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悲恋の大空  作者: 暴走機関車ここな丸
第3傷『新緑』
56/75

第2話「いっけなーい!遅刻、遅刻〜!」後編

[二階堂先生]

 「んじゃ、ばいなら☆」






 ざわざわざわ……。






[朝蔵 大空]

 「卯月くん、今日バイトだったけ?」



[卯月 神]

 「はい、そうですよ」



[木之本 夏樹]

 「おいっ!!」



[大空&卯月]

 「……っ!!?」




 帰りのホームルーム後すぐ、皆んなが部活に行く準備やら帰宅の雰囲気でいる時だった。



 木之本くんが私達の元まで駆けて来たと思ったら、いきなりの大声。



 なになに、怖い!




[木之本 夏樹]

 「俺はもう我慢出来ねぇ! お前らさぁ! いい加減に付き合ってるって言えよ!」




 木之本くんのせいでクラス中の注目が私と卯月くんに集まる。




[朝蔵 大空]

 「木之本くん! あの……ちょっと」




 わ、私は一体なんて言えば……?




[卯月 神]

 「ゴクリ……」




 そばに居る卯月くんも焦っている表情を見せている。




[文島 秋]

 「さぁて、どうなるかな」




 突然の事に、私は目を泳がせながら戸惑っていた。




[男子A]

 「おっ! んじゃ手始めにお前らふたり、キスしてみろよー!」




 クラスの男子達も横から面白おかしく茶化してくる。




[木之本 夏樹]

 「なっ!?」




 顔を真っ赤にする木之本くん。



 な……なんで貴方が顔を赤くするの?



 き、き、き、キスって!!



 ここで……!?




[卯月 神]

 「……」




 卯月くんはなにも言わないし、ここは私がなんとかこの場を収めないと!




[朝蔵 大空]

 「わ、私ちょっと御手洗に……」



[卯月 神]

 「はぁ……」




 横からバカデカい溜め息が聞こえた。




[朝蔵 大空]

 「……?」



[卯月 神]

 「言いますけど。 僕らの仲に、貴方が何か関係ありますか?」




 えっ!?



 卯月くん、めちゃくちゃはっきり言うじゃーん。




[文島 秋]

 「おぉ」



[木之本 夏樹]

 「そ、それは……」




 返せる言葉が無い様子の木之本くん。



 私も釣られて口を閉じてしまう。




[卯月 神]

 「……?」



[木之本 夏樹]

 「お、お前らが認めてくれないと、こっちだって……」

 


[朝蔵 大空]

 「……?」




 木之本くん、何が言いたいんだろ?




[卯月 神]

 「……帰ります」



[文島 秋]

 「……」




 あっ、卯月くん出て行っちゃった。




[木之本 夏樹]

 「ごめん」




 木之本くんが私に謝ってくれる。




[朝蔵 大空]

 「えと……大丈夫」




 私と木之本くんの間に気まずい空気が流れ、私も沈黙していた。




[永瀬 里沙]

 「おいおい暗い暗い!」



[朝蔵 大空]

 「あっ、里沙ちゃん」




 里沙ちゃんが私の肩に手を置いて、木之本くんの方に視線を向ける。




[木之本 夏樹]

 「な、なんだよ」



[永瀬 里沙]

 「あんたさー、まだ諦めてなかったの?」



[木之本 夏樹]

 「な、何がだよ」




 木之本くんは額に汗をかいて狼狽える。




[文島 秋]

 「とぼけんなって木之本!」

 



 文島くんが少し離れた席から声をあげる。




[木之本 夏樹]

 「ん、んだてめぇ」



[文島 秋]

 「ねぇねぇ」




 真剣な顔で文島くんが私の所まで歩いて来る。




[朝蔵 大空]

 「なぁに?」



[文島 秋]

 「朝蔵ちゃんもさ、ほんとは不満に思ってんでしょ?」



[朝蔵 大空]

 「……卯月くんの事?」



[文島 秋]

 「木之本もこんな感じだしさ……」



[木之本 夏樹]

 「あん?」




 木之本くんが文島くんを威嚇して睨みつける。




[文島 秋]

 「ふたりって…………朝蔵ちゃんは、彼と付き合ってて大丈夫なの?」



[朝蔵 大空]

 「それはっ」




 どうしよ、文島くんに直接聞かれた。



 文島くんってなんだろう、特有の圧があるから。



 私、本当の事話してしまいそう……。




[永瀬 里沙]

 「ちょっとちょっとー、文島くんまでやめなってー」




 里沙ちゃんが私と文島くんの間に割って入る。




[朝蔵 大空]

 「里沙ちゃんっ……」



[文島 秋]

 「……」



[永瀬 里沙]

 「ふたりにはふたりのペースがあるの。 ね? 大空」



[朝蔵 大空]

 「う、うん」




 悔しいけど、文島くんの言う通りだ。



 私が卯月くんに思ってる不満。



 それは──。



 ……。




[朝蔵 千夜]

 「アイス食べよ〜」




 パタパタと足を鳴らしながら、お兄ちゃんが冷凍庫に駆け寄る。




[朝蔵 千夜]

 「あれっ? 無い!」



[朝蔵 大空]

 「どうしたの?」




 私はソファからお兄ちゃんの様子を伺う。



 真昼はテレビを見ている。




[朝蔵 千夜]

 「アイスが無い!」



[朝蔵 大空]

 「そ、そう……」



[朝蔵 千夜]

 「真昼食べたでしょ!!」




 お兄ちゃんがテレビの前に立ち、真昼の邪魔をする。




[朝蔵 真昼]

 「食べてねぇわ、退()け」



[朝蔵 千夜]

 「んもー! 食べたかったのにー!!」




 そう言えばさっきミギヒロが……。



 いや、これは言わないでおこう。



 面倒臭くなりそうだし。




[朝蔵 真昼]

 「散歩行って来る」




 真昼がテレビを電源を消し、ソファから立ち上がる。




[朝蔵 大空]

 「じゃあ私も行こうかな」




 運動不足だし、"合宿"の為に今から体力つけておかなきゃ……。




[朝蔵 千夜]

 「あー!待ってぇー!お兄ちゃんも行く〜」




 私達は外に出る用意をし、夜の散歩へと出掛ける。




[朝蔵 千夜]

 「合宿かぁ、懐かしいなぁ」




 お兄ちゃんも土屋校の卒業生、こう言う時に話が合うのだ。




[朝蔵 大空]

 「うーん、でも面倒臭いよー」



[朝蔵 千夜]

 「あの合宿ってさ、2年と3年が親交を深める為にあるみたいなもんで……」



[朝蔵 大空]

 「ふーん、そうなんだ。 私、3年で知り合いひとりもいないよ」




 私、3年生で名前分かるのはうちの生徒会長の音乃(おとの)(なぎさ)先輩しか知らない。




[朝蔵 千夜]

 「だから、仲良くなる為にやるんだよ」



[朝蔵 大空]

 「あ、そっか」



[朝蔵 千夜]

 「うん、大空も歳が上の人と関わるの、慣れといた方が良いよ。 大人の魅力にハマっちゃえ〜♡」




 お兄ちゃんが指でハートを作ってキメ顔をする。




[朝蔵 真昼]

 「きも」



[朝蔵 大空]

 「も〜! お兄ちゃん何言ってんのー」




 私には卯月くんがいるっつーの。



 て言うか卯月くん、そろそろ私達が付き合ってる事皆んなに言ってほしいな……。



 って言っても、私も言うタイミングと勇気が無くて誰にも言ってないけど。




[朝蔵 千夜]

 「あはは! そうそう! 間違っても、同い歳のあいつの事なんか好きにならないようにね……♪」



[朝蔵 大空]

 「……?」




 お兄ちゃん、あいつって誰の事言ってんだろ。




[朝蔵 大空]

 「ん?」




 橋を渡っている時だった。



 川の方に見知った人影が見えた気がした。




[朝蔵 千夜]

 「ん、大空?」




 立ち止まる私にお兄ちゃんが声を掛けてくる。




[朝蔵 大空]

 「あ、ごめん! さっき行ってていいよー」



[朝蔵 真昼]

 「千兄〜、コンビニあるけど寄ってく?」



[朝蔵 千夜]

 「あっ! 寄る、寄る〜」




 コンビニ目掛けて先を進む真昼とお兄ちゃん。



 私は川の方が気になって、下まで降りてみる事にした。




[朝蔵 大空]

 「…………卯月くん!?」



[卯月 神]

 「くしゅんっ」




 う、卯月くんが川の中に入ってる。




[卯月 神]

 「……あ、朝蔵さん?」




 気付いた卯月くんがこちらに振り返る。




[朝蔵 大空]

 「キャーー!!」




 私は目の前の光景に悲鳴をあげた。




[朝蔵 大空]

 「卯月くん! 前! 前隠して!!」



[卯月 神]

 「ん? あ……」




 な、なんで卯月くん、全裸で川なんかに入ってたの〜?



 卯月くんおかしいよ!!!




[朝蔵 大空]

 「卯月くん何やってんの!?」



[卯月 神]

 「あ、えと、これは……て、天使の力を使わず人間の生活に慣れようと思ってました」



[朝蔵 大空]

 「は?」




 か、川に全裸で入る事が人間の生活??



 何千年前の話をしてるの……?




[卯月 神]

 「……」




 卯月くん、何も着てないのに全然恥ずかしくなさそうだけど……。




[朝蔵 大空]

 「と、とりあえず早く服着ようよ卯月くん!」



[卯月 神]

 「わ、分かりました…………あっ」




 自分の服を探している様子の卯月くん。




[卯月 神]

 「服が無い……」



[朝蔵 大空]

 「えっ!?」




 大変!



 きっと川に流されちゃったんだ!



 このままじゃ卯月くん不審者だよ!



 補導されちゃうよ〜!




[朝蔵 大空]

 「ちょ、ちょっと私近くで服買ってくるからもっかい川入ってて!!」



[卯月 神]

 「えっと……」



[朝蔵 大空]

 「!?」




 あれ、卯月くん服着てる?



 いつの間に……?




[朝蔵 大空]

 「あれ!? 服着てるじゃん」



[卯月 神]

 「あぁ、魔法で」



[朝蔵 大空]

 「最強か?」



[卯月 神]

 「あ、また魔法を使ってしまった……」




 何故かしょんぼりしている卯月くん。




[朝蔵 大空]

 「もー、風邪ひかないようね? 次やってたら私、怒るよ!」



[卯月 神]

 「す、すみません」




 私は階段を上がり、また橋の上まで戻る。



 卯月くんの裸……。



 なんと言うか、特に言う事も無いようなものだったな。




[朝蔵 大空]

 「あ、今日も"アレ"送るから!」




 私は橋の上から卯月くんにそう声を掛けた。



 こちらに振り向かないから、多分私の声は聞こえてない。



 私は言い直す事はせず、お兄ちゃん達の後を追った。



 ……。





[加藤 右宏]

 「今日から一緒に寝るのはやめるんダぞ」



[朝蔵 大空]

 「じゃね」




 と言って枕を持って私の部屋から出て行くミギヒロ。



 私は机に向かって漫画を開く。






 数十分後……。






[朝蔵 大空]

 「ん?」




 部屋のドアが開けられたかと思ったら。




[加藤 右宏]

 「うーン……」




 ドアの隙間からミギヒロが顔を出した。




[朝蔵 大空]

 「あらミギヒロ、まだ起きてたの?」



[加藤 右宏]

 「お前こソ」



[朝蔵 大空]

 「で、何?」




 早く漫画の続きが読みたい。




[加藤 右宏]

 「ひとりジャ眠れないんだぞ」



[朝蔵 大空]

 「……」




 ミギヒロが勝手に私のベッドにダイブする。




[朝蔵 大空]

 「……はぁ」




 私は読んでいた漫画を閉じ、証明を消す。



 私もベッドに入り、横になる。




[朝蔵 大空]

 「……」




 横で寝ているミギヒロに背を向け、ケータイを(いじ)る。



 私の卯月くんに対しての不満、それは……。



 《《報告書》》。



 今日あった事、一日の生活の流れ。



 誰とどんな会話をしたか、相手はどんな人か、行動も何もかも。



 ……全部、卯月くんに報告しなくてはならない。




[朝蔵 大空]

 「……よし、送信」




 メールで卯月くんに報告文を送る、別にそれほど大変な訳じゃない。



 だから特に拒絶もしてない。



 言いたくない事は黙っとけば良いし。



 報告書を送った後の卯月くんからの返信は送られてきた事は無い。



 どうしてこんなものが必要なのか、卯月くんに聞いた事もある。



 だけど彼は答えてくれない。



 よく分からないけど、付き合うってこう言う事?




[加藤 右宏]

 「ンー、眠いんだゾ……」




 ……これが普通なの?



 周りのカップル、皆んなやってる事なの?



 怖くて里沙ちゃんとかには相談もしてない。



 なんとなく里沙ちゃんが卯月くんに怒りそうな感じがするから。




[加藤 右宏]

 「ンンン、もう食べられないんだゾ……」




 こうやってミギヒロが隣で寝てる事も卯月くんには言ってないし、絶対言わないつもり。



 別に卯月くんに命令されてる訳ではないけど、なるべく卯月くんの前では、他の男の子と喋らないようにしてる。



 それで卯月くんが安心するなら良いやって思ってるけど。



 ねぇ卯月くん。



 そんなに、不安?






 終わり……。

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