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悲恋の大空  作者: 暴走機関車ここな丸
第2傷『心青』
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第13話「ドリームサマー」前編

[朝蔵 大空]

 「あぁ〜!もうすぐ夏休みだねー卯月くん!どこ行く?海?プール?川とか山も良いよねー♪」



[卯月 神]

 「……朝蔵さん」



[朝蔵 大空]

 「なぁに?」




 神妙な顔をした卯月くんと目を合わせる。




[卯月 神]

 「僕達、別れましょう」




 その言葉を聞いた瞬間、私達の周りが真っ暗になる。




[朝蔵 大空]

 「えっ……」



[卯月 神]

 「ごめんなさい」



[朝蔵 大空]

 「えっ!ちょっと待って、どうして急に?」



[卯月 神]

 「さよなら……」




 卯月くんがそう言うと、泣き出しそうな顔をしながら私に背を向けて走り出してしまった。




[朝蔵 大空]

 「そんな……嫌だよ!卯月くん!待って!行かないでっ……!」




 私は必死に追い掛けてみるも、どんどん遠ざかっていく卯月くんの背中に追い付く事が出来ない。



 そんな!今更卯月くんが居ない生活なんて、私考えられない!!



 ……。




[朝蔵 大空]

 「いやぁああああ!…………え?」




 先ほどのは全部夢だったようで、私はいつものように自分の部屋のベッドで目を覚ました。




[朝蔵 大空]

 「はぁはぁはぁ……な、何」




 私は起き上がり、急いで呼吸を整える。



 (ひたい)やら脇やら、内ももにも汗をかいていた。



 うーん……さっきまで、もの凄い悪夢を見ていたような気がするんだけど。






 バンッ!






[朝蔵 真昼]

 「ちょっと朝からうるさいっ!」




 真昼が私の部屋のドアを勢い良く開けて文句を言いに来てしまった。




[朝蔵 大空]

 「あ、ごめん……」




 夢の内容、思い出せないな……。



 本当に思い出せなくて怖い、けど正夢にならないと良いな。



 ……。



 ホームルーム前の朝の時間での事。




[男子A]

 「バナナうめぇー」



[男子B]

 「うまぁ」




 男子達がもぐもぐバナナを食べている。






 ガララっ……。






[巣桜 司]

 「はぁはぁ……」




 登校してきた司くんが、何故か息を切らしながら教室に入って来る。




[巣桜 司]

 「狂沢くん!おはようございます!……きゃっ!!」






 つるーん!






 司くんが床に落ちていたバナナで足を滑らせてしまい、そのまま狂沢くんの席の方に突っ込んで行く。




[狂沢 蛯斗]

 「!?」






 ドンガラガッシャーン!!






[狂沢 蛯斗]

 「っ!巣桜くんっ!!!!」




 狂沢くんが床で転がっている司くんを怒鳴りつける。




[巣桜 司]

 「ふえぇーんぅ……」



[木之本 夏樹]

 「お、おいおい……」



[文島 秋]

 「だ、大丈夫かーい?」




 司くんの心配をする木之本くんと文島くん。




[永瀬 里沙]

 「あー!巣桜くんがフィルムでグルグル巻きに!センシティブ〜〜!」




 なんと言う事でしょう……司くんが狂沢くんの机にあったカメラのフィルムで……。



 マジでなんでそうなるんだろう?




[巣桜 司]

 「わーん!大空さーん!助けて下しゃーい……」




 司くんが私に助けを求めている。




[朝蔵 大空]

 「もうしょうがないなぁ……」




 私は席から立ち上がり、巣桜くん達の方へと歩き出そうとする。




[卯月 神]

 「……」



[朝蔵 大空]

 「……っ!」




 その時誰かに手首を掴まれ、引き止められてしまった。



 それに、背後からは突き刺さるような視線が!



 私は誰が私の手首を掴んでいるのか察して、後ろを振り返る。




[朝蔵 大空]

 「な、何……きゃっ!?」




 私は卯月くんに腕を引っ張られ、席へと座り直された。



 な、何!?




[朝蔵 大空]

 「卯月くん……?」



[卯月 神]

 「……」




 どうしてこんな事急に……。




[巣桜 司]

 「こ、これはっ……?ジェラシー!?」



[狂沢 蛯斗]

 「珍しい事もあるのですね、いつも『気にしてない』とか」



[巣桜 司]

 「言っていましたよね?」



[狂沢 蛯斗]

 「ふむ……」




 お互い顔を見合わせる狂沢くんと司くん。




[卯月 神]

 「……」



[朝蔵 大空]

 「……?」




 卯月くん?



 私の代わりに、卯月くんが巣桜くんの傍まで歩いて行ってしまった。




[巣桜 司]

 「わっ!」



[狂沢 蛯斗]

 「な、なんでこっち来るんですか?」



[卯月 神]

 「……」




 卯月は狂沢の事を軽く睨みつける。




[狂沢 蛯斗]

 「や、やるんですね!負けませんよ!ふんっ!!」




 狂沢も卯月を睨み返す。




[卯月 神]

 「っ……なんでも無い、です」




 狂沢の威嚇に怯んだ卯月は、今度は巣桜の方を見る。




[巣桜 司]

 「ふぇ?」




 卯月は巣桜に巻き付いているカメラのフィルムを引っ張ろうと、フィルムの端を掴む。



 そして、そのままそれを勢い良く引っ張る。




[巣桜 司]

 「きゃー!あーーーれーーー!」




 巣桜は回りに回って、巣桜の体からフィルムが取れていく。




[狂沢 蛯斗]

 「おぉ……なんか凄かったですよ今の……」




 今の光景を目の当たりにした狂沢は、楽しそうに面白がる。




[卯月 神]

 「はぁ」



[巣桜 司]

 「……あ、ありがとうございます……?」




 巣桜は目をグルグルとさせながら、卯月にお礼を言う。




[朝蔵 大空]

 「わあぁ……」




 卯月くん!優しい!



 ……。



 午前の授業。



 国語の時間。




[朝蔵 大空]

 「……」

 


[卯月 神]

 「……」




 私と卯月くんは机をくっ付け合って一冊の教科書を一緒に使う。




[卯月 神]

 「……」



[朝蔵 大空]

 「っ……」




 卯月くん、教科書忘れたから見せてほしいってのは良いけど、なんでずっと私の方を見てくるんだろう。



 私の顔じゃなくて教科書見れば良いのに。



 それにめっちゃ卯月くんの顔が近い、そんなに見られてたら心臓ドキドキしちゃうよぉ……。




[朝蔵 大空]

 「う、卯月くんちょっと」



[卯月 神]

 「なんですか」



[朝蔵 大空]

 「なんですかじゃなくてもう少しだけ離れて」



[卯月 神]

 「……はい」




 私がそう言うと、卯月くんは少し私から離れる。



 だけどその目が向ける箇所は変わらず私の顔だ。




[朝蔵 大空]

 「じゅ、授業に集中してよー……」



[卯月 神]

 「は、はい」




 やっと教科書に視線を移してくれる卯月くん。



 はぁ、最高に息が詰まった。



 卯月くんどうしちゃったんだろ?



 国語が嫌いなのは知ってるけど、だからって私の顔見なくても……。




[朝蔵 大空]

 「……!」




 ま、まさか!



 私の顔に、何か付いてる!?



 そう考えた私は、授業が終わったらすぐに御手洗に行こうと決心した。



 そして授業が終わり……。




[朝蔵 大空]

 「よっと……」




 よし、御手洗に確認しに行こう。



 鼻クソとか付いてないでしょうね!?




[卯月 神]

 「どこに行くんですか?」



[朝蔵 大空]

 「ちょっと御手洗に〜」




 私は後ろを振り返らず、一目散にトイレへと駆け込んだ。

 


 ……。



 4時間目、合同で男子は保健の授業。



 グラウンドでは女子も合同で体育の授業をしている。




[男子A]

 「女子は体育かぁ〜、エロいなー」



[男子B]

 「うひょー!見放題!そそる〜」




 教室の窓から、女子が体育の授業をしている所を嫌らしい目で眺める男子達。




[男子C]

 「永瀬を見てみろ!胸は無いがあの脚!」



[男子B]

 「ああ、あれは良いっ!スレンダーでスタイルが良い!」



[男子A]

 「芽衣様の豊満なあの胸に顔埋めてぇー!」



[男子C]

 「アンジェリカも意外とおっぺぇデケー!!」




 猿どもが運動場に居る女子達をそれぞれ品評している。




[卯月 神]

 「……」



[卯月 神]

 (まったく、品性の欠片も無い人達です)




 その様子を見た卯月も呆れている。




[男子A]

 「あ!あそこの、確か朝蔵……だっけ?脱ぐと良いな、こう……良い感じにムチムチしてて……」



[卯月 神]

 「!?」




 大空の話題になって卯月はビクッと驚く。




[男子B]

 「あぁ、調度良いっ!清楚系なのが良いっ!」



[男子A]

 「あの肉付き具合好みだわ〜」




 ついには大空にまで目を付ける猿達。




[卯月 神]

 「っ……!!」




 怒りで激しく感情を燃やしてしまう卯月。




[笹妬 吉鬼]

 「顔色悪いけど大丈夫か?」




 卯月の隣に座っていた笹妬が卯月に声を掛ける。




[卯月 神]

 「……いえ」




 笹妬に指摘され、平常心を保とうとする卯月。




[嫉束 界魔]

 「プリント来たよー」



[笹妬 吉鬼]

 「おう」



[嫉束 界魔]

 「ちょっと興奮しないでよー吉鬼〜」




 嫉束が笹妬にプリントを渡すと、笹妬の顔を見てニヤニヤとする。




[笹妬 吉鬼]

 「んな訳無いだろ」




 面倒臭いのか軽く流す笹妬。




[刹那 五木]

 「……」




 配られたプリントに目を向ける事も無く、窓から外を眺めている刹那。




[卯月 神]

 「……?」




 卯月が配られたプリントに目をやり、ある単語に疑問を持つ。




[嫉束 界魔]

 (卯月くん真剣に見てる!なーんだ卯月くんも案外そう言う事に興味あんじゃーん)



[嫉束 界魔]

 「……」



[嫉束 界魔]

 (大空ちゃんとは、どこまでいってるのかな…………)



[卯月 神]

 「嫉束くん」




 プリントを手に持って嫉束に話し掛ける卯月。




[嫉束 界魔]

 「ん、何?」



[卯月 神]

 「この、えす、いー、えっくすって、なんですか?」



[嫉束 界魔]

 「えっ」




 卯月の質問に頬をピンクに染めてしまう嫉束。




[笹妬 吉鬼]

 「お、お前……」



[卯月 神]

 「……?」



[嫉束 界魔]

 (えすいーえっくすって、アレの事だよね!?嘘でしょ卯月くん、まさかアレを知らないの?高校生にまでなって知らないって有り得る!?)




 卯月の質問に答えられない嫉束は、頭の中でプチパニックを起こしている。




[文島 秋]

 「あははは!ヒントは、恋人とスル事だよ〜。ちなみに木之本はまだ未経験〜」




 文島はノリ気で嫉束達の話に混ざって来る。




[木之本 夏樹]

 「あ!お前!やめろっっ!」




 文島にとんでもない事を暴露(ばくろ)されてしまう木之本。




[卯月 神]

 「恋人とする事……なるほど?」




 文島の言葉の意味をよくは理解していない様子の卯月。




[笹妬 吉鬼]

 「やめとけって……」




 笹妬も傍で苦笑いをしてしまう。




[刹那 五木]

 「先生」




 刹那が手を挙げて教卓の方に居る先生を呼ぶ。




[先生]

 「どうした刹那」



[刹那 五木]

 「気分悪いんで保健室行って来て良いですか?」



[先生]

 「おっ、そうか……良いぞ」



[刹那 五木]

 「……」




 刹那は先生に保健室に行く許可を貰い、教室から出て行ってしまった。




[文島 秋]

 「じゃあさ卯月くん」



[木之本 夏樹]

 「おい!聞いてんのか!?」




 文島は怒鳴る木之本を無視して喋り続ける。




[文島 秋]

 「"自家発電"は?」




 知る人ぞ知る用語についての話を出してしまう文島。




[卯月 神]

 「はい?自家発電?…………あぁ、ソーラーパネル」



[巣桜 司]

 「えぇ……」




 見当違いな事を言っている卯月に、巣桜は驚く。




[文島 秋]

 「違う。その腰に付いてるのは……」



[狂沢 蛯斗]

 「やめなさい貴方達っ!!」




 どんどん良くない方向に話が進んで行きそうな雰囲気を、狂沢が強く止めに入る。




[先生]

 「文島〜、いい加減にしろよ〜」



[文島 秋]

 「てへ」




 文島はイタズラな顔をして前を向き直す。




[男子A]

 「あいつマジか!」



[男子B]

 「ピュアだ、ピュア!」




 周りからは、卯月に対してクスクスとバカにするかのような笑い声も聞こえる。




[卯月 神]

 「……?」



[卯月 神]

 (よく分かりませんが、どうやら恥をかいてしまったみたいですね……)




 恥ずかしくなった卯月は、思わず手に持っていたプリントで顔を隠してしまう。




[嫉束 界魔]

 「ふぅん?」



[嫉束 界魔]

 (卯月くんがこんな様子なら、まだこっちにもチャンスありそっ)




 誰にも気付かれないように、嫉束はホッと胸を撫で下ろす。



 結局、この授業が終わるまで刹那が保健室から教室に戻って来る事も無かった。






 つづく……。

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