事態は思わぬ方向へ
8回表。魚人の攻撃。
俺れたちの選手は、応援バトルのおかげでステータスが大幅に上昇している。投手はより速い球を投げれるようになり、野趣は守備が向上してファインプレーが出やすくなっている。
魚人の選手たちも頑張ってはいたが、ステータスが向上した俺らの前では歯が立たず、なんの危機もなく0点で抑えることができた。
魚人応援師は気絶して、まだ目を覚ましていないので、魚人チームは成す術がない様子であった。
「けっ、応援バトルで勝ったからって調子に乗るなよ」
「3-1でまだ俺らがリードしてるんだよッ!」
と、魚人チームは愚痴をこぼしていた。
8回裏。俺らの攻撃。
「魚人チームの追加点を恐れる必要はなさそうだな」
俺が安堵したセリフを吐くと、ミレイが心配そうに”ひとこと”言ってきた。
「けど、私たちも点数取れるのか不安よ。相手は完璧な守備シフトを敷いているのよ」
「確かに、完璧な守備シフトだ。ただ、完璧なのは”守備シフト”だけだ」
「は?どういうことよ?」
「まぁ見てろって」
俺らの攻撃が始まる。8番打者からのスタート。俺はすぐに応援を打者に使って、『パワーを250アップ』させた。
応援バトルで全ステータスが上昇している上に、パワーの上昇をかけた。更に、プラマイ作戦で打球速度は上昇する。8番打者の力のオーラがあふれ出ている。
「なにこれ!?すさまじい力を感じるわ」
「俺の応援で出来る限りパワーの数値を上げた。今は250が限界値だ」
「ただ、それでも今の敵チームにとっては十分だ!」
「小難しい対策なんかいらねぇ!パワーでゴリ押せぇ!」
俺の叫びと同時に、8番打者が球を綺麗に打ち返して、打球はセカンドにいった。普段なら、簡単にアウトになるが、今回は違う。
打球は魚人のグローブをはじき、ライトの前まで転がっていったのだ。
「へぇぁ!?パワーが強すぎる...」
セカンドを守っていた魚人が動揺している。
「例え、選手の特徴を抑えた完璧な守備シフトを敷いたとしても、それを守る人が完璧じゃなきゃ意味がないって訳さ」
「魚人が守り切れないほどのパワーの差をつければ、守備シフトなんか関係ない」
「あなたやるわねぇ...」
ミレイもスズカも口を開けて、驚いている。
「応援バトルの報酬、俺の応援、プラマイ作戦の効果。この3つが合わされば、とてつもないパワーが発生するんだ」
9番打者はバントをし、走者を2塁へと送った。続く1番打者は、俺の応援がないものの、魚人たちの動揺があったのか、ヒットを打つことができ、1点を取ることができた。
だが、2番打者がゲッツーとなってしまったので、追いつくことはできないまま8回裏が終了する。
9回表。魚人の攻撃。
8回と同じように、俺らは魚人の攻撃を抑えていった。2アウトになった時、魚人応援師が目を覚ましたが、状況を把握すると、静かにまた目を瞑っていた。
きっと1点入れられたのを見て、守備シフトを攻略されたと気づいたのだろう。こっから何をあがいても勝算がないと、素早く判断できる彼は優秀な応援師なんだろう。
9回裏。俺らの攻撃。
3-2で未だ負けている状況だが、流れは完全にこっちになっていた。高火力の3番打者から始まる俺らの打順。
まだ負けてはいるが、このまま負けると思っている選手は1人もいなかった。俺は最初に応援を使わなかった。
完全に勘だが、今応援を使う必要はないと直感的に思ったんだ。その直感は当たり、3番打者はヒットを打った。続く、4番も5番も応援なしにヒットを打ち、簡単に1点を取って同点に追いついた。
「魚人たちは士気が下がって、精神力も落ちているな」
「俺が応援を使うまでもないようだな」
野球には流れが存在する。形式的なスポーツに感じるが、実は流動的である。流れで勝てるときもあれば、負けるときもある。
この流れや雰囲気を制したものが、試合を制することがよく分かる試合であった。
6番が2ベースヒットを打ち、ランナーが返ってきて、俺らはサヨナラ勝ちをした。試合結果は3ー4。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!」
「逆転して勝ったぞぉぉお!!」
選手もマネージャーたちも、そして観客までも大盛り上がりした。会場をつつむ、爆音が全身に伝わって、鳥肌がたった。
「きもちぃ~」
俺は勝利をかみしめて、腕を大きく上に伸ばした。みんなが駆け寄ってきて、また感謝される。
「セイヤ~、流石すぎるよ~」
「プラマイ作戦といい、最後のトドメも完璧だったよ!」
みんな目を輝かせて、俺に感謝の言葉を沢山言ってくれた。凄く嬉しかった。もう何度も勝利はしているが、チームのみんなの為に活躍できたと実感できるのは、やはり嬉しいものだ。
こうして俺らの準決勝は綺麗な勝利を収めることができたのだ。ところが、試合終了してからすぐに観客から悲鳴が聞こえたのだ。
「や、やばい、化け物よ、、、悪魔、、、」
観客がぶるぶる震えて、怯えている様子だった。
「どうしたんだ?何が起きたんだ?」
近くにいた観客が心配をして声をかける。
「と、、、となり、、、、」
震えている観客は少し離れたところにある会場を指さしたのだ。
俺はそれを見て嫌な予感がした。
「ミレイ!隣の会場はなんなんだ?」
「え?あー、そういえばもう一つの準決勝をやっていたかも」
ルイ!!俺の頭の中に、瞬時に言葉と顔が思い浮かんだ。ルイの試合で何か事件が起きたのかもしれない。俺はすぐに走り出し、ルイが居ると思われる会場へと向かいだした。
「ちょ、ちょっと!急にどこ行くのよー!」
ミレイの呼び止める声が背中から聞こえるが、俺は必死で走った。試合が終わったばっかで体力もあまり無かったから、足をふらつかせながら走った。
真夏の炎天下の中、俺は汗をダラダラ流しながら向かった。
会場につくと、ルイがボロボロの姿になって地面に倒れていた。そして、そのルイを足で踏みつけている男がいたのだ。
「お、おまえ...」
その男は機械のスーツを着ている人だった。この前、サッカーボールをミレイにぶつけてきた男であったのだ。スズカが言っていた、”最強にして最恐のチーム”の奴だ。
「よぉ~久しぶりぃ~」
機械のスーツを着た男は、ルイを踏みながら二ヤついていた。




