第10話「お願いシスター」後輩
[如月 凛]
「天使転生について、私は今日ソラ様にお話しに来たのです」
[朝蔵 大空]
「……」
『天使転生』って、何!?
[如月 凛]
「……やっぱり、シン達から何も聞かされていないのですね」
[朝蔵 大空]
「なんの話ですか?」
[如月 凛]
「ここではまずいですから、ソラ様すみませんがこちらへ!」
[朝蔵 大空]
「あ、はい!」
──『それでは男子生徒による騎馬戦が始まります』
[卯月 神]
「……?」
[卯月 神]
(さっきまで居たリンと朝蔵さんがいなくなってる……)
[刹那 五木]
「赤組絶対優勝するぞー!!」
[仁ノ岡 塁]
「おー!」
ウオオオオオ!!!
おっと、始まりましたか。
ちなみに刹那くんなどの1組は赤組、僕ら2組は白組、3組は黄組として進行しております。
[狂沢 蛯斗]
「卯月くん! 巣桜くん! 騎馬戦は、やられる前にやるのです!」
[卯月 神]
「はい……」
[巣桜 司]
「はい!」
まさに地獄絵図。
しんどいですね〜、早く終わらないですかね、これ。
……。
[如月 凛]
「ソラ様は、地獄と言うものを信じますか?」
[朝蔵 大空]
「えと……信じるしかないですよね、少なくとも天使と悪魔は存在していることが証明されたので」
[如月 凛]
「そう私達は天使、私達天使と悪魔はひと昔前、互いに争っていました」
争ってた、戦争してたってこと?
確かに天使と悪魔ってそう言う争ってるイメージあるけど……。
[如月 凛]
「今では丸く治まり、天国では清らかな魂を管理し、地獄では穢れた魂を管理しています」
[朝蔵 大空]
「……」
[如月 凛]
「私の話、ちょっと難しかったですか?」
[朝蔵 大空]
「あ、いいえ……真剣に聞いてただけです」
天界と天国は一緒のもの?
だったら地獄と魔界も一緒なのかな?
[如月 凛]
「では続けます、ここ数十年清らかな魂は激減し、逆に穢れた魂は増え続けていて、地獄だけでは管理しきれないのです」
[朝蔵 大空]
「大変そうですね」
[如月 凛]
「ソラ様は最近、不運な出来事が自分ばかりにやってくるな、と思うことがありませんか?」
どれのことだろう?
[朝蔵 大空]
「ああ、はい。 不幸体質なのかなぁ、私」
[如月 凛]
「ソラ様貴女は、生まれた瞬間から呪いを掛けられてます」
[朝蔵 大空]
「な、何故そう思うんですか?」
[如月 凛]
「はい、ですからシンは貴女を救うため……」
[加藤 右宏]
「大空〜!」
空からミギヒロが降りて来た。
[朝蔵 大空]
「あらミギヒロ、騎馬戦は?」
[加藤 右宏]
「もう終わったゾ! 結果は赤組1位、白組2位、黄組3位ダ!」
[如月 凛]
「丁度良かった! ミギヒロ様からも説明を……」
[加藤 右宏]
「さァ! もうすぐ玉投げ始まルぞ! た☆ま☆な☆げ!」
[如月 凛]
「……?」
もうミギヒロったら、リンさんの話を遮って……。
[朝蔵 大空]
「あ、もう始まるっけ? ごめんなさいリンさん、またあとで!」
私はミギヒロとリンさんを置いてグラウンドに戻る。
[如月 凛]
「何故協力してくれないんですか?」
[加藤 右宏]
「……別に」
……。
[朝蔵 大空]
「えい! えい!」
玉投げって体育祭の時ぐらいしかやる機会無いよね。
だから特別感あって楽しい!
他の競技と違って、負けたら誰かのせいとかそう言うの無いし。
[剣崎 芽衣]
「えーい!」
凄い! 黄組のほうのカゴめっちゃ入ってる!
[杉崎 アンジェリカ]
「えーーーーい!!!」
ポヨンポヨンポヨン!
[猿1]
「す、すっげーあの玉めっちゃ揺れてる……!」
[猿2]
「おいらの玉も握ってほしいぞぉ」
[猿3]
「生きてて良かったぁ!」
うわ。
[永瀬 里沙]
「私ら揺れるもん無いから気楽ね!」
[朝蔵 大空]
「あははそうだねー! って、ちょっとはあるわ!」
玉投げ競走の結果は黄組1位、赤組2位、白組3位でした。
うーん白組の優勝は無さそうだね。
[不尾丸 論]
「先輩!」
[朝蔵 大空]
「あっ!? 不尾丸くん?」
[不尾丸 論]
「一生懸命ぴょこぴょこ跳ねてる先輩、可愛かったよ」
[仁ノ岡 塁]
「まるでうさぎだな!」
[原地 洋助]
「先輩さすがです!」
仁ノ岡くんと原地くんまで……。
[朝蔵 大空]
「あ、ありがとう……」
この子ら私のこと馬鹿にしてる?
[永瀬 里沙]
「不尾丸くんだっけ? 君さぁ、ちょっと前まではそうでもなかったのに。 突然グイグイ来出してどう言うつもり?」
[不尾丸 論]
「オレ? オレはぁ、朝蔵先輩の生涯の旦那様だよ?」
生涯の旦那様?!
なんか私がネーミングした『未来の旦那様』に似てない……?
もしかして意識してる!?
[永瀬 里沙]
「な、なんて子……!」
[不尾丸 論]
「うん、朝蔵先輩はオレと結婚してー、死ぬまでオレのこと介護してもらうの」
介護!!?
私、介護士志望じゃないよ?
[土屋 遊戯]
「えー結婚〜? バッカじゃないの〜」
[不尾丸 論]
「…………はぁ?」
この声は……。
[仁ノ岡 塁]
「な、何者だーー!!」
[土屋 遊戯]
「うっわぁ、臭い臭い、粉くさーい。 粉ミルクとぉ、ベビーパウダーの匂いがぷんぷんするわぁ」
神出鬼没! 土屋先輩だぁ〜!!
[仁ノ岡 塁]
「なな!? 毎日風呂に入っているのだから俺様は臭くないぞー? しかも俺様は乾燥肌だからパウダーはつけん!」
そう言うことじゃないと思う。
[土屋 遊戯]
「半年前まで中学生だったくせに、恋愛とかお子ちゃまにはまだ早いんじゃなーい? ガキは校庭で玉蹴りでもしてなさーい♪」
[仁ノ岡 塁]
「ひっどい! 俺様泣いてやるんだからなっ!」
[不尾丸 論]
「……」
[原地 洋助]
「どう考えても自分のほうが子供だろ」
私もそう思う……。
[土屋 遊戯]
「はぁ、何歯向かうの? 子供は大人の言うこと聞いて芸でもしててよワンワン♪」
[原地 洋助]
「ク、クソガキ……」
え……今、原地くんの口からめっちゃ汚い言葉が出なかった?
[花澤 岬]
「土屋の言い方は悪いが、俺も大方同感だ」
騒ぎを聞きつけて花澤先輩まで来てしまった。
[原地 洋助]
「どちら様ですか?」
[花澤 岬]
「風紀委員です。 学生の本分は勉強だ恋愛なんかに現を抜かしているぐらいなら、勉強しなさい」
[不尾丸 論]
「……」
[仁ノ岡 塁]
「俺様は次の次のテスト範囲まで対策バッチリだぞ!」
偉い!
[原地 洋助]
「な、なんなの親でもないくせに」
[花澤 岬]
「原地さん、聞いた話によると、貴方は入試の成績は良かったのに、そこから右肩下がりに成績が下がっているそうじゃないですか」
[原地 洋助]
「な、なんで知って……」
んね、なんで知ってるんだろう??
[花澤 岬]
「例をひとつあげるとしたら……数学9点」
うーん……。
[原地 洋助]
「は……」
[不尾丸&仁ノ岡]
「「洋助……」」
原地くんも花澤先輩に勉強見てもらったら良いのに、私も見てもらったし。
[永瀬 里沙]
「今の内に逃げよっか……」
[朝蔵 大空]
「そうだね……」
男子の喧嘩って怖いなぁ。
巻き込まれない内に、避難しよ。
[朝蔵 大空]
「次は……」
──『お次は全選手による綱引きが始まります』
綱引き!
よーし、最後の出番頑張るぞー!
[花澤 岬]
「朝蔵、こっちだ」
[古道 大悟]
「やっほー、朝蔵ちゃん頑張ろうね!」
[朝蔵 大空]
「あ、はい!」
私は花澤先輩と古道先輩の近くに駆け寄って綱を持つ。
そっか、白組で同じチームだもんね。
[原地 洋助]
「チッ……」
[朝蔵 大空]
「……?」
あ、対戦相手の先頭に原地くんがいる。
なんか…………。
[原地 洋助]
「……」
[原地 洋助]
(大空先輩の前で暴露しやがって、絶対殺すあのお節介おじさん……)
……キレてない?
[笹妬 吉鬼]
「なんか前のほうで殺気感じないか?」
[嫉束 界魔]
「うん……会長様はどう思う?」
[音乃 渚]
「燃えてるね! ワタシは栄養補給のため今朝焼いたパンを食べるよ!」
[嫉束 界魔]
「相変わらずっすねー!」
あー、相手の1番後ろに音乃会長もいるのかー、あの人ガタイ良いから配役ぴったりだなぁ。
ピッ。
始まった!
[花澤 岬]
「強いな……さすが会長、あの体型なだけある」
[古道 大悟]
「これやばいよ! どんどん引っ張られてくよ……!」
ん?
[原地 洋助]
「……」
ええ……原地くん顔怖……やっぱ目付き悪いなあの子。
私はそんな原地くんの顔から目が離せなくてろくに綱へ力が入らなかった。
[巣桜 司]
「っ、きゃあ!」
[狂沢 蛯斗]
「ちょっとー! こっち倒れてこられても困るんですけどー!」
狂沢くんと司くんが転んだー!
私達白組はドミノのように倒れていく。
[朝蔵 大空]
「うわわぁ」
[花澤 岬]
「え……」
[古道 大悟]
「ふたりとも! 大丈夫!?」
私は花澤先輩の胸の上に乗るように倒れてしまった。
[朝蔵 大空]
「す、すみません!」
[花澤 岬]
「わ、悪い///」
完全敗北だぁ……。
──『最後のプログラム、選抜リレーが始まります』
『選抜リレー』……人生で1度も縁が無かったし、今年も無い。
赤組のメンバーは……。
[刹那 五木]
「赤組絶対優勝するぞーー!!」
[赤組一同]
「うおおおおおお!!!!」
なるほど。
黄組のメンバーは……。
[嫉束 界魔]
「吉鬼! やっと輝けるね!」
[笹妬 吉鬼]
「うざいんだよ、もう始まるから向こう行けよ……」
なるほど、1年生は原地洋助くん、2年生は笹妬吉鬼くん、3年生は……。
[朝蔵 大空]
「あ! 真昼〜、頑張ってー!」
[朝蔵 真昼]
「うん」
そうだそうだ、白組の1年生は真昼が出るんだった!
白組のメンバーは……2年生が狂沢蛯斗くん、3年生が古道大悟先輩か!
[狂沢 蛯斗]
「負けません!!」
[古道 大悟]
「……」
確かにこの前の合宿の時、足速そうな雰囲気してた!
[古道 大悟]
「……すー、はー…………」
真剣な表情……。
いつもとギャップがあってカッコ良く見えるなぁ……。
[陸上部部長]
「古道、手加減は無用だからな」
[古道 大悟]
「はい」
うわぁ、黄組に陸上部の部長がいるのー?
大丈夫かな、古道先輩。
[生徒A]
「位置について、よーい、どん!」
一斉にスタートした!
[朝蔵 真昼]
「はぁ、はぁ……」
[原地 洋助]
(大空先輩の弟……?)
[朝蔵 真昼]
(里沙さんの前で、カッコ悪い姿見せるわけにはいかない)
真昼めっちゃカッコ良い!
[朝蔵 大空]
「いいぞー、真昼〜!」
[永瀬 里沙]
「が、頑張れー……真昼くーん……」
めっちゃ小声で真昼のことを応援する里沙ちゃん。
[朝蔵 真昼]
「え! 里沙さん今ぼくの名前呼んだ!?」
[永瀬 里沙]
「ヒッ……聞こえない声で言ったのに」
愛の力って凄い……。
[原地 洋助]
(はっ、余所見してる場合かよ)
原地くん、真昼の様子を見てたのかな?
原地くんは、真昼が余所見したところでスピードを上げて先頭へ出た。
[狂沢 蛯斗]
「この距離取り返します!」
[朝蔵 真昼]
「里沙さーん! ねぇー、2度目のデートはどこにしますかー?」
[永瀬 里沙]
「こっち来ちゃダメ!」
[朝蔵 真昼]
「ぼくは里沙さんとふたりきりになれる場所が良いです!」
よし、狂沢くんへバトンタッチ、ここから巻き返してほしいな。
[笹妬 吉鬼]
(狂沢が来た……)
[嫉束 界魔]
「吉鬼! エビくん来てるよ!」
[笹妬 吉鬼]
「なんでいるんだよ!!」
嫉束くんが大外から笹妬くんと一緒に走ってる!
何やってんの嫉束くん!
[狂沢 蛯斗]
「……はい!」
[古道 大悟]
「はい!」
狂沢くんから古道先輩へとバトンタッチ。
まあとりあえずこれで3チームの距離が縮まったな。
[永瀬 里沙]
「良い勝負! めっちゃ熱いじゃない!」
[朝蔵 大空]
「うん! ……?」
その時、私はとある人物に目が行く。
[白井 櫻子]
「カッコ良い……」
……!
[朝蔵 大空]
「……瓶底丸メガネ」
何故だか、メガネの奥から古道先輩へ熱い視線を向けているように見えた。
[アナウンス]
「白組1番です!」
凄い、陸上部部長に勝った……!
[アナウンス]
「優勝は……」
[土屋 遊戯]
「選抜リレーの得点は100万点! よって2組の勝利〜! ダーリンおめでと♡」
[音乃 渚]
「もう……ゆうくんったら」
今までの競技意味無し!
[二階堂先生]
「キャラメル配るぞー」
どうなることかと思ったけど、今年は優勝出来て良かった〜!
[朝蔵 大空]
「キャラメルおいしー♡」
「お願いシスター」おわり……。