第6章 留守番
月日は流れてクロちゃんは2歳になった。
人間の年齢にすると約24歳になる。
クロちゃんの身体は大きくなり毛並みも光沢のある黒い色をしていた。
しっぽもとても長く細くて綺麗だった。
左目は濁っていたが見えている様で、右目の瞳は黒くその周りは黄色で綺麗な目をしていた。
なかなかハンサムな顔立ちをしている。
クロちゃんのお喋りは相変わらず続いていた。
「にゃー、にゃー」と良く喋るのだ。
この頃、優佳は犬のマルを連れて雅人の家に泊りに行くことが多くなっていた。
その度に、クロちゃんはお留守番をさせられていたのだ。
この日も優佳は雅人の家に泊りに行く準備をしていた。
着替えにブラシ、歯ブラシにドライヤーなどをリュックに入れていた。
クロちゃんは優佳に話しかける。
「(また、雅人の家にいくの?僕は?)」
「クロちゃんはお留守番よ」
「(何で?僕も行きたいよ)」
「クロちゃんは環境が変わるとお腹壊すでしょ?」
「(えー?)」
そうなのである。
クロちゃんは環境が変わると直ぐにお腹を壊すのだ。
過去に1度だけ雅人の家にクロちゃんを連れて行った事があった。
それも日帰りである。
帰って来たクロちゃんはとても疲れているように見えた。
その翌日からである。
下痢が始まったのだ。
優佳は動物病院に連れて行き、下痢止めをもらってきた。
その下痢止めを飲ませると約1週間で下痢は収まるのである。
そんな理由からクロちゃんはいつもお留守番だったのだ。
クロちゃんは尚も話しかけてくる。
「(優佳ちゃん、もうお腹壊さないから僕も連れて行って)」
「ダメよ。お腹壊すから」
「(どーしてもダメ?)」
「ダメよ」
そう話すとクロちゃんは鳴くのをやめた。
クロちゃんはしおしおとして犬用のベッドに入ってしまった。
そこで、ふて寝である。
この留守番がきっかけで、崎山家では珍事件が発生することを優佳はまだ知らなかった。
クロちゃんは虎視眈々とその時を狙っていたのである。