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嵐の前の静けさ

 「おい、今すぐその足をどけろよ!」


 俺は機械スーツの男に近づいて、ルイを守ろうとした。だが、男は手を前に突き出し、俺に来るなと合図した。


 「おいおい!まだ試合中だぜッ!!」

 「邪魔をすんなよ」


 俺はすぐに会場の巨大な電子掲示版を確認すると、15ー0の数字が俺の眼に飛び込んできた。しかも、まだ7回裏が終わったばっかの様子だった。


 「なんだこの点差は...」

 

 ルイのチームだって準決勝まで残ってきた強いチーム。それなのに、15点という大差をつけて試合をリードしているだと...一体こいつらは何なんだよ...


 「だから、はやく遠くへいけって」

 「まだ応援バトルの途中でしょうがぁ~」


 「くっ...」


 俺は今すぐにでも飛んで行って、ルイを助けに行きたかった。けれど、いま飛び出ればルイのチームに迷惑をかけるのは確実だろう。


 機械スーツの男を倒しに行きたかったが、俺は後ろに下がって、その後の応援バトルを見守った。


 ルイはもう抵抗する意識も気力もないのに、男は容赦なくいじめていた。あえてフィールドの外に出さないようにして、応援バトルを終わらせないようにしている。


 「最低だ...最低な行為だ...」


 男は何度もルイの体を蹴ったり、座ったり、踏んだりして遊んでいる。


 「あ~もう飽きた。はやく試合終わらせよ」


 突如、男はルイの体を思いっきり蹴って、フィールドの外へ飛ばした。俺はすぐにルイの元へ駆け寄った。


 「ルイ!!だ、大丈夫か...」


 「せ、、、セイヤ... おれ、負けちまったよ...」

 ルイは苦しそうに話した。


 「すまねぇ助けてあげられなくて...」


 ルイはふっと笑いながら、俺の顔を見つめていた。すると、後ろから全身白い服の男がやってきた。頭の上に輪っかが浮かんでいたので、天使族の人だろう。


 「危険な状態だ、すぐに病院へ連れてく」


 天使はそう言うと、ルイを長方形のタイムカプセルのようなものにいれ、会場を出ていった。


 ルイ以外の選手もボロボロの姿になっており、もう試合をする力もない様子であった。しかし、機械のチームは試合にわざとアウトになりにいっていた。


 試合に飽きたからだろう。ルイのチームは最後の力を振り絞って、打席に立っていたが、まともにスイングできる様子でもなく、あっという間に抑えられてしまっていた。


 試合は15ー0でルイのチームは大敗した。試合終了後、全身白の服を着た天使の人たちが来て、ルイのチームの選手を何人も病院へ運んで行った。


 「なんて酷い試合だ...」


 試合の会場も、あまりの残酷さに静まりかえっていた。


 「おい、はやくサッカーして遊ぼうぜ」

 

 「そうだな。つまらない試合だったからお口治ししたいぜ」


 「キャハハハハハ」


 機械スーツの選手たちは、ふざけた態度で話していた。必要以上にいじめたルイやルイのチームメイトのことなんか1ミリも気にしていなかった。


 「おい、お前ら覚えてろよ。絶対に俺がお前らを倒す!!」


 俺は大声でそいつらに向かって言った。機械スーツのやつらは、一瞬お互いの顔を見合わせるや、大声で笑いだした。


 「ハハハハハハ、お前が決勝の相手なの?」


 「まじかよ、絶対弱いじゃん」


 「目を瞑ってても勝てそうだぜぇ」


 俺はそいつらの更なる煽りを無視して、会場を去った。そしてすぐに病院へ行って、ルイの見舞いに行くが、まだ意識が戻っておらず、呼吸器をつけている状態であった。


 「ルイ...俺がお前のかたきを絶対に取るから」

 「だから、絶対に死ぬんじゃねーぞ」


 俺は目を閉じて静かに呼吸をしているルイに向かって、力強く語りかけた。勿論、ルイからの返事は帰った来ない。


 少し病院内でルイを見守った後、俺はチームのテントへと戻った。すでに晩御飯の準備が終わっており、みんな食べる準備をしていた。


 「ちょっと~どこ行ってたのよ~」

 

 ミレイが口を膨らませ怒っている。


 「ごめん、ちょっと用事があって」


 「へ~なんか怪しいなぁ~」

 追い打ちをかけるように、マロンが言ってきた。


 「あんた達のんきだね。次の相手はもう決まってるのよ」

 「スチールパンク。この前ミレイにサッカーボールを当ててきたチーム」


 スズカが深刻そうな顔で言っている。隣にいる執事もまた深刻な顔をしていた。


 「あ!!あそこね!!」

 「私許してないからねぇ~」


 ミレイが少しふざけたように言っている。それを見たスズカは優しく諭した。


 「はっきり言って、これまでの敵とは桁違いってことを理解してちょうだい。スチールパンクの準決勝のスコアは15-0なのよ」


 「え!?」

 「まじかよ、それ野球なのかよ」

 「俺らそんな奴相手にするのか?」


 選手たちがざわざわ騒ぎ始めた。


 「種族は人間だけど、人間とは思わない方がいいわ。彼らは独自の機械スーツを着ていて、桁外れの力を持っているわ」


 「でもきっと私たちなら大丈夫よね?そうだよねセイヤ?」


 「厳しい戦いになるのは事実。けれど、俺らは絶対に勝つ」


 「もう夜も遅いし、作戦会議は明日にしよう」


 その後、俺らは決勝の話はせず、みんなで楽しく雑談をしながら食事をとった。いろいろ起きた今日だったので、布団に入って俺はすぐに眠った。


 ”絶対に勝つ。アイツらに絶対に勝つ。勝ってルイのかたきを取るんだ”


 眠りながらも、ずっとこの言葉を暗唱していた。

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