い切りスイングするも、バットの先端に当たりファーストゴロへとなる。
「よっしゃあああ!」
選手たち、俺、マネージャー陣、全員がガッツポーズをした。
「まず1アウトだ!!」
選手たちの士気が上がった。完全に向こうの流れだったものが、止まり始めてきた。
「てめぇぇぇぇ、何ふざけてんだ!ホームラン打てよ!」
ガイはカンカンに怒っており、打てなかった選手を責めていた。選手は悔しそうにこちらを見ていた。
「上手くはいったが、応援の力は1打席で切れてしまう。この後のアウトはどうしよう...」
そう思っていたのだが、次のバッターが打席に入っても、投手の青白いオーラは消えていなかったのだ。
「パワーアップしたのか、俺自身が」
「強化型応援師として俺が成長したのか!!」
続くバッターたちも内野ゴロで仕留めていき、3アウトでチェンジとなった。最初の方に打たれたホームラン2本がるので、相手は合計8点となった。
だが、投手への応援効果が1打席だけではなく、1イニング(1回分)だけになったのだ。
ベンチへと選手たちが戻ってくる。1回では無かった笑顔を見せながら、みんなが戻ってきた。
「ナイスピッチング!」
「ナイス応援!」
選手みんな掛け声をしあって、チームの雰囲気が良くなっていった。
もう2回で8点を取られてしまっている絶望的状況だが、俺らのチームに諦めモードになっている人は誰1人としていなかった。
「よーーーーーっし、こっから俺らの反撃だ!」




