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朝焼け色と深海の色  作者: 紫月 紅
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兄と妹

「それで?今回のことは殿下が原因なんだろ?・・・・・・嫌なんだろ、婚約。」

「お父様が帝都を離れた途端に使者が来るだなんておかしいと感じて。きっとお父様は知らなかったんだと思うんです。そもそもソフィーナ様を差し置いて私が皇太子妃なんて・・・・・・。ノア様がお相手なら納得もできますが、何故このタイミングなのかも・・・・・・。」

「まぁアマンステラと懇意なら反発する貴族も黙るし統治しやすいからだとは思うが、父上を嫌っているあの殿下だ。嫌がらせも含まれているだろうな。グラルージュでも寝耳に水だったらしくて遠回しに俺に確認がきたぞ。」

「フレイル様ですか?」

「あぁ。あいつが言うにはソフィーナとの婚約話は大方進んでいて、後は発表するだけだったらしいぞ。招待客用の知らせまで用意は済んでいたみたいだからな。殿下が帰ってきたら送るはずだったと。

・・・・・・ソフィーナは全く知らされていなかったらしく、塞ぎ混んでしまっていると。生まれた時からほとんど決定していたようなものだしな。お前はしばらく外に出ないほうがいいだろうな。あちらの派閥の家紋が騒いでいるらしいから。・・・・・・何かあったら大変だ。」

「ソフィーナ様にお手紙はお出ししないほうが良いのでしょうか・・・・・・。」

「今はな。フリーから伝えてもらっておくさ。そのうちソフィーナから来るだろうから。」


フレイルはソフィーナの兄でグラルージュ家の跡継ぎだった。ルドヴィスとは同い年であり、ソフィーナと同じく派閥など関係無く友好的で愛称で呼び会う程に仲が良かった。


「殿下との婚約のお話、お断りするにはどうしたら良いのでしょうか・・・・・・。」

「今兄さんも情報を集めているところだ。褒賞とは手を考えたな。・・・・・・腐っても皇太子か。仮にお前と殿下が結婚となったらアマンステラと皇室に力が集まりすぎる。派閥との均衡が崩れるからな。陛下もおいそれとはお許しにならないだろうが、分が悪いとは思うぞ。・・・・・・いざとなればお前一人くらい隠してやるよ。傷ができたとかなんとか言ってな。それが元で結婚できなくなるだろうが。」

「・・・・・・不敬ですわよお兄様。私の名だけが傷付くなら構いませんが、それではアマンステラの名に傷がついてしまうではないですか。お父様はお許しにならないでしょう。」

「娘一人嫁げなくなったとこでうちの家紋が劣るわけないだろう。そんな脆弱じゃ無い。むしろ兄さんは大賛成だろうし、父上もあの殿下に嫁がせるくらいならと思うだろうな。俺も同意見だ。まあうちの箱入りは守られてるから大丈夫だ。安心しろ。・・・・・・取り合えず一人で行動はするな。聖堂はもっての外。俺か兄さんが居る時だけだ。これは絶対だぞ愚昧が。」


いつの間にかミリーが持ってきたお茶とお菓子を口にしながらルドヴィスは語気を強めてルイーズを嗜めた。口ではぶっきらぼうだが、心の底から愛妹を心配しているのが受け取れる。またあの惨事が起きないようにと危惧していることはルイーズもわかっているのだ。この兄が心配してくれていることも、愛してくれていることも。ただ、日頃の言動から嫌われているのでは?と思ってしまうこともあった。いや、嫌われているというより、疎まれているのではないかと。ルドヴィスはルイーズのやること全てにダメだと否定する節があった。ただそれは過保護からくる否定だったし、そもそも彼女がやりたがることは危険が少なからずあったからなのだが、ルイーズはそう受け取っていなかった。友人と出かけたいと言えば父より先にダメと言い、友人が主催した同年代の為のティーパーティーへの出席も良しとしなかった。舞踏会や夜会に着る為のドレスにもああでもない、こうでもないと口うるさいのだ。ルイーズが気に入っていたオフショルタイプのレースがあしらわれたドレスは特に怒られた。一度あまりにもうるさいのでルドヴィスに選んでもらったことがあったが、野暮ったくかっちりと襟元まで留めたタイプのドレスを勧めてきた時にはあまりのセンスの無さに絶望したこともあった。ただここで納得いかないのは、ルドヴィスの周りに寄ってくる数々のご令嬢たちにはどんなに胸元が開いているドレスだろうと、オフショルだろうと美しいと褒めるし、婚約者のイリーナ嬢にもそのようなドレスを送っていることを知っているのだ。夜会などではルイーズのエスコート役で行く場合、常に怖い顔でムスッとしていることも多く、少し席を離れようものならすぐ怒られる。ただこれもルイーズが知らないだけでルドヴィスによる過保護の一端なのである。愛妹に変な虫が寄って来ないようにと目を光らせ、華美なドレスや素肌を見せるドレスなどまだ妹には早いと思っているだけである。婚約者のイリーナにも呆れられるほど過保護である自覚は彼には無かったが。


「お兄様は何でもすぐダメと仰いますのね。私にだって一人になりたい時がありましてよ。」


むくれた顔でルイーズはお茶を口にする。兄妹のやり取りは端から見れば微笑ましいそのものだったが、二人の攻防は真剣だった。ミリーは壁に徹しながらどうしたものかと思案していた。

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