第10話「お願いシスター」前編
[朝蔵 大空]
「お肌乾燥してるなぁ」
よし、明日は朝から街に出掛けて、新しいスキンケア用品を揃えよう。
そしたら喫茶店とか本屋さんとかでちょっとゆっくりもしよう。
私は電車に乗って街へと繰り出す。
[朝蔵 大空]
「朝ご飯は……ハンバーガーでいいや」
これから色々お金使うので、朝ご飯は出来るだけチープに行きたい。
ハンバーガー屋さんのテラス席に、私が知ってそうな男の人がひとり座っているのが見えた。
[古道 大悟]
「……」
[朝蔵 大空]
「あ、古道先輩だ」
どうしよう、話し掛ける?
あーでも、でもなぁ、ちょっと話し掛ける勇気無いかも……。
[古道 大悟]
「……!」
古道先輩、私に気付いた?
でもドリンク持って店の奥のほうに消えてった。
私を見た時、ちょっと嫌そうな顔したような……。
気のせい、だよね?
[朝蔵 大空]
「えーっと……」
私は今、化粧品売り場に来ている。
目当てのものを見つけ、買い物カゴに入れていく。
[古道 大悟]
「……!」
[朝蔵 大空]
「あ! 古道先輩!」
古道先輩にまた会った!
[古道 大悟]
「あ、朝蔵ちゃん。 やっほー」
[朝蔵 大空]
「やっほーです!」
[古道 大悟]
「えっと、もう体調は大丈夫そうなの?」
[朝蔵 大空]
「え?」
[古道 大悟]
「その、最近不幸な出来事が立て続けに起きてるんじゃない? 君……」
ど、どれのことだろう?
狂沢くんに体当たりされて夜の森で迷子になったこと?
[朝蔵 大空]
「大丈夫です! 先輩もお買い物ですか?」
[古道 大悟]
「そだよー、ネイル新調しに来たって感じかな」
確かに古道先輩、いつも爪綺麗にしてるよね。
[朝蔵 大空]
「なんか、古道先輩ってオシャレですよね! ヘアスタイルとか!」
[古道 大悟]
「ありがとう! じゃあまたね〜♪」
[朝蔵 大空]
「はい!」
行っちゃった、古道先輩。
[古道 大悟]
「あっ」
映画館に出向いたところ、再び古道先輩と出会った。
[朝蔵 大空]
「古道先輩も映画来たんですね!」
[古道 大悟]
「う、うん!」
[朝蔵 大空]
「なんの映画見るんですか?」
[古道 大悟]
「オレは、『お願いマイシスター』って言うやつ」
[朝蔵 大空]
「わっ、同じです!」
[古道 大悟]
「そ、そう……」
私達は2時間半ぐらいの映画を一緒に見て過ごした。
[朝蔵 大空]
「面白かったですねー」
[古道 大悟]
「そうだね! じゃあね!」
[朝蔵 大空]
「あ、はい!」
その後も、本屋、ペットショップ、服屋さん……。
[古道 大悟]
「うぇっ」
[朝蔵 大空]
「あ、また……」
私達は様々な場所でバッタリと会ってしまう。
[古道 大悟]
「……ストーカー?」
[朝蔵 大空]
「ち、違います!」
なんでだろう、何度も反対方向にお別れしてるのに。
なんか私達……間接的にデートしちゃってたんじゃない?!
[古道 大悟]
「ならいいけどー。 はぁ、あのさ……オレ、ここのカフェ入るからね」
私は指さされた先のカフェに目を向ける。
そこには大好きなアニメのコラボがやっていた。
[朝蔵 大空]
「忘れてた! 今コラボしてるんだった! 行きたい……」
しかも終了が近い!
[古道 大悟]
「え〜、はぁ……一緒に入る?」
[朝蔵 大空]
「是非!」
私達は互いにドリンクとスイーツを頼み、向かい合わせに座る。
[古道 大悟]
「そのアニメ好きなの?」
[朝蔵 大空]
「はい!」
私が昔やってた、もうサービス終了しちゃったアイドル育成ゲームのアニメコラボ!
もしかして、新アプリがリニューアルリリースされる日も近い?
[古道 大悟]
「オタク?」
[朝蔵 大空]
「お恥ずかしながら///」
[古道 大悟]
「あはは……」
私は今日のショッピングで買ってきたものをテーブルに広げる。
秋祭りのため、卯月くんとのデートのため、肌のコンディションは万全にしたい。
[古道 大悟]
「いっぱい買ったね。 あ、店員さんおしぼり2つ下さーい」
[店員]
「かしこまりましたー!」
[朝蔵 大空]
「はい! あの、肌荒れちゃって……」
特に乾燥が酷くて、顔全体がパサパサしてる気がするんだよね。
[古道 大悟]
「あー、唇とか若干乾燥してるね」
唇かぁ、自分じゃ気付かなかったなぁ。
[古道 大悟]
「リップクリームとかは? 何使ってるのー?」
[朝蔵 大空]
「はい! 薬局の1番安いやつ使ってます!」
3つまとめ買いで割引になるやつ!
[古道 大悟]
「そうなんだ……」
[朝蔵 大空]
「古道先輩はどんなスキンケアを?」
古道先輩の肌、きちんと手入れされてて艶がある!
[古道 大悟]
「うーん、オレは基本自社製品」
[朝蔵 大空]
「えっ」
[古道 大悟]
「あ、知らないか。 実家が会社やってて、サプリとか化粧品も取り扱ってるよ」
知らなかった……。
[古道 大悟]
「ちょっと待ってね、ほらここ!」
[朝蔵 大空]
「……『株式会社KODO』、大手じゃないですか!」
薬局とか化粧品売り場でよく目にするメーカーのとこだ……。
[古道 大悟]
「そだね。 じゃあ朝蔵ちゃん、サプリに抵抗が無ければ……はいこれ」
古道先輩がカバンの中から何かの袋を取り出して来た。
[朝蔵 大空]
「なんですかこれ?」
[古道 大悟]
「乾燥で悩んでるんだよね? 肌に良い成分がぎゅっと詰まった美容サプリ、使ってみ。 特別にタダであげるよ♪」
[朝蔵 大空]
「使います! ありがとうございます、今日から飲んでみます」
古道先輩優しい〜、気使ってくれるし、女子力高くてお姉ちゃんみたい……。
いや、うちにも千夜お兄ちゃんと言うオネエちゃんは一応いるが……。
[朝蔵 大空]
「そろそろ出ましょうか」
[古道 大悟]
「うん」
と言うと、古道先輩は先にレジへと歩き出した。
[朝蔵 大空]
「あ、私も!」
私は財布を持って古道先輩の元に駆け寄る。
[古道 大悟]
「あははいいよ! いいよ、女の子に出させるとか、男としてなんかダサくない? 先に外で待ってて」
[朝蔵 大空]
「あ、そっか……お言葉に甘えます!」
そんな、高価そうな美容サプリまで貰ったのにお会計までしてくれるなんて。
[古道 大悟]
「朝蔵ちゃん元気そうで良かった」
[朝蔵 大空]
「え?」
私が元気かどうか気にしてくれたのかな?
[朝蔵 大空]
「古道先輩も帰りですか?」
[古道 大悟]
「いや? オレはこの後まだ街にいるけど、20時に人と会う約束してるし」
た、体力が凄い!
[朝蔵 大空]
「そうなんですね」
[古道 大悟]
「オレも駅行くから、送ってくよ」
[朝蔵 大空]
「はい!」
古道先輩、最初は見た目派手めで取っ付きにくかったけど、性格さっぱりしてて案外一緒に居て楽かも♪
私は駅に向かうため、いつも使う道を歩いて行こうとする。
[古道 大悟]
「ダメ!」
[朝蔵 大空]
「え?」
古道先輩、「ダメ」って急にどうしたんだろ?
[古道 大悟]
「そっち、不尾丸グループの奴らがウロウロしてるから、こっちの道から行こう」
[朝蔵 大空]
「え……はい」
不尾丸グループ……?
とりあえず、言われたままに古道先輩の後ろを着いて行く。
[朝蔵 大空]
「あの、不尾丸グループって?」
[古道 大悟]
「言おうか迷ったんだけど、あの時通報したのオレだから」
あ、あの時って話の流れ的にあの事件? のことだよね。
古道先輩、見てたんだ?
どこから、どこまで?
[朝蔵 大空]
「古道先輩が?」
[古道 大悟]
「悪いことは言わない、不尾丸論とか……あんま関わんないほうがいいよ。 あの団体、良い噂聞かないから」
え……。
確かに、今まで仁ノ岡くんと原地くんに対して、癖が強いなぁ……って印象だったけど、不尾丸くんが1番やばいかも。
……あの3人っていつも、あんな喧嘩の仕方してるのかな?
[朝蔵 大空]
「じゃあ、今日はありがとうございました。 サプリもありがとうございました! また学校で」
[古道 大悟]
「うん! ばいばーい」
私は電車に乗って窓の傍に立っていた。
ピコン♪
[朝蔵 大空]
「メール……あっ! 不尾丸くんからだ」
──『不尾丸です 先輩今日の服可愛いね ねえ今日ずっと派手な男の人と一緒にいたよね そんなチャラそうな人がいいの? オレのこともうどうでもよくなっちゃった? 月曜日学校行くね』
[朝蔵 大空]
「ヒッ」
かなり恐怖を感じた。
[朝蔵 大空]
「……」
だけど一応、『不尾丸くんもゆっくりしてね』とだけ返信しておいた。
[古道 大悟]
「はぁ……」
[古道 大悟]
(あの子のこと苦手なのに、なんで……面倒見ちゃったんだろ)
……。
パン! パンパン!
土屋高体育祭、開幕!
と言っても、運動苦手な私の出番は徒競走と綱引きぐらいしか無いんだけどね。
あーでも、玉入れ競走はちょっと楽しみかも♪
[朝蔵 大空]
「ビリかぁ」
[永瀬 里沙]
「大空お疲れ! 大空の分は私が取り返すわ! うおおおおお!!」
徒競走は私は最下位だった、まあ普段運動しないからそうなるだろうけど。
[アナウンス]
「お次は3年生による、パン食い競走です」
へぇ、3年生はパン食い競走やるんだぁ……。
[音乃 渚]
「花澤くん、良い勝負しようね!」
[花澤 岬]
「はいはい」
おお、花澤先輩と音乃会長が並んでる……。
音乃会長も背が高いイメージあったけど、花澤先輩は更に高いな、なかなかあんな身長の人いないよね。
パン!
[音乃 渚]
「うおおお! パァーーンゥ!!」
!?
あ、あれが音乃会長?
おっとりしてて、のんびりしてるイメージの音乃会長が、物凄い覇気を放ちながら走ってる!
[音乃 渚]
「すまないね花澤くん、この競技……いや、このパンだけは譲れないから!!」
[花澤 岬]
「だったら日頃からソレやって下さいよ!」
猛獣のようにぶら下がるパンに噛み付こうとする音乃会長がそこにいた。
だが最初にパンを食べたのは音乃会長じゃなかった。
[如月 凛]
「美味しー、なのです♡」
は?
[朝蔵 大空]
「リ……」
リンさーん!?
[如月 凛]
「あ……てへ、美味しそうなパンだったので♪」
[花澤 岬]
「ど、どちら様?」
[音乃 渚]
「あぁ……ワタシのパンが」
あーあもうリンさんのせいで競技にならないじゃーん。
[朝蔵 大空]
「リンさん、まさかまた会えると思ってませんでした……」
[如月 凛]
「久し振りに休日を頂いたので☆」
今は昼休み、家族全員でお弁当を広げて昼食を取っている。
[朝蔵 千夜]
「凛ちゃんさんも遠慮無く食べて下さいよー♪」
[如月 凛]
「あーはーい♡ じゃあ遠慮無く〜」
[朝蔵 大空]
「いや遠慮はして下さい、食い尽くされたら困るんで……」
[如月 凛]
「ぶー」
[朝蔵 葵]
「うふふ、いっぱいありますから大丈夫ですよぉ」
マジで全部食べるよこの人?
[朝蔵 大空]
「リンさんはまた人間界旅行ですか?」
[如月 凛]
「もぐもぐ……いいえ? 今回はすぐに帰らせてもらいます」
[朝蔵 大空]
「あ、すぐ帰っちゃうんですね」
[如月 凛]
「突然ですが大空さん、お話したいことがあります」
リンさんが真剣な表情で話し始めた。
[朝蔵 大空]
「もぐもぐ……なんですか?」
[如月 凛]
「天使転生について」
つづく……。