第9章 事件③
この日、お天気が余り良くなかった。
だが洗濯物は溜まっていたのである。
今日は水曜日で優佳の仕事は休みだった。
なので、洗濯をしようと思っていた。
優佳の家には乾燥機がある。
お天気が悪くても洗濯して乾かす事は可能なのだ。
そこで、洗濯物を洗濯機に入れて洗濯機を回した。
洗濯機は音を立てて洗濯物を洗ってくれる。
洗濯機とは実に便利なものである。
優佳はその間、掃除などをしていた。
暫くすると洗濯が終わった事を告げる「ピーピー」という音がした。
優佳は洗濯物を出して、洗濯機の上にある乾燥機に洗濯物を入れていった。
そして、乾燥機のボタンを押した。
すると、洗濯物がグルグル回って乾かし始めたのだ。
その間、優佳は他の事をしていた。
乾燥機は衣類を乾かすのにはかなりの時間が必要になる。
優佳はクロちゃんを猫じゃらしでじゃらして遊んでいた。
その姿を見てマルも遊んで欲しい様だった。
優佳とクロちゃんとマルは3人で遊んでいた。
マルは犬だと言うのに猫のように猫じゃらしで遊ぶのである。
とても変わった犬に育ってしまった。
これも、クロちゃんの影響かもしれないと思っていた。
暫く遊んでいると、乾燥機が衣類を乾かし終わった事を告げる「ピーピー」という音がした。
優佳は遊ぶのをやめ、洗濯物を取り出しに乾燥機の所まで行った。
そして、洗濯物を乾燥機から出した。
その洗濯物をベッドの上で畳んでいた。
洗濯するのは良いが畳むのが苦手な優佳だった。
程なくして、洗濯物は畳み終わった。
箪笥の引き出しなどにそれを収納してゆく。
ふと、クロちゃんのことが気になった。
名前を呼んでみる。
返事が無い。
おかしいなと、思った。
マルは足元で寝そべっていた。
また、クロちゃんの名前を呼ぶ。
また、返事が無い。
段々と、心配になってきた。
どこに行ってしまったのだろう。
優佳はそう思っていた。
「クロちゃーん!!」
そう優佳は叫んでみた。
そんなに広い部屋ではない。
6帖二間に6帖のキッチンにお風呂場とトイレである。
隠れる所などどこにあろうか。
尚も、名前を呼んでみるが返事が無い。
段々と焦ってくる。
名前を呼びながら部屋中を探して回った。
クローゼットの中も探したのだ。
だが、クロちゃんの姿は見当たらなかった。
優佳は本気で心配になってきた。
このまま見つからなかったらどうしよう。
と、思っていたのである。
その時だった。
ふと、乾燥機の方を見たのだ。
すると、乾燥機のドアが開いている。
乾燥機に近づいて中を見てみた。
その中には丸くなって眠っているクロちゃんが居たのだ。
優佳は叫んだ。
「クロちゃん!!こんな所にいたの?」
「(そうだよ。ここ暖かいんだもん)」
そう言って鳴くのだ。
優佳は乾燥機のドアを閉めるのを忘れていたのだ。
その開いているドアから中に入った様だった。
でも、どうやって入ったのかは不明だった。
クロちゃんが入っているのを知らずに乾燥機のボタンを押さなくて良かったと思った優佳だった。
その後もクロちゃんは洗濯籠の中で寝ていたり、箪笥の引き出しの中で寝ていたり、押し入れで寝ていたりして行方不明になることが多かった。