無駄ではなかった、あのチャレンジ
2日間ルイとずっと一緒に過ごした。そしてルイが退院してすぐに俺も退院した。
「おかえり~」
練習場に戻ると、ミレイ達がすぐに駆け寄ってきてくれた。
「みんな心配かけてごめん。けど、もうすっかり元気になったから大丈夫!」
「それは良かったよ。けど、もう次の対戦チームが決まったわ。相手はスクイーズ。魚人の種族で構成されるチームよ」
と、マロンが淡々と話す。
「魚人のチーム!?それは強そうだな」
ルイのチームとは対戦することが出来なくて、少し残念な気分であった。ただ、決勝といいう大舞台で戦うかもしれないと思うと、それはそれで面白いと思った。
「スクイーズは強いってもんじゃないわよ。なんせ水を自由自在に操ってくるのよ。球に水を付着させて打ちにくくさせたり、キャッチしにくくさせたりしてくる非常に厄介なチーム」
「で、対策方法はある感じかしら?」
「ん~~~。ぱっと思いつくのは、土だな。バットやグローブに土を付けまくって、水で濡れた球を滑らないようにする」
「なんとも原始的なやり方ね」
と、スズカが困った顔をしながら言う。
「しょうがない、俺たちは人間だ。水だって出せないし、高くジャンプできたりもしない。だからこそ泥臭くやる」
「俺は嫌いじゃないぜ、泥臭い野球」
「俺もだぜ」
「俺もやる気十分だぜ!」
選手たちが声をあげて賛成してくれた。彼らにとってやり方は2の次で、勝つことが何よりも大切なことっていうのが分かっているのだろう。
それから俺たちは、明後日の準決勝に備えて練習を開始した。ポケットいっぱいに土を詰め込んで、”どのように土をつけるか”、”土のついた球の握り方”など、色々試行錯誤しながら取り組んだ。
魚人の応援師は防御型応援師らしく、応援バトルで勝つには火力が必要とのことだった。だが、俺には必殺技があるので、特別何かするということもなかった。
---試合当日---
会場にはそこそこの観客の人が訪れていた。ビギナークラスといえど、終盤は人気があるみたいだな。前回同様、コインの分裂数で先攻後攻を決める。今回、俺は4を選んだ。
コインは空高く飛び、地上に落ち分裂した。数は2。俺らは後攻になった。
1回表。魚人チームの攻撃。
まずは様子を見るか、と思っていたところ、相手バッターが驚きの行動に出ていた。自身の手から水を出し、バットに水を付着させていたのだ。バットは水の膜が張られ、神秘的な見た目になっていた
「意味が分からない。あんなに濡らしたら、水で滑って球なんか当たらないだろ...」
しかし、俺の予想を裏切ってきたのだ。相手バッターは思いっきりスイングし、バットに球を当てた。しかも、球を水が多い打球速度は速い。水で表面を滑らかにしているから、空気摩擦が少なく、スピードが上がっているのだろう。
「ただ、俺らも対策はしている!」
打球はショートへと飛んだ。早い打球であったが、ショートはグローブでしっかりとキャッチすることができた。もちろん、グローブは土まみれになっている。
簡単に1アウト取ることが出来た。そして、その後もアウトを取っていきチェンジに。この調子でいけば問題は無さそうであった。
1回表。俺らの攻撃。
案の定、相手投手は球に水を付着させている。作戦通りバッターはバットに土を塗って、打席に立った。しかし、ここで誤算があった。
俺らが想定していた水の付着量より、遥かに量が多かったのである。その為、バットに球が当たったとしても、打球速度は遅く、外野にすら飛ばすことが全然できなかったのである。
俺が応援を使って、パワーとミートを増やしたりもしたが、効果は全然なく。むしろ、逆効果のようになってしまった。
スリーアウト!チェンジ!
成すすべなく交代となる。
2回表。魚人チームの攻撃。
「とりあえず、相手の攻撃もそんなだから大丈夫だろう」
俺はきっと勝ち続けていたから、少し調子に乗っていた。どうせこの試合も勝って、決勝でルイのチームと戦うんだって思ってた。
けど、現実はそう甘くはない。
相手の応援師が応援を使った。すると、バットに付着する水分量が倍となった。そして、打った球はさっきよりも水分量が多く、スピードが格段に上がっていた。
打球はセカンドに飛んだ。アウトだと俺は思った。けど、セカンドは球が上手く掴めず、エラーをしてしまう。しかも、焦ったセカンドは送球で変な所へ飛ばしてしまう、ランナーを2塁へと進めてしまう。
「やばい、水分量が増えたから土で誤魔化しきれなくなっている...」
「これじゃあ、まともにボールを持つことすらできない」
魚人たちの快進撃は止まらず、一挙3点も取られてしまう。投手に応援を使ったりして、なんとか2回の攻撃は終わらすことはできた。
「まずい、まずい、まずい、まずい」
「考えろ俺。考えろ。何か策があるはずだ」
2回裏。俺らの攻撃。
応援はさっき使ってしまったので、この回では使用することができない。選手たちも頑張ってくれたが、1点取るどころかヒット1つすら出すことが出来なかった。
試合は淡々と進んでいく。
3回表。魚人チームの攻撃。
2回の攻撃の時と同様に、魚人の応援師が応援を使って攻めてきた。
「あ~人間さん可哀想に...ほんと惨めな種族だよ」
「な~んにも特徴が無いもんね。同情するよ」
魚人の応援師が腹立つ顔で言ってきている。
「くそっ!」
絶対に勝ってやる。何か絶対に成功の道があるはずだ。俺は頭をフル回転させたが、何も思いつかなかった。けど、その時、ある思いが俺の中から出てきた。
”ルイならどうしただろう”
なぜ急にルイが出てきたのか分からない。数日しか会ったことのない、友人とも言っていいレベルなのかも分からいが、何故か出てきた。
「あいつの顔思い出したら、なんだか気持ちが楽になってきたわ笑」
「おかげで、あのうざい魚人に勝つ方法も思いついたよ、ありがとうなルイ」
「俺が思いついたのは、プラマイ作戦だ!!!」




