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悲恋の大空  作者: 暴走機関車ここな丸
第3傷『新緑』
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第11話「報連相」後編

 あなたの一番大切な存在はなんですか?



 両親、兄弟、友達、先生?



 それとも、(もの)



何故大切なの、なんで好きなの、どうして欲しいの、それをどうしたいの?



 もしかして…………。



 ──自分?



 ……。




[朝蔵 大空]

 「ねぇ卯月くん」



[卯月 神]

 「はい」



[朝蔵 大空]

 「週末、(うち)に来ない?」



[卯月 神]

 「朝蔵さんの……家ですか?」



[朝蔵 大空]

 「うん! あの、お泊まり的なやつ///」




 家族に卯月くんを会わせたことが無い、ずっと恥ずかしかったから、会わせようとしなかった。




[卯月 神]

 「……分かりました」



[朝蔵 大空]

 「やった! 楽しみだね」



[卯月 神]

 「失礼の無いように、頑張ります」



[朝蔵 大空]

 「そ、そんなかしこまらなくて良いよ〜……」




 卯月くんはやっぱり真面目、冷静で素っ気無い、でもそんな所が好き。



 種族が違っても好き、混じり合えないとしても、それでも好き。



 貴方が最初に、私の前に現れた時から、運命を感じていた。



 貴方が来てくれて、私の生活が明るくなった、何もかもが変わった気がした。




 ……。




 放課後、ひとりで家までの道を歩く。



 今日は卯月くんが家に泊まりに来る日。




[朝蔵 大空]

 「……」



[如月 凛]

 「ソラ様ー!」



[朝蔵 大空]

 「え?」




 リンさん?



 まだ居たんだ……。




[如月 凛]

 「はぁ、はぁはぁ……」



[朝蔵 大空]

 「だ、大丈夫ですか?」



[如月 凛]

 「あの、ミギヒロ様知りませんか?」




 え、ミギヒロ……?




[朝蔵 大空]

 「ミギヒロですか? ミギヒロなら、私の家か……商店街とか?」



[如月 凛]

 「そこにも居なくて……」




 リンさん、なんでミギヒロのこと探してるんだろ。




[朝蔵 大空]

 「あの、なんでミギヒロのこと……」



[アリリオ]

 「どこ探しても居ないね」



[朝蔵 大空]

 「……」




 …………誰?



 よく分かんないけど、かなり可愛い男の子。




[アリリオ]

 「あーれ、君と直接対面するのは初めてだっけ?」



[朝蔵 大空]

 「ん?」




 な、何を言われているのだろうか私は。




[アリリオ]

 「僕の名前はアリリオ、悪魔だよ」



[朝蔵 大空]

 「悪魔!?」




 2人目の悪魔!!




[アリリオ]

 「そうだ、大天使リン様」



[如月 凛]

 「なんですかアリリオ様?」



[アリリオ]

 「今は監視の目も無いようだし、僕らから例の話をするってのはどう? シン様ももう、半分やる気無いよね」



[如月 神]

 「ミギヒロ様は、何をお考えになっているか分からないですからねぇー」



[アリリオ]

 「データは十分集まったし、これ以上長引かせても、時間がもったないよ」




 な、なんの話をしているのふたりとも……。



 私はふたりに連れてかれ、人目が無いと言うことでカラオケの一室に3人で集まった。




[如月 凛]

 「おほー! これが人間界のビッグカルチャー! カラオケボックスなのですね! 初めて来ました〜! ひゃあ、なんか楽しいですぅ〜!」



[アリリオ]

 「音がうるさいねー、ここ」




 とりあえず来てみたけど、ふたりともカラオケ代分のお金持ってるのかな?



 まさか会計、私じゃないよね??



 ……。




[卯月 神]

 「あの、なんの前触れも無く、貴方のプライベート空間に連れて来られても困るんですけど」




 卯月はミギヒロに、薄紫色の不思議な世界に連れて来られる。




[加藤 右宏]

 「悪ぃな! 話済んダらすぐ解放してやっかラ」



[卯月 神]

 「話って?」



[加藤 右宏]

 「ああ、なァ契約破棄しないか?」



[卯月 神]

 「え……」



[加藤 右宏]

 「お前もあいつと一緒に居たら分かるダろ。 あいつは他人を救えるような器の人間じゃナい、人間は弱い生き物だガ、人間の中でモあいつは弱すギる」



[卯月 神]

 「弱くても、あの人は優しいですよ」



[加藤 右宏]

 「優しいじゃダメなんだよ、強く、強くないと。 オレさ……アレと話してきたよ」



[卯月 神]

 「アレ…………」



[加藤 右宏]

 「大空のことを、世界で一番愛しているノはお前じゃない、アレなんだ。 あの存在だけが、あいつを救えル」



[卯月 神]

 「そんなわけ、無いでしょう……」



[加藤 右宏]

 「ン?」



[卯月 神]

 「あんなの、あんな歪んだもの、今の朝蔵さんには必要ありません。 僕は認めない……あれは、何がなんでも、消滅すべき存在です」




 ……。




[朝蔵 大空]

 「その話、本当?」



[アリリオ]

 「うん」



[如月 凛]

 「はい」



[朝蔵 大空]

 「その試練を受ければ、卯月くんと一緒になれる?」




 私は聞いてしまった、ふたりから。



 そうか、卯月くんとミギヒロがずっと私に隠してたこと、この事だったんだ。




[アリリオ]

 「やる? 救済」



[朝蔵 大空]

 「私に出来るかな……」




 こんなダメな私が、すぐ泣いちゃう私が。



 人に助けられてばかりな私が。




[如月 凛]

 「きっと出来ますよ! やりましょう! ソラ様!!」



[アリリオ]

 「君なら出来るよ、アサクラソラさん」



[朝蔵 大空]

 「……ちょっと、考えさせて」




 ……。




[卯月 神]

 「初めまして、朝蔵さんの彼氏やらせてもらってる、卯月神と申します。 こちら僕のバイト先で取り扱ってるクッキー10種類セットです。 お受け取り下さい」



[朝蔵 葵]

 「まあ、丁寧にありがとうございます……」




 今日はお泊まり初日の夜。



 始めにお母さんに会わせてみたけど、お母さんなんて言うんだろ……?




[朝蔵 葵]

 「……優しそうな子ね!」




 『優しそう』って……。




[朝蔵 大空]

 「そのコメントやめて?」



[卯月 神]

 「え?」



[朝蔵 葵]

 「ごめんごめん、一度言ってみたかったのー」




 良い性格してるわ。




[卯月 神]

 「朝蔵さん? 『優しい』は褒め言葉なのでは?」



[朝蔵 大空]

 「人の彼氏に対しての第一声としては、微妙なの」



[卯月 神]

 「えぇ……」






 ガチャ。






[朝蔵 千夜]

 「たっだいまー!」



[朝蔵 真昼]

 「ただいまー」




 あ、お兄ちゃんと真昼が帰って来た。



 お兄ちゃん達、なんて言うんだろ……。




[朝蔵 千夜]

 「お、君が大空の彼氏くんだねー? どれどれ…………優しそうな子だね!!」



[卯月 神]

 「……」



[朝蔵 真昼]

 「学校で見掛ける度、優しそうな人だなって思っていたよ」




 お前らの第一印象最悪だよ。




[卯月 神]

 「いただきます」



[朝蔵 葵]

 「苦手なものあったら、残しても良いからね」



[卯月 神]

 「あ、大丈夫です。 苦手なもの無いです」




 こうやって卯月くんが、家の食卓に居るのって、なんか不思議な感覚!



 もう家族になっちゃったみたい!




[朝蔵 大空]

 「ミギヒロ、帰って来ないね」



[卯月 神]

 「……」



[朝蔵 真昼]

 「また家出かな?」



[朝蔵 千夜]

 「んじゃー、アイス買いに行く次いでに、ミギヒロくんを探しに行こう!」




 ミギヒロのほうが『次いで』なの笑える。




[朝蔵 葵]

 「お母さん、車出そうか?」




 モールへ、レッツゴー!




[朝蔵 千夜]

 「僕は、ぱんだアイス!」



[朝蔵 真昼]

 「バリバリちゃんにしよっと」



[朝蔵 葵]

 「お母さんは『砂糖系イケメン特集』にするわ!」



[朝蔵 大空]

 「アイスじゃないじゃん……」



[卯月 神]

 「……」




 あれ、卯月くんまだアイス選んでない。




[朝蔵 大空]

 「卯月くんは?」



[卯月 神]

 「僕も良いんですか?」



[朝蔵 葵]

 「うん、いいよ」




 お母さんが卯月くんに、アイスを選んで良いと許可を出す。




[卯月 神]

 「じゃあ……これで」




 卯月くんが選んだのは、王道バニラとミルクのフレーバーが最高な、『ウルトラカップ』……。



 私と一緒だ!




[朝蔵 大空]

 「お揃いだね♪」



[卯月 神]

 「はい」



[朝蔵 葵]

 「買い物済んだし、帰るわよ〜」




 帰る、その前に……。




[朝蔵 大空]

 「私トイレ行きたーい!」



[卯月 神]

 「……」




 しまった、卯月くんがいる前で堂々とトイレとか……ま、いっか!



 先に皆を車に戻らせて、私はひとりトイレに寄る。




[朝蔵 大空]

 「ふぅ……あれ」



[加藤 右宏]

 「……」




 ミギヒロが近くのベンチに座っているのが見えた。



 私はその横に、静かに腰掛ける。




[朝蔵 大空]

 「あんた居るなら言いなさいよ、あんただけアイス買ってもらえてなくてざまぁー!」



[加藤 右宏]

 「……」




 だんまり。



 あ、なんか機嫌悪いかもこいつ……。



 こいつたまに無口なのよね。




[朝蔵 大空]

 「って、言うのは冗談で……あんたもアイス要る? 今ならこの私が奢ってあげ……」



[加藤 右宏]

 「どうでもいい」




 そう言うと、ミギヒロは私の肩をガッと掴む。




[朝蔵 大空]

 「痛っ! や、やめなさいよ!」



[加藤 右宏]

 「16時2分から17時29分の間、お前はどこに居た?」



[朝蔵 大空]

 「はぁ?」




 その時間って、私とリンさんとアリリオ? くんで、カラオケに居た時間だ……。



 なんでこいつは、そんな細かい時間で聞いてくるの?




[朝蔵 大空]

 「えっと、ヒトカラだけど」



[加藤 右宏]

 「ヒトカラ……?」



[朝蔵 大空]

 「カラオケでひとりで歌ってたってこと、それが何?」



[加藤 右宏]

 「……」



[朝蔵 大空]

 「で、あんたこそ今まで何してたのよ?」




 なんとなく、リンさん達のことは言わないほうが良い気がした、今日話されたこともなんか、秘密の会話っぽかったし。




[加藤 右宏]

 「……」




 ずっと黙ってる。




[朝蔵 大空]

 「よく分かんない奴ねー。 アイス買ってあげるから、帰ろうよ。 今日は卯月くんが居るから、お父さんの部屋で寝てね!」



[加藤 右宏]

 「お前、最終的に卯月とドうなるつもりなんダ?」




 私と卯月くんは……。




[朝蔵 大空]

 「結婚する! 私は卯月くんが世界で一番好きだしー、卯月くんも私のこと……」



[加藤 右宏]

 「じゃあもう、自分で自分を呪うの、やめてくれる?」




 ──え……。




[朝蔵 大空]

 「自分で自分を呪う……はぁ? ちょっと、変なこと言わないでよ! 中二病もいい加減にして、そう言うノリ私には分からないか……ら」




 あ……。




[加藤 右宏]

 「ドうした?」




 私、何やってんだろ。




[朝蔵 大空]

 「……ごめん、お母さんが早く戻れって言ってるから、私先に帰るね」



[加藤 右宏]

 「お前はいつまデ、逃ゲるつもりなんダよ」




 背後から聞こえてくる、ミギヒロの声なんか聞こえない、もう全部背けたい。



 今の私には卯月くんがいる、思い出させようとしないで。




[朝蔵 真昼]

 「遅い」



[朝蔵 大空]

 「えと、ごめん」



[朝蔵 葵]

 「よーし、銭湯行きたい人〜?」



[朝蔵 千夜]

 「行く!!」




 ……。



 その日の夜。




[卯月 神]

 「ぼ、僕はどこで寝れば……」



[朝蔵 大空]

 「私とベッド……ダメ?」



[卯月 神]

 「……分かりました」




 私と卯月くんは薄暗い部屋に、同じベッドに寝転がる。



 私の右隣に、卯月くんが居る。




[卯月 神]

 「寝るんですか?」



[朝蔵 大空]

 「うん……ねぇ」



[卯月 神]

 「はい?」



[朝蔵 大空]

 「抱き締めて?」



[卯月 神]

 「……はい」




 卯月くんが、優しく私を抱き締める。




[朝蔵 大空]

 「撫でてほしい」



[卯月 神]

 「どこですか?」



[朝蔵 大空]

 「頭かな」




 温かい卯月くんの手のひらが、私の頭を撫でる。




[卯月 神]

 「これで良いですか?」



[朝蔵 大空]

 「うん、めっちゃ良い」




 貴方の腕の中は、安心出来て癒される。




[卯月 神]

 「まだ続けたほうが良いですか?」




 私は、貴方がいないと生きていけない。



 だからずっと、傍にいて。




[朝蔵 大空]

 「……」



[卯月 神]

 「朝蔵さん?」




 あぁ、寝ちゃいそう……。




[朝蔵 大空]

 「やっぱ……似てるなぁ」




 私は満足して、眠りにつく。




[卯月 神]

 「…………誰にですか?」




 静かな部屋に、卯月の声だけが響いた。






 「報連相」おわり……。

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